Uwatzlla!

BUDDY MILLER'S The MAJESTIC SILVER STRINGS

BUDDY MILLER'S The MAJESTIC SILVER STRINGS

2011 USA

アメリカーナ系プロデュース仕事で名を馳せるBuddy Millerの主導プロジェクト作品。
Bill Frisell、Marc Ribot、Greg Leisz(Joe Henry御用達)とゆう綺羅星の如きギタリストを揃えてのアメリカンギターミュージック絵巻。
大ボリューム13曲の内に次々繰り出される色とりどりなアメリカーナは、コクのあふれるプレイといい、ツボを押さえて効かせるエクスペリメンタルな味付けといい、実にまったく過不足のない完成度。ギタリスト各々の見せ場も外しなし。
ただ、曲はC & W方面の古典やら当人以外のメンバーの作ばかりだし、歌唱は曲毎の男女客演だし、なにしろ当人がわかりやすい芸風でフロントに出てくることがないんで、アルバム自体のキャラ立ちっつーか、そうゆう意味での印象は希薄(見た目と違って裏方体質の人なわけね)。Buddy Millerのリーダー作っつーより、とってもリッチな企画物みたいな(皮肉ってるわけじゃないよ。プロデューサーとしての目配り力の周到さが存分に発揮された作品だと素直に思うッス)。
後年、「信じられない豪華メンツによる隠れた名盤」みたいな惹句付きで紹介される作品って、こうゆうのかね。
3.28.2011
SOLAR

RUBIK

2011 FINLAND

北欧の4人組みの新作
バンドサウンドなノリもあり、ブラス等をフィーチャーした楽団っぽいところもあり、派手ではないがエレクトロニクス使いもありと、スタイル混淆とゆうよりは曲によってスタイルの重心が異なる感じで、そのへんにこだわりなさそなとこも含めて今風なスタンス。
それでもトータルな質感ってのがちゃんとあって。すなわち、ベースやドラム他こもり気味でエコー深めな音群と、それらよりずっと高いとこから響く音群(グロッケンみたいな慎ましげでありつつきらびやかな音色、ハイトーンな歌声♂)との対比から生まれるエアコンディション。
雪雲の間から差す淡い陽光とか蒸せるほどにスチームの効いた室内から眺める澄んだ冬空といった北欧風情にジャストフィットな音像。温々の密室感と清冷な外気とちょいとダークでミステリアスなとこと……、寒い国の情趣がえぇ具合に漂っております。
そこそこポップでありつつ、歌メロやリズムにけっこうヒネリがあるのもよろし。寒いからって部屋にこもってシューゲイズしすぎちゃったりしないのがいいやね。
端正かつ淡白な北欧産の音にはあんまり心を鷲掴みにされることがなく、スウェディッシュポップの屈託のなさなんかには乗り切れない俺ですが、このバンドの翳りと屈折はちょっといい感じ。
3.28.2011
“SAHEL FOLK”

Sidi Toure & friends

2011 USA

マリのグリオの作品がいかなる縁でか、名の通ったUSインディレーベルTHRILL JOCKEYから
内容はSidi Toureが曲毎に異なる友人のグリオと組んでのデュオ集。ほぼ、二人の奏でるGや様々な伝統的弦楽器と歌声のみで構成されるシンプルな世界。
当人と友人たちの手になるオリジナルの曲たちは器楽的にミニマルの快感に溢れ、また歌メロにも弦のフレーズにも日本の民謡に通じるような節回しがけっこうあって不思議に心和むものがある。
バンドサウンドのアフリカ物の土臭いヴァイタリティと粘り腰についてけるタフさの不足してる俺には、このくらい淡色のほうが落ち着いてアフリカのエッセンスを味わえていとよろし。生の弦楽器の繊細さもクリアな音色で堪能できて気持ちよし。
他の地域のルーツ物だったらこのすっきり片づいたプロダクトをして、「ワイルドな味まで洗い落としちまって」とか思いそうだが、ことアフリカ物については、THRILL JOCKEYとゆうフィルター通してちょうどよかった。故に産地クレジットもUSAで、
と。それに、こうゆうカタログ的な構成ってなにしろ好きなのよ俺。
3.23.2011
Balkan Sarkilari

Imran Salkan

2010 TURKEY

トルコ生まれだが家系はバルカンルーツで、そっち方面の音楽でのキャリアも積んだとゆう歌い手の姐さんの作。
強烈なクセや粘りはなく、適度にくすみつつも素直にのびる声。
音はプロフィール通りの、バルカン×トルコ(アラブ)ミクスチャー歌謡

ドラムビートを土台とするバンド編成のサウンドなんだけど、ダルブッカらしきPerがパンパカ、バルカンブラスチックな管がパラパラと鳴り響き、あまりロック色はないっちゅうかエスニックポップ。
んで、そのバルカン×トルコのブレンド具合がナイスな塩梅。
特にブラス。バルカン的に細かい譜割でよじれまくるんだけどもアラブフレーバーの香るフレーズ。しかもメインでソロをとるのがサックスなどリード系の管なもんで、トランペットとかの金管でブカブカパラパラ演るのにくらべて、アラビヤ〜ンな妖しさが微妙に増すわけですよ。この、双方の味の活きた、どっちとも言い切れぬ混じり具合がいいじゃないッスか。
日頃、コテコテのアラブ物はあんまり聴かないし、バルカンブラス物の一本調子ぶりにも最近食傷気味とゆう俺にはちょうどよかった、と。
3.23.2011
ON・アソシエイツ CM WORKS 2 夢一夜

ON ASSOCIATES

2011 JAPAN

CM音楽制作会社ONアソシエイツによる作品アンソロジー第二集。
古くは1970年代初頭から2008年のものまで35曲を収録するが、今世紀以降のものは2008年の1曲のみ。かつてはCM音楽
とゆうフィールドが確かに存在したけれど、90年代からのJ-POPの台頭とCMタイアップという商法の殷賑によって、独特なクリエイションの場としてのそれはずいぶんとしぼんでしまったんだなと、改めて思わざるを得ない。
っちゅうような大きな話はさておき。このアルバムには1989年サントリーサマーギフトの曲「想い出してウクレレ」が入っております。これがね、オンエア当時、俺の琴線をいたくかき鳴らしまして。
ネット以後の現在ほどではないにせよ、80年代前半の広告ブームを経た当時にはCM音楽のデータについて素人が得られる情報がそこそこは巷に存在したのよ。で、血眼で探したけれど、結局わからずじまいだった。それが、2011年の今、こうして聴けるとは。
人生の心残りがひとかけら消えたね。
こうゆうことがあると、日本って捨てたもんじゃねえなと思う。スケール小さすぎ? でも偽らざる実感ッスよ、俺には。
楽しいことも、ろくでもないことも、「いろいろある」のがこの世界だよねぇと、しみじみ思う今日この頃。
3.18.2011
uno una uno

soema montenegro

2008? ARGENTINA

フォルクローレSSW♀の作品。
マルチインスト奏者にして自身もストレンジサウンドのクリエイターであるZelmar Garinが主宰するインディレーベルnoseso recordsよりのリリース。
そのZelmar Garinをはじめごく少数の客演を迎えての音作り。Gや控えめな打楽器、アコーディオンなど数種の生楽器による実にシンプルな演奏

そこに、当人のはっきりした声質の歌が載る。タンゴみたいなムードで声を張ったり、唸りを上げたり、ヴォイスパフォーマンス的に様々な歌唱法を繰り出し、Mariana Barajをエキセントリックやや増量させたような感じ(声もわりと近い系統)。
んで、音響的な仕掛けも多く、サウンドのエアコンディションはナチュラルなフォルクローレの清澄感とは異質な、セルフメイド実験系の制御感にあふれたもの。曲自体はけっこうちゃんとしたフォルクローレなもんだから、そのギャップが新鮮。
パッケージのセンスもまさにそんな感じ。いかにもアヴァン系マイナーインディーズなそっけない情報量と紙質の容れ物に、渋くアーティスティックな花のビジュアルとゆう意外さ。
派手ではないけれどツボをついて印象をはぐらかしてくるようなスタンスがなかなかに面白い佇まい。
3.18.2011
ciertos pajaros

VALEU!

2011 ARGENTINA

新世代ミクスチャーバンド・ドリスの元ドラマー♂が旧友の男女と始めた3人組みユニット
各々がG、Pf、Perなど様々な楽器を奏で、元ドラマー男と女が主に曲を書き歌う。
男の歌う曲、女の歌う曲、男女掛け合いの曲があり、曲調も様々。軽いスタンスでアイデアをアウトプットする場を作ろうとゆうコンセプトのユニオンであるならば、アルバムトータルでの音像の偏りのなさ(印象のつかみにくさでもある)はいい風に作用してると思われ。
意外に落ち着いた音とゆうか。
音響的なアプローチとか器楽的な凝り具合とかエクスペリメンタルな要素はありつつ、それらをフォルクロリックに清く奥行きのあるエアで包んでいるのが新鮮。プロフィールからすると、もっと浮ついた音を想像するとこだが。
女子メンバーの手になる曲が器楽的にいちばん面白いんで、サウンド全体にはこの空気感をキープしつつ、その中でもっとはじけていってほしい。
3.18.2011
D'une Vie a l'Autre

AlasourCe

2011 FRANCE

ボルドー産のアコースティック楽団の2nd。
歌 & Pf、歌 & アコーディオンの姉妹がソングライティングの中心で、G♂も数曲書き歌う。それプラス、Vin、Per、Bの野郎3人とゆう編成。

ロマンチックでファンタジックなフレンチ軽音楽と南欧〜地中海ルーツ系を主とするミクスチャー。
フレンチ味は濃いんだけれども、俺が苦手とするあのサウンド全体をもモワンと曇らせるような気だるい感じが希薄なのがよろし。
姉妹の歌から立ちのぼるアンニュイはほどほど。エレガントではありつつ野の匂いもふんだんに漂わせており、それがえぇ塩梅に通気性を生んでいる。
おかげさまで、サンジェルマンのアパルトマンでジュテームでモナムールでクロワッサンな世界にゃ用なしとゆう俺みたいな不粋者が、おパリのきついフレグランスに鼻つまむことなくフレンチテイストを味わうことのできる、なかなかレアな一作であります。
3.18.2011
RELIGAR

LEO CAVALCANTI

2010 BRASIL

ジャケのセンスにピンと来ず、小器用だが何か物足りない南米新世代物かと思ってスルーするとこだった。危ねぇ危ねぇ。
いや、CAVALCANTIって名前どっかで聞いたなとは思ったんだけどね。昔、ここにも載せたことのある過剰構築系の「文化の王様」PERICLES CAVALCANTIの息子だったとは。
エクスペリメンタルにルーツネタ、ポップかつ泣きやメロウネスもあるメロディなど諸々を煮込んだ曲調は、親父にも通じるカレイドスコープ的展開をみせる。
そのうえ、エレクトロニクスと生楽器(鳴り物管弦にコーラスワークまで)の配合自在って感じで、基本アナログな親父のサウンドよりもめくるめく色彩感の上回る世界。
多種多様な具材を煮込む腕前が実にこなれていて、若いのに勢いまかせってとこがない。歌声とか音像とか、もっと野太いほうが俺の好みではあるんだけど、そんな線の細めなとこをじゅうぶん補うに足る練り込んだ音。
親父の直接の影響による才能の開花かどうかはわからんけれど、まさに文化王子の作といった趣。
3.18.2011
the BROKEN WAVE

Hannah Peel

2011 UK

アイリッシュルーツらしき♀SSWでマルチインスト奏者の作。
クセのないヤングアダルト声で歌いっぷりも自然体。各種弦楽器やストリングス、Pf、管などの生楽器、エレクトロニクス&エフェクツを織り交ぜ、シンプル目な編成ながらも吟味された音のひとつひとつが効果的に響くような、センスを感じさせるサウンド。
んで、曲調はアイリッシュのエッセンスがほどよくにじむ和らぎ系のポップス(トラッドも2曲あり)。
アイリッシュ(つーかケルト系)ってね
、あの月に群雲草露の原的爽涼なリリシズムはとても好ましく思うんだけども、リズムとかストレンジさにおいて、もひとつパンチがないのよ俺にとって。だからトラッド主軸で打ち出してくるような音(KilaとかLunasaとか)だと、こう、部分的な快さはあっても全体では間がもたないことが多くて、「これは」ってのになかなか当たらないんだな。
とゆうところへ、ポップス方面からアイリッシュ良品がやってきた、と。
ことにメロディにおいて、アイリッシュ味が豊かに染みだしていてまことにえぇ具合。器楽的に、あとちょっとトラッド風味増量してくれたらさらによかったかとも思うけど、そのへんの匙加減は微妙だしな。ともかくポップスとしてはじゅうぶんにチャーミング。
3.6.2011
CERVANTINE

A Hawk and a Hacksaw

2011 USA

ニューメキシコ発、Jeremy Barnes(Accordion他)とHeather Trost(Vin)を中心とするトラッドミクスチャー系インディーユニットの新作。ジャケが素敵。
地中海〜バルカン半島や自身のルーツたるメキシコなどのテイストをブレンドした、広い意味でのラテンミクスチャーサウンド。ちょっと歌も入るけどメインはインスト。
生楽器中心のアンサンブルで、エレクトロニクス使いとかはないけれど、音響的な仕掛けがけっこうフィーチャーされてて、USインディの気配もそこはかとなく漂う音。
GやVinなどの弦楽器に負けないくらいバルカンブラスっぽい(かの地のものよりリズムがスクエアで、ノリが微妙に違うんだな)ブラスが活躍する
。バルカンブラスと弦楽が拮抗するミクスチャー物って意外と少ないんで、なかなか新鮮。
非ネイティブかつ今どきのセンスの人たちがあえて異国のトラッドをネタにする(しかもインスト)ってぇと、勉強の成果発表っちゅうか妙に優等生的でダイナミズム不足な音になっちゃったりしがちだけれど、そのへん際どくかわせてるんじゃないか。ほどよく締まって生彩のあるサウンドになっちょります。
3.5.2011
Asleep on the Floodplain

Six Organs of Admittance

2011 USA

西海岸発、DIYアーティストBen Chasnyによるプロジェクトの新作。
歌も入っているけれど、トータルな印象はギターインストなアルバム。生ギターをメインにごくシンプルな音数で、フォーク〜ライトなアメリカーナ味のサウンドが綴られてゆく。
アメリカーナってことなら、ルーツ系の腕達者の作品かミクスチャー巧者の作品でじゅうぶん間に合ってますってとこで、わざわざこの手のUSインディー系でそうゆうの聴こうとは思わないんだけどね。器楽的に貧相だったり内省的にすぎるのが多いように思えて。
そうゆう印象が強い中、この作品は音像に立体感があって、それなりに芯のある音なのがよかった。音世界を支える基礎の普請具合を気にすることなく作品の醸すムードに無理なく同調できて、最後まで飽かずに付き合えた、と。
にしても、ビジュアルのセンス。実に正調USインディーなる奇妙さ。
好みであるかどうかは別にして、こうゆうのが堂々と存在するって事実に、インディペンデントのあるべき姿とゆうか、自由の尊さみたいなもんを感じて、頼もしく思うのでした。
3.5.2011
LAGRIMAS MEXICANAS

Vinicius Cantuaria & Bill Frisell

2011 USA

南北アメリカの達人の共演作。
Vinicius CantuariaのVo、G、PerとBill FrisellのG & Loops。客演なし。2人による音世界。
両人のルーツの間をとってネタは中米メキシコでって安直なもんでもあるまいが(意外とそうなのか)、メキシカンテイストをメインにしてアメリカーナからラテンまでを煮込んだサウンド。
方向性に新味はないっちゅうか、ルーツ系ミクスチャー物には珍しくない守備範囲ではあるけど、そこはさすがにただ者じゃない同士による産物。
リーダー作じゃないといい意味で気安くなれるのか、各々のソロにはない軽やかさと懐こさの漂う曲が多いが、この2人だもの、「はじける」とか「熱い」っちゅう風にはなりようもない。主にポルトガル語の歌唱(だよね、たぶん)と両人の持ち味(Viniciusの冷んやり感 & 柔らかさ、Frisell の幽玄 & 洗練)がメキシコ〜ラテンの油っ気をほどよく落として、絶妙な質感に。
それに、両人にとっちゃいつもの技だけど、凡百のミクスチャー輩が頑張ってもそうそう達し得ない、腰の据わったコクのある(それでいてストレンジな)サウンドになっちょります。
Frisellの過去作 IntercontinentalsにもViniciusは参加してるけれど、あのアルバムの行儀のいい仕上がりっぷりよりも、今作のヌケ具合のが俺は好きだな。
2.20.2011
the JaneDear girls

the JaneDear girls

2011 USA

中西部出身、Vo、Fiddle 他とVo、G他のお姐ちゃんコンビの初作。
下積みキャリアもなくはないようで、ソングライティングには当人たちもクレジットされてる。インディペンデントな気配は薄いけれど、まるっきりショービズの産物ってわけでもないようで。
サウンドはバンドっぽくなくて、メジャーなプロダクションのポップスの音。
C &Wとかルーツ系の本格好みの向きからすると商売物で片付けられちゃうようなポジションなのかもしれないが、俺はとても楽しめた。俺=記号的なエキゾチズムを愛でることに終始する筋金入りの上っ面野郎にはうってつけのウエスタン系ポップスのつまったアルバム。華のある歌声によるキャッチーなメロディの連続が、聴いてて単純に快い。
隙のない玄人仕事の音ではあるけれど、TOO MUCH なケレン味はなく、まったくの紋切り型ならここで派手にGソロだろうってところを外して軽くFiddleみたいなとこもあったりして、ライトなバランス感覚がなかなかいい感じ。

ふだんラジオ聴く習慣ってないけれど、仕事場のBGMとか、何気なくつけたカーラジオからこうゆうのが流れ続けてくれたら気分よかろう。ナイスなポピュラー音楽。
2.20.2011
VIVA

中山うり

2011 JAPAN

芳醇にしてシルキィな歌声をもつSSWの新作。
S-kenチームによるサウンドプロダクション体制は変わらず。
過去作では小劇場の舞台空間とゆう趣のスケール感が基調だったが、今作では部屋録り的ダウンサイズなアンビエンスがやや増量。意匠など身も蓋もなくいえば小島麻由美風味増量。
パッケージングの工夫もいろいろと大変なんだなと思わされるが、案外、中山うりその人は、諸々あんまりこだわりはないのかも、とも。
彼女は、まず歌とグッドメロディありきの人なんじゃないか。音作りやビジュアルが他人のアイデアだって、自分の歌で受け止める、みたいな。例えば小島麻由美のように、サウンドのみならず言葉や視覚表現にまでトータルにカラーを行き渡らせてその世界を描き出すタイプとはちょっと違うって気がするのよ。
そう考えると聴き手としても、歌声とメロディの色艶を損なうようなレベルでさえなけりゃ、アピアランスのマイナーチェンジは気にしない、ってか俺はそうゆうスタンス。
なのでキャリアを重ねていくなかでは、味付けであれこれと試みるよりもむしろ、ソングライターのアクや生臭みがいい具合に漂白されて普遍的な強度をたたえた曲(つまり、あの麗しき声が堪能できるナイスなメロディ)が増えてってくれるとうれしい。
今作収録の「みんなのうた」採用曲みたいに最大公約数的な受け入れられやすさを目指すってのは、その意味で「あり」な方向性だと思う。
けど、あくまでアクセントとしてね。あの歌声からにじむエキゾチズムは、やっぱ唱歌路線よりも艶なポップスにおいてより活きるんじゃないか、と。この先、童謡や懐メロのイージィなカバーアルバムとか、やめてね、と。
2.17.2011
Uncle Bunny Tongue

Unbeltipo

2011 JAPAN

今堀恒雄 UBTも、早10年を超えるキャリア。ライブ盤を挟んで久々のスタジオ盤の登場。
ギタートリオになってからの作品では、人力演奏に今堀がエディットを加えてフィニッシュするとゆうのが基本スタイルだが、今作はいままでになくライブの出音に近い印象で、人力テクスチャーと太いグルーヴが活きている。
トリオ編成初期くらいまでのUBTスタジオ盤では、Tipographica終了の要因であろう人力合奏であること(から生ずる諸制約)のもどかしさへの鬱憤を晴らすごとくプログラミングやエディットのウエイトが大きかったが、そもそも端正かつ鋭利の人である今堀が自在なツールを用いてイマジネーションを開放した音作りをすると実に構築美を極めたハードエッジなものに仕上がって、そりゃすごいんだけども、俺はもちっとラフでダイナミックなほうが好きだななどと思っとったわけです。なんで、今作の傾向はたいへんうれしい。
ポストプロダクションで足す音を絞り込むことによって、基調であるギタートリオの3色3音の世界に突如現れる異音がハッとするほど鮮やかに響くとゆう効果も増大。
それにしてもこんな、ロック系アヴァンインストとしては人跡希なる領域に到達してしまって……。このまま熟していくならそりゃそれで俺的に好ましいけれど、さらなる展開はあるのか。もはや凡人には想像を絶するわけで。恐い物見たさで新展開を見たい気もする。
2.4.2011
CITY OF REFUGE

ABIGAIL WASHBURN

2011 USA

バンジョー使いのSSW♀の新作。
ブルーグラス+中華味の人だったが、エスノ系ミクスチャーの仕入れ先を拡大した模様。前作でもフィーチャーされていたストリングスに加え、ペダルスチールやらダルシマーやらBill Frisellやら、弦楽器客演多数。
ってことはクレジットから知れるんだけど、トータルな色調は意外と淡く穏やか。
序盤にシタールっぽい響きがちょっと聴こえたり、以前からの手札である中華なフレーズがときどき顔を出すくらいで、ベースはあくまでブルーグラス〜アメリカーナとゆう印象。
でも
それはどうやら、取り揃えたエスノな具材たちをよぉく煮込んだ結果のようで、それをうかがわせる如く全編になんともいえない亜細亜的エレガンスが漂っている。例えばHuong Thanhあたりの越南風たおやかサウンドからびよんびよんな縦揺れ感を抜いたようなといいますか、あるいはモンシロ蝶翔ぶポヤポヤと春爛漫な陽気の中で奏でられるブルーグラスとでもいいますか。
ともかく不思議に温く、終始えぇ湯加減な音なのだった。
てなことからすると、やっぱりビジュアルはちょっと違うんじゃないか。こうゆうエスノ味のコラージュ的混交を期待するとスカされるよってサウンドに、俺には思えるんだけど(俺の聴き方が大雑把すぎるのか)。
2.1.2011
FEAST OF THE HUNTERS' MOON

BLACK PRAIRIE

2010 USA

オレゴンのチェンバー系グループThe Decemberists のうちアコーディオン♀、Dobro他♂、G♂の3人に、Vin♀、B & Cello♂の2人が加わったバンドの初作。
オリジナル中心でトラッドも少々。歌物もあるが7割インスト。マウンテンの音、プレーリーの音、ブルーグラスにフォークと、アメリカーナ諸々。
歌には強力な個性があるわけじゃないんで、そこはややフォーカスがぼやけるが、器楽的には曖昧なニュアンスを醸すより、わかりやすい曲調とフレージングで郷愁やメランコリィを表現する度合いが高い。
その輪郭明瞭な方向でドラマチックに盛り上げすぎてベタなカントリー調インストに聴こえちゃうところを際どくかわした、締まりのあるサウンド。
ゴシックとゆうほどの暗さじゃないけれど、翳りがほどよく効いて、オルタナ半歩手前に着地したって感じの、かなりポピュラリティの高い音。
わりとオルタナ系の佇まいからして、雰囲気物っちゅうか、抽象的な音作りかと思って臨んだんだけど、アメリカーナをこんな風に(一見)素直な姿で味わえるとは、けっこう新鮮。これ、狙った通りの匙加減なら、なかなかの巧者かも。

2.1.2011
KISS EACH OTHER CLEAN

IRON AND WINE

2011 USA

USインディで、ミクスチャー系サウンド、ポップスとして歌心も十二分とゆう、近年熱い視線を注がれる業種業態の、しかも未だ広くは知られざる優良銘柄たるSSWの新作。
格式の4ADからのリリース(移籍第一弾)ながら、キャリア中最もポップに弾む音であるとゆう。
けっこうグルーヴィだったりするリズムにコーラスワークの多用、ホーン、マリンバ系と、使用楽器もいろいろで彩り豊かなサウンド。
コーラスの凝り具合がポップス度を大幅に増量し、これも頻度の高いマリンバ系の音色がアフリカの匂いを微増させている。
曲調的には前作の延長のカラフルさではあるが、だいぶこなれたとゆうか、もはやこの曲は○○テイストとか簡単には言えない具材の煮込みよう。にぎやかではあるが浮ついてはない、安定感のある音像。
アメリカーナ濃度高く、しみじみ系だった昔日の音からはだいぶ様変わりしたが、そもそも専らルーツ系の人だったわけじゃなく、手札豊富なポップスの人だったのね。
ポップスマエストロの器がだいぶ見え隠れするけれど、今、インディー的風通良好な佇まいとのバランスにおいて、ちょうどいい辺りにいると思うわけですよ。俺としては、この先ポップス寄りで妙に落ち着いちゃってほしくはないなぁ。

1.26.2011
moonriders LIVE at SHIBUYA KOKAIDO 1980.11.16
青空百景

MOONRIDERS

2011 JAPAN

ライダーズのアーカイブシリーズ新作。当日のプログラムをほぼ完全収録した2枚組み
非上場期も終盤の記録っつーか。インディペンデントな気配が漂ってたのはこの頃までで、80年代中期くらいからは、派手な大資本でこそないけれどしっかりとメジャー製のサウンドでありイメージになってくように思えるのよライダーズ。
青空百景のライブは当時ラジオで聴いて、正直あんまりピンとこなかったんだけど、それは、オンエアされたのがアルバム収録曲ばかりで、それらは比較的アルバムに近いアレンジなもんだから、当時のガキの耳にはぶっちゃけスタジオ制作された曲の不完全な再生に聴こえちゃったってことなんだね。
今作収録28曲を見れば、実際のライブではライダーズ以外の曲も含めて青空百景には入ってないものが山盛りで、俺にはむしろそっちのが楽しい。
ライダーズは全員が達者なバンドとゆうわけじゃないから演奏の醍醐味は正直あんまりだけど(そもそも80年代以降はもうライブバンドとはいえなかったし)、少ないライブの機会にはそれを補う豊富なアイデアとサービス精神が発揮された。次にどんな意表をついた曲演るだろう、どんだけ新奇なアレンジで演るだろうってワクワクしながらライブに臨んだこと、思い出したよ。
ここまで出し惜しみのないコンテンツなら、アーカイブとして蔵出しする意義も大いにあるってもんだ。

1.26.2011
MISSION BELL

AMOS LEE

2011 USA

初作から from BLUE NOTEでリリースを続け、ノラ・ジョーンズ男版的ポジションを期待されるSSWの新作は、CALEXICOのJOEY BURNSプロデュース。主にアリゾナのCALEXICOスタジオでの制作。
世間的には例えの順序が逆だろうが、ちょっとJOE HENRYっぽい鼻にかかった声。けどクセがあるってほどではない、ノビもある柔らかな美声。なんて俺なんぞがゆうまでもないか。なにしろBLUE NOTEのめがねにかなうくらいのポピュラリティがあるわけですよ。
んで、ソウルやブルースやアメリカーナのエッセンスを溶かしたアコースティック主体のサウンドに載せた、落ち着きのメロディ。
CALEXICOチームの醸すインディペンデントな気配(ハンドクラフト感とか、心地よい身の丈サイズの音響とか。オルタナ味はごく控えめ)の作用で、草の匂いと温性のにじむ音に仕上がっているけど、仮にJOE HENRYプロデュース(ずっと隙なく本格っぽい世界を、都会のスタジオの音によって構築すると思われ)であっても、しっかり受け止めてそれなりのものに仕上がるんじゃないか。そんな足腰の強さを感じさせるオーセンティックなポップス良品。なにしろBLUE NOTEのめがねに〜以下略。
そうゆう資質の人であるからして、今後、まさにノラ・ジョーンズ的に表街道を行くことになるなら、キャリアの中でこのアルバムは
変化球的な位置づけになるかもね。
IRON & WINE の人が客演歌唱してる曲をはじめ数曲で登場するペダルスチールが、アメリカーナ以上エキゾチカ未満の絶妙な音色で、染みるねぇ実に。

1.22.2011
SAPTAK

MEKAAL HASAN BAND

2009 PAKISTAN

パキスタンの野郎ロックバンドの作。
アッパーでエモな表現はなく、エレクトロニクス使いとか今どきな派手さポップさもない。フルートの活躍ぶりはむしろ色合い的にオールドプログレを思わせるけれど、複雑な構成やテクをことさらに押し出してるわけでもない。
てな具合で、プレイは堅いが普通のロック? ってか地味? などと思い始めそうなところで、ギターやフルートがヒラヒラと滑らかに彼の地っぽいエスノなフレーズを奏で、歌い手はカッワーリィな匂いも濃厚なノド技をかましてきて、自然に耳を持ってかれる。その抑さえの効いた出し加減がなかなかニクい。
ひと通り聴いてみれば、外国人受けしそうなベタで品のない民族調なんぞを用いずして、欧米産ロックの単なる模倣・後追いとは明らかに異なるご当地パキスタンのロックが鳴っているのだった。それも、骨太でスケール感のある、地に足着いた音世界。
デフォルトで欧米白人仕様なロックという音楽を、ネイティブなエッセンスで異化する上でのバランス感覚として、これ、いいお手本だと思う。
アジアのルーツリズムって、ラテンや南米やアフリカ物よりもロックに馴染みにくいと思うのよ(歴史的地理的にいろいろあるんでしょうが)。それを、無理なミクスチャー試みて安っぽく陳腐になっちゃうより、フォーマットはロックとはっきり設定して、そこにネイティブの風味をにじませる(抑制がコツ)やり方のが、わかりやすさ派手さはなくとも、結果としてコクのある良品を産みやすいんじゃないか、と(逆方式もあり。但しトラッドフォーマットのが難易度高い)。
今作を最後に歌い手が脱退したとか。そりゃ残念な。
1.20.2011
Tango Balkanico

Gerardo Jerez Le Cam Quartet

2010 FRANCE

ブエノスアイレス出身、仏で活動するピアニスト/コンポーザー Gerardo Jerez 率いる四重奏団(Pf、バンドネオン、Vin、ツィンバロン。後の2人はルーマニアルーツだそうな)の作品。
タイトルまんま、バルカン味のタンゴ。
タンゴとバルカン物。「翳りのある血のたぎり」みたいな色合いには相通じるものがあるから、音色とかの面では馴染みが悪くはなかろうと想像できる。けど、リズム的にはどうか。
狙いさだめた一点に音塊がヒットするタンゴリズムの快感と、揺らぎとフェイントに翻弄されるバルカンのそれとじゃ、ノリがだいぶ違うんだが。
結果からゆうと、驚くような第三のノリが現出するまでには至っていない。
でも本作、ノリの異なる2リズムが互いに抑制を効かせてひとつの音場を築いていこうとゆう姿勢を、エレガンスとしてアウトプットできていると思う。
この手の試みは油断するとたやすく中途半端な合わせネタ音楽になっちゃうからね。そこは免れてるんで、「品のあるタンゴベースの音像にツィンバロンの音色やバルカン的リズムのくすぐりがほどよいスパイス」ってな仕上がりは、ま、普通に耳触りよろし。
両者が本来含有するエグ味をも少し増量してみたら、化学変化の可能性も広がると思うが如何。
1.19.2011
BUILD & SCLAP

sclap

2011 JAPAN

今世紀からぼちぼち活動してきた白井良明、バカボン鈴木、鶴谷智生、武川雅寛によるバンドの初アルバム。
全員が曲を書き、歌う。7割方インスト。
ミクスチャーはもはやデフォルトの如き新世代のロックを意識した惹句が付いてはいるが、聴けば、そうゆう今どきの音との異質性がかなり鮮明に感じられる。
プログレ(マスロックじゃなくて)を主札にトラッド(ルーツリズムじゃなくて)なども加味したハイブリッドではあるのだが、持ちネタの多さになんら衒いのない新世代型とは、そもそも美意識を異にするって感じ。
ネタ数は絞って技で魅せるってのは、今じゃ古風ですらあるかもしれないが、彼らの場合、その技の切れが未だ衰えていないのが肝。ロック系には体力の衰えをそのまま大人の味と言い換えるような「ロックっぽくない」アーティストも多い中、鈍らぬ足腰と腕っ節に円熟味も帯びた音。
エッジの立った新しさや華やかなミクスチャーぶりはないが、この思い切りのよさはなかなか新鮮に響くね。
白井良明にあっては、ムーンライダーズ=ポップスマエストロとゆう期待に応じてフォーカスの曖昧な音になるよりは、こうゆう方向で行ってほしい。さらにアヴァンギャルド増量 & ロマンチシズム減量すると、2010年代の今、どんな音になるかな、なんて思うわけです。
1.12.2011
BONER

バナナリアンズ

2010 JAPAN

80年代初頭の短期間活動したインディニューウエーブバンドがテレグラフレコードに遺したアルバムの初CD化。
テクノ〜アングラ風ポップからエスノテイストなニューウエーブサウンドへと変化していったバンドで、後期にはQUJILAの杉林恭雄と楠均がライブパーソネルとして関わり、その辺りはある意味QUJILA前史ともいえる。
俺は後期が好きで、今聴けばドメスティックな湿気のある音なんだけど、昔はミニマルなとこやリズムを強調した骨格サウンドっぽさに洋物ニューウエーブ的な匂いを感じて、ちょっと新鮮だったのよ。
で、どっちがどっちに影響を与えたかはわからんけど、ざっくりとしてドライなリズムのセンスにはQUJILA=杉林恭雄に通底する部分が少なくない。
そういや、QUJILAが初期のちょいヘン牧歌調からシンプルでグルーヴィな音へとシフトチェンジしていく過程を、「草食系から脱し、ソフトマッチョへと成熟」みたいに見る向きが当時は多かったけれど、バナナリアンズ聴いてた俺は「そうじゃなく、元々そうゆうこと演ってた人たちで、手持ちの札を切っただけだよ」と思ったもんです。
ところで本作、プロダクト的にはリマスタリングに加え、LIVEやデモテイクなど付録テンコ盛り。なんと、バンドの中心人物たる故藤井義之と杉林恭雄による PRE-QUJILAなデュオ「ポマード」のLIVE音源まで! グレイトすぎる! これぞCD再発の鑑。
ときに、俺、もはやCD化はあるまいとゆうアナログ音源のデジタル化保存に、ここ1年、やっと重い腰を上げたとこで(遅ぇよ)。このアルバムもリストアップしてたもんだから、正直驚愕 & 多謝。
バナナリアンズがらみでいえば、さすがにプレッシャーやチンギス100のCD化はないだろな。CD-Rでも、俺は買うけど。
12.21.2010
ROYAL VARIETY

THE SEAL CUB CLUBBING CLUB

2010 UK

英国の5人組バンドの作。
なんか既視感すらあるとても今どきの新世代インディっぽいジャケ。
実際、そんな音。美メロ歌物、複雑インスト、生楽器にエレクトロニクスと、多方面いいとこ取り(のつもりの)欲張り系。
で、前半は落ち着いたテンポの繊細コーラスワークの曲のやら、ラウドでテクニカルなのやらいろいろと。どの曲もつまんなかぁないけど、俺的に75点平均くらいで、もひとつグッと来ない。
トータルではハズレか? と思いはじめたところが、後半、バンドサウンドとエレクトロニクスの絡みも小気味よく、活きのいいニューウエーヴィチューン連発で参った。
2バンドのスプリットアルバムかと思うほどにエグみの差を感じるナイスな曲群の前後を薄味の数曲でサンドしたとゆう、いびつな曲並び。題名ROYAL VARIETYってゆうけど、これ、効果的な構成なのか。
6〜11曲目だけのミニアルバムならよかったのに。ってか、そっちの路線追求してくれよ。と、無責任な聴き手は思うのでした。
12.21.2010
Sorry For The Delay

340ml

2010 SOUTH AFRICA

南アのヨハネスバーグを拠点とする新世代バンドの作。
Vo、G & Key、B、Drという4ピース。ブラスや男女歌唱など客演あり。
メンバー中ディープにネイティブアフリカンっぽい人は見当たらず、ことさら音にトライバルテイストを打ち出してはいない。ある意味コロニアル芸術的なポジションの音楽なんだろか。
ロックをベースにいずれもライトなファンクやスカやレゲエ味やら。ギター
の刻むリズムあたりに、アフリカがほんのり香る。なんか、80's new waveのエスノフレーバーなギターバンドを思いっきりブラッシュアップしたような音。インディ的チープさや浮つきの微塵もない、実に端正なサウンドプロダクション。
こうゆうのを、純粋種は周辺に保存されるってのか。
今どきの新世代ロックの主流が、あふれる情報や大概のものは揃う道具など、過足な創作環境を反映したハイカロリーなものだとすれば、そうゆう背景を感じさせないこのすっきり具合は何? それも、単に遅れてるとか、貧弱な制作環境を思わせるってんじゃなく、今日的TOO MUCHさに染まらない世界で独自に進化してきたような、これはこれでしっかりモダンな音。
ブルックリンが来てる、アイスランドだバルセロナだ…といいながら、実はそろそろ飽和気味かもしれないシーンを、アフリカ大陸の端っこからこんな風に狙撃されるとは。新鮮だねぇ。
ジャケもだが、インナーのドライでサバービアなフォトの数々がまたなかなかにクールで、魅力3割増。
12.12.2010
AMBER & TOPAZ

SAMI ABADI

2010 ARGENTINA

バイオリニスト/コンポーザーSAMI ABADIの新作が日本国内盤で登場。ジャケは人名題名カタカナ併記で軽く萎え。
前作に続き、ドローン系音色をバックに、オモチャっぽい鳴り物やエレクトロニクスがカチャコチョと現れては消える快味インスト。
アンビエント物として聴けるには違いないんだけど、作り手側は必ずしもそうゆう風に考えてないっちゅうか、ずっと構築的な感覚による産物なんじゃないかと思えてきた。軟体で夢幻な音像は、この人のベーシックな作風なんじゃないかってゆう。
主力楽器であるところのエフェクティブな電気バイオリンの音色を出発点として形成された作風だろうかね。
似た傾向のエレクトロニカとかポストクラシック系の音にはリラクゼーションより退屈が勝りがちな俺だけど、この人のサウンドは、夢見心地の中に垂らす数滴の刺激の塩梅がナイスで、聴けちゃうんだな。
それと、ほどほどなハンドクラフト感。そこから、デジタル制御の強いエレクトロニカや技巧に頼りすぎなポストクラシック物にあってはデオドラントされてしまった音楽のケミストリーが漂って云々なんぞといったらいい過ぎか。ま、ほどよいユルさも俺好みってことッス。
12.12.2010
noche,dia y madrugada

Ariadna Prime

2010 ARGENTINA

フォルクローレ系の出自らしき♀SSWの作。
ジャケ見ると、ナチュラル志向の世界をもったお嬢さんのライトなインディポップみたいなの想像するでしょ。俺はした。
ところが違うんだな。
まず、声も歌いっぷりも、実にしっとりと落ち着いててアダルト。9割方自作の曲調も、ライトでインディといった風でなく、ぐっと地に足着いたもの。それを、生楽器を活かしたバンドアンサンブルで聴かせる。
アレンジは音楽監督でもあるDiego SchissiとギタリストのJorge Palacios Furnoがメイン(Prime当人、バンド全体でのアレンジ曲もあり)で、フォルクローレやタンゴの出汁がよく効いた味わい。エクスペリメンタルってほどではないが、器楽的アイデア豊富。
このアレンジの効果で落ち着きムードが地味に転ばず、本格っぽい上に意外と攻めの刺激もあるサウンドになってて、面白い。
かなり予想外の中身で。いや結果オーライではあるんだけど、やっぱりビジュアル違わないか。インナーのイラストの数々(ジャケと同じ描き手)なんか、欧米のほっこり系自作自演女子のインディ作品みたいなんだよ。ビジュアル通りの音ってわかってたら、たぶん手出さなかったな(その手の音が嫌いなわけじゃないけど、アルゼンチン産で聴きたいとはあんまり思わん)。
と、いまいち釈然としない俺です。
12.5.2010
Jogging

SEXTETO IRREAL

2010 ARGENTINA

Axel Krygier、Fernando Samalea、Christian Basso、Alejandro Teran、Manu Schallerという、クリエイターかつマルチ奏者の5人による新ユニットの作。
エクスペリメンタル風味、フォルクロリック風味もお手の物って感じに軽く効かせたポップインスト集。
方々で旺盛に活動しているお歴々であるからして、各々の作で今さらながらにこうゆうの演られたら、正直「腰据えて、もっと濃いもの作ってよ」とか思ってしまいそうだが、5人の共演作として聴くと、却ってTOO MUCHになりそうなとこが抑えられ、いい塩梅にリラックスした仕上がりに響いてくるから不思議なもんだわな。
名のある人たちの集合体にありがちな、豊富な持ちネタをちょちょいとパッケージングして一丁上がり的なイージィさでなく、コラボレーションの楽しさがしっかり感じられるのがいいね。この人たちは音楽でそれなりに成功していても、セッションしたり、一緒に曲作ったりするのが相変わらずとっても楽しいんだろなってゆう。
いや、実際どんな気持ちで演ってるかなんてわかんないけど、それに、楽しくやればいいものができるとは限らないけどさ。和物や欧米の商業音楽でこうゆう集合企画ってぇと、往々にして商売臭が強いじゃない。こっちはずっとインディペンデントで通風良好に感じられて、そうゆう印象ってのもリスナーには好ましいなって話です。
11.28.2010
TELL YOUR MAMA

THE VESPERS

2010 USA

ナシュビル産、Cryar姉妹とJones兄弟の4人からなるフォーク〜ブルーグラス系ポップバンドの作。
Cryar姉妹が曲を書き、歌い、G、マンドリン、ウクレレ他弦楽器とアコーディオン、Pfなどを奏で、Jones兄弟がリズムセクションを担当する。
ミニマムな編成のセルフメイドサウンドなので、演奏面でのアメリカーナ的醍醐味は薄い。それよりも、このグループの聴き所はCryar姉妹の歌。
ウィスパー以上だが声を張るタイプではなく、吐息的ニュアンス含有率の高い歌唱。そして、姉妹だけに似てるけど微妙に異なる声によるコーラスワークが、そこはかとなくストレンジでなんともいえぬ味わいを醸している。
この歌と、シンプルだけれど使用楽器も色々に飽きさせない演奏とで、ささやかに出来上がった世界。
SSW独演以上本格的バンドサウンド未満の軽さが、なかなかに心地よいのだった。
11.26.2010
le ciel tout nu

BALVAL

2010 FRANCE

パリで活動するらしきロマバンドの作。
♀Vo、Vin、G、B、Perという編成。Voはクセのない柔らかな声。
基本オリジナルで、各メンバーが曲を書く。
汎バルカン的に多彩な曲調。ミドルテンポ中心。ツィガーヌのささくれはマイルドにヤスリがけされ、ポップスとしてしっかりした作りの曲が揃う。それらを手堅く落ち着いた演奏で。
生楽器メインのサウンドにあってエレキGもフィーチャーされており、その濃ゆい色彩がボヤンとにじむような鈍い音色によってメランコリィ & エキゾ度増量、サウンド全体の血色を良くしている。
そして何といっても、数曲に入る客演のスチールドラム。これが、スチールドラムらしからぬフレージング、つーかツィンバロンかダルシマーかといった使われ方。
ことにアルバム中唯一のインスト曲なんかは、このスチールドラムのおかげで、何処の音とも知れぬルーツMIXED-UPの佳曲に仕上がっていて、とても素敵。
こうゆうのに弱いのよ、俺。下手なミクスチャー系連中よりよっぽどイカしたアイデアじゃありゃせんか。
11.26.2010
TRILHAS

LENINE.DOC

2010 BRASIL

レニーニの新作は、主にここ10年ほどの間の映像関係の提供曲を編集したもの。
アルバム未収録曲ばかりなので、実際に楽曲が使用された映像作品を知らない俺のような異邦人リスナーにしたら初耳にゃちがいないんだけど、かなり既聴感のある音たち。
ま、制作時期は過去10年遡ってバラついてるわけだし、TVの人気番組のテーマなぞもあるようで、そゆのは当然先鋭であるより大衆受けを意識した作りなわけだし。
大衆受けってことでは、まずは歌の訴求力が大事にされていて、歌唱パートの重ね録りやらエフェクトやら客演歌唱やら人声による手練手管が繚乱。そのため、全体の質感がとても柔らか。
近年のオリジナル作のテンション(ストリングスなどをフィーチャーし、シェイプされ凛とした音像)からすると、実ににぎやかでポップ。なんか、懐かしい。
こうゆうリラックスした(てかユルめな)レニーニもいいもんだけど、「うんうん、レニーニならこのくらいやるよね」なぞと頷いてるうち、七、八分目くらいの高揚感のまま最後までいっちゃう。
寄り道企画として気楽に聴くのがよろし、と。
11.17.2010
The Gipsy Way Of Life

TRAIO ROMANO

2010 FRANCE

南仏を拠点とするロマバンドの作。
♂Vo+G、♀Vo+Cl、アコーディオン、コントラバス、Drという生楽器編成、しゃがれた男声とくぐもり気味の女声もなかなかにジプシーな雰囲気。
中心メンバーは実際にロマルーツだそうで、新世代ミクスチャーとゆうよりロマバンドとゆうほうがずっとしっくりくるほどに、そっち系サウンドが主軸。
なんだけど、クセの強いジプシー味をフラメンコやフレンチといった明るい西南欧テイストで割った塩梅が、ほどよくまろやかでなかなかえぇ具合。
ジャンル混合バンドの手札にあるロマ物みたいに薄っぺらでなく、東欧ローカルのグループにありがちなエグいけど一本調子な感もない。
ロマ系サウンドなら俺は、ZARAGRAFなどごく少数を別にして、パリやバルセロナ辺りのミクスチャー連中よりも東欧ローカルのバンドのほうが好きだが(ロマ物は野趣が大事)、たまにはこのぐらいの都会的洗練もいいね。
ひとついえば、アコーディオンはもうちっと指が動いてほしい。ロマ的高速フレーズは、ノリは荒くても、もっと細かいとこまで弾き切れてくれたほうが気持ちいいよ。
11.17.2010
Miniatura

LUCIO MANTEL

2010 ARGENTINA

このSSWの出自はネオフォルクローレ方面なんだろうとは思う。この新作でもLILIANA HERRERO女史なんつう斯界のビッグネームによる客演歌唱があり、実際その曲なんぞは実にネオフォルクローレ的だ。
が。
前作でも感じたけど、この人は、自身から湧き出る温気で音場を満たすようなエアコンディショニングが持ち味である。
そうゆう、吹きっさらしの清澄感がデフォルトであるようなフォルクローレの空調設定からして異質な音響センスに加えて、今作では、サウンド自体もさらにストレンジな方へ向かってる。
アルバム全体、ルーツリズムやフォルクロリックテイストは抑え気味といってもいいくらいで、サウンドでより印象的なのはその歌唱(ちょい苦で少年っぽさのある温かくも不思議な声)とギターやストリングスなど。ことに弦楽器の使い方は南米のSSWとゆうより、むしろ欧米のチェンバー物やアメリカーナの新感覚の人たちを思わせるような肌触り。
よく聴きゃ欧米産にはないニュアンスがあるんだが、音のシルエットはけっこう南米離れしてるんで、妙な気分にさせられるのよ。予備知識なしに聴かされたら何処産の何者だかわからんような。
アルゼンチン発ポップの進化形として、今後さらに無国籍サウンド化していくのか? 興味深いっスな。
11.7.2010
2010

Las Bordonas

2010 ARGENTINA

タンゴ系ギタリストトリオの作。
オリジナルとカバー。メンバーのひとりが歌い手でもあり、14曲のうち12曲が歌物。
トリオのギター演奏+歌唱が基本編成だが、曲によりコントラバス、Per、Vin、テルミンなどの客演あり。
締まりもあり潤いも豊かなギタープレイは脂がのってるとゆう感じ。ハイファイで深みのある3ギターの響きは、ことにタンゴの曲なぞ、背筋にゾクゾク来る。
んで、そこに載る歌唱、これがなんとも。SP盤から流れてきそうな古色を帯びた晴朗さ(声も歌いっぷりも)。ところが、この歌とギターアンサンブルのモダンな音響とのコントラストにより、却ってサウンド全体の立体感が増しているという不思議。
ところでこのアルバム、ジャケやインナースリーブのイラストがかなり素敵(特にその色彩)。音の充実との相乗効果でアルバムの魅力倍増。パッケージプロダクトを手にする歓びここにあり。
11.5.2010
FOLK

Natalia Barrionuevo

2010 ARGENTINA

♀シンガーの作
ノド自慢タイプではないが、ほどよくハリもノビもあるクセのない歌声。
曲毎に様々なアンデス系ルーツリズムが登場するけれど、それらは専らリズムフォームのバリエーションとして機能していて、FOLKと銘打っているほどにはサウンド全体にルーツ色を押し出してはおらず。
フォルクロリックテイストより印象的なのは全編に溢れるラテン〜スパニッシュな匂いの生ギターや時折鳴くエレキだったり(Gフレーズはルーツ系の微妙な綾を表現してるのかもしんないが、俺の雑な耳じゃそのへんひっくるめてスパニッシュに聴こえちゃうのよ申し訳ない)。
それに、メロディのポピュラリティやすっきり整った音像なんかからしても、これはルーツ系ミクスチャー物とゆうより、よくできたポップスであろう、と。鮮度高くして、品もあり。
あと、総じて曲が長くないのがいいね。どれも腹8分目くらいでスッと終わり、もたれない。ポップスアルバムとして、実にチャーミング。
11.5.2010
FLORALIA

DURATIERRA

2009 ARGENTINA

縦長ジャケに収まったブエノスアイレス新型バンドの初作
♀Vo(素直なヤングアダルト声)、G、B、Dr+Per+Voの4人編成
。それぞれ他所でのキャリアもある実力派。カバー/トラッドとギタリストによるオリジナル。
曲毎に4人+1てな感じで様々な楽器の客演があるが、土台は4人のメンバーによる、生楽器の躍動も快く締まったバンドサウンド
。ラストは管弦入り(弦は新鋭カルテットVisera Crash)のシンフォニックなチューン。
音の感触は、ジャズやロックをベースにするものとゆうよりはずっとモダンフォルクローレ寄りであって、実際個々のバックボーンにはフォルクローレも含まれるのだろうが、さりとてストレートにフォルクローレとはとても思えず。
例えば鍾乳洞内の大ホールみたいな地底の広いスペースで、端然かつ生き生きと演奏しているがごとき、不思議なアンビエンスのサウンド(具体的音響がそう、ってよりも印象、オルタナ感の話ね)。その意味じゃアートワークがかなりうまくサウンドを表現してる。
ともかく、フォルクローレ然と澄みわたった晴れ空は思い浮かばないけれど、密室的でもなく、闇に沈み込む風でもない

で、端正なバンドサウンド。で、アコースティック優勢なれど音響はモダン。で、けっこう情感豊かなメロディと歌唱を思うにつけ、軸足は意外とエクスペリメンタルよりポップにあるんじゃないかとゆう。

さりげなく立ち位置の新しい人たちであることよ。
11.1.2010
El Corazon Fantasma

Alvy Singer Big Band vol.3

2009 ARGENTINA

新解釈タンゴプロジェクト PLANETANGOSのコントラバス奏者にして、他にも幅広く活動する多楽器奏者JANO SEITUN率いるグループの新作
ここでのJANO SEITUNはディレクション、ソングライティングと歌唱、Gなどをこなし、多才ぶりをじゅうぶんに発揮。ソフトでちょい塩辛な、なかなかにえぇ歌声。
Big Bandとゆうのはあくまでそうゆうネーミングにすぎず、当人の他、Dr、G、Pf、Cl、Tp、Cho、コントラバスという7人編成。TOMI LEBREROのバンドネオンやMIRANDA!の♀Vo等々、曲毎に客演複数。
サウンドも単にBig Band jazz風ってわけでなく、また腕利き集団のプレイを賑々しく披露するのが主旨でもなく、リラックス & ハピネスムード溢れる歌物集。往年のヒットチューンのオケ風からバンドサウンド、G弾き語りまで、多彩なスタイル。絶妙な塩梅の懐っこさ、メランコリー、パッションでもって、ほの甘く胸にくる。
ぜんぜん気負ったとこはないが(アレンジなんかエッジ云々とゆうよりはむしろベタ気味なとこもあるくらいだが)、カジュアルさがユルさに傾く気配もまるでなく、音にも佇まいにも自然な洒落っ気がにじみ出る

このさりげない軽みってのは、実に、日本人が出すの難しいわな

11.1.2010
This is the second album of a band called Adebisi Shank

Adebisi Shank

2010 IRELAND

アイルランドのやんちゃインストギタートリオの2ndは、ポップなエレクトロフレーズを大々的にフィーチャーするとゆう大幅シフトチェンジ。やっぱし1stで突っ走りすぎて、ネタ尽きたか。
とんがった人力テクニカルサウンドから大らかでトボけた味のあるエレクトロ増量へという流れは、バトルズを思わせる。パッと見今どき風なジャケといい、この展開は誰ぞ大人の入れ知恵か。
で、今回のエレクトロとトリッキーな人力パターンとの合わせ技。それがまた臆面もないっちゅうか、音楽的にうぶな中坊のハートを直撃しそうなフレーズのオンパレード。80'sを
咀嚼した結果とゆうにはずいぶんとイージィだが、相当にキャッチーでもあるのは否定できない。
おかげで、エッジの立ったポストロックやミクスチャー系の人たちがそこまで演ったら「ヤケクソか?」と思われそうで躊躇するような領域に、勢いで突っ込んじゃったような格好に。
んで困ったことには、先鋭的な諸先輩方が知恵を絞った音の数々を、単純な耳楽しさでは上回る瞬間がちょいちょいあるのよ、これが

ま、相変わらず深みに欠けはするし、脱力させられる部分も多いし(曲のタイトルセンスとかさ)、今度こそ音楽的ストック使い果たしたかとも思える。ただこの無鉄砲ぶりは青い故ばかりでなく、ひょっとしてこいつらの持ち味なのかとも。

半ば呆れつつも、この後が気になってしまうのだった。

10.20.2010
SILENCIO

WORLD STANDARD

2010 JAPAN

好い趣味の大衆音楽団WSの新作は南米風味。アルゼンチンの大河ラプラタ流域で紡ぎ出される音たちの如き、清澄、神秘、メランコリィといったエッセンスがにじみ出す。
とはいえ彼らの音を「今回はブエノスアイレスで来たな」などと戦略分析的に論ずるのは不粋ってもの。実際、詞やビジュアルも含め表現の隅々にまで、あからさまな趣向はまるで見当たらず。いつもながら、よく煮込まれたエキゾチズムの淡く薫る温かいサウンド。
すでに約30年のキャリア。すっかりこなれた手腕、洗練されたプロダクション。まことによろしきことなれど、……なれど……。
初期の、未だ熟さぬ佇まいに結ばれた素朴なきらめきの雫を深く愛する身として、巧くなってしまうWSにおぼえる一抹の歯痒さを如何にとやせむ

そのあたりは鈴木惣一郎も自覚しているようで、フレッシュたることに心を砕いている様子が、インタビューからも伺える
。けど、難しいやね。「出来上がりすぎないように」なんてのが垣間見えちゃうのもやらしい話だし、こうゆうことはそもそも意識した時点で終いだっちゅうか。うぅむ。
次はライブ盤、いや、いっそライブのリハーサルテイク集とか、どうすかね? 俺はすんごく聴いてみたい。

10.19.2010
RIO ARRIBACHANCHA VIA CIRCUITO

CHANCHA VIA CIRCUITO

2010 ARGENTINA

デジタルクンビア方面で鳴らすZZK Recordsより、こりゃまたストレンジな佇まいのデジタル物。
打ち込みリズムの上にフォルクローレ系楽器や歌が現れては消える、すき間の多い骨格サウンド。アンデス風味溢れる世界。
デジタルクンビア系にありがちな過剰さや下世話な奇矯さはなし。それどころか、一聴、エクスペリメンタルなフォルクローレ物かと思っちゃうほどにシェイプされたサウンド。
だけど、落ち着いて聴けば、アンデスの空の如き広く澄んだ空気感がまったくない。となると、うわべはいくら似てたって、こりゃフォルクローレじゃない(俺のフォルクローレ判別基準は第一に空気感ってことッス)

なんかこう、すべてのマテリアルはその音質について自分のフィルターを通さずにはおかないし、リズムは一打単位にまでバラして再構築せずにはおかぬ、とでもいうような制御志向に充ちた音像
。ある程度自然体を志向するフォルクローレとは根っこから違う。顔の造作はよく似てるんだけど醸し出す雰囲気がまるで違う他人同士みたいな。なるほど、それで ZZKから、と妙に納得。
これ、面白いね。
南米産の変な音もずいぶん聴いたし、この頃はもう、ちょっとやそっとじゃあんまり「来ない」のよ。なんて、調子こいたことぬかしそうな輩(←俺)に、意表をつく方向からの一撃。
10.17.2010
Beirute

Vitor Santana

2010 BRASIL

ギタリストでSSWの作。
ことさらエクスペリメンタルな要素はなく、当人の歌声も含めて実にまろやか。アコースティック/エレクトリック織り交ぜて安定したバンドサウンド。
温性あふれる中にも、溌剌ぶりや音の切れはしっかりあるあたり、JORGE DREXLERやらJEB LOY NICHOLSといったSSWの音
にも一脈通ずるものを感じたりも。
タイトルといい、モスクやスーフィーをあしらったジャケのイラスト(センスえぇね)といい、南米から見た中東というエキゾチズムがテーマ? ことさらアラビヤ〜ンな音でもないが? 
ま、MPB、サンバ、タンゴ風等々、曲調はいろいろ。佳曲揃いだが突出したエグ味はないんで、器用貧乏気味に聴こえるきらいもある?
ってな憂い(余計なお世話とも)なんぞ彼方へ吹き払うのが、アコースティック & コントラバスを使い分ける生ベース。
なにより電気増幅したベースよりもノーブルな音色、かつ、しっかり腰のある音密度でグルーヴを支え、ときにはリードする。
この低音がサウンド全体を、倍、魅力的に響かせていると思うね。それほどに気持ちよいのだった。

10.11 .2010
two years today

DIRECTORSOUND

2010 UK

宅録系アーティスト♂の独演プロジェクトの作品。
曲を書き、ドラム客演以外の演奏をこなし、レコーディングも自分でする。
欧州大衆音楽や軽音楽、サントラ風などをブレンドしたポップインスト。足し算の発想でこしらえた、穏やかでノスタルジックな音風景。
こうゆう系統の音作り(ことに和物)では、引き算のが深いみたいに考える向きが多いように思えて。その結果、引きすぎてマイナスになってんじゃないの? ってのも少なくないように思えて。その意味でも、足し算的な佳品が出てくるのは頼もしい。
で、こうゆうセンシュアルな世界を描くには、ハンドクラフトの質感ってのがやっぱり大事だよな、としみじみ思う次第。
翻ってみるに、野放図なデジタル制御とノイズリダクトによってどれだけ興が削がれることか。〜トロニカやらポスト〜の類にはこうゆう世界を目指したのがあふれてるけど、俺がなかなか楽しめないのは実にその辺なわけですよ。
それと、DIYな表現が陥りがちな閉塞感を避けるのに、今作中の要素でいえばミュゼットや見世物小屋風が醸すストリートの猥雑さの強調(ありがち)をもってするんじゃなく、さびれたリゾートテイストをフィーチャーして風通しをよくするあたりが、新鮮で好ましい。
10.11 .2010
ironto special

the black twig pickers

2010 USA

バンジョー、ギター、フィドルという編成の野郎3人組み。ウォッシュボードやマウスハープ等も演る。いくらか歌いもするが、メインはインスト。オリジナルとトラッド。一発録り。
ま、そうゆう編成の如くに米北部のルーツ & マウンテンな音なのだが、濃ゆいルーツ系ミュージシャンの音からにじみ出るようなテクニックを超えたサムシングエルスが希薄なんだな。
演奏は達者なんだけど、スタンスがどっかカタログ的とゆうか。一歩引いたとこからこの手の音楽を愛好してる風とゆうか。
加うるに、15曲も詰め込んじゃうような過剰さとか。一見それっぽいがよく見りゃ深みのないジャケのセンスとか。どうにも、正調USインディーのぼんくら野郎の臭いがするぞ、こいつら。なんつってもインディーズの由緒正しきThrilljockeyからのリリースなわけだし。
んで、俺はそうゆうのがぜんぜん嫌いじゃない。
切れ味の鈍った本格派より、振り切れたぼんくらぶりのが愛しいぜ、と。充実したカタログを眺めるのは、現物を鑑賞するのと同じくらい大好きさ、と。
10.11 .2010
SILENT MOVIES

MARC RIBOT

2010 USA

マークリボーの新作は、書き下ろしと過去のサントラ仕事からの曲のセルフリメイクとで構成する、チャップリンの映画をイメージしたコンセプトアルバム。
ほとんどギター独奏。
かなりストイックな内容かと思いきや。
そもそも、繊細な生ギターからエレクトリックで切れたアヴァン、ブルージィやラテンの味わいまでプレイスタイルが幅広い人なわけで、今作でもそれを活かしてる。また、曲によっては映画本編から抜いてきたような音響効果(町の喧噪入りとか)があったりする。
おかげで飽きずに聴けましたわ。正直、ワンスタイルで全編通されると、息が詰まるとこもあるからね。堪え性足らんですんません。
映画っちゅう(しかも前衛物じゃなくチャップリンみたいな味わい物)テーマだけに曲調もイマジナブルで、彼のコンポーズセンスにおけるリリシズムなぞが再確認できたのもよござんした。

10.11 .2010
to the nines

paris match

2010 JAPAN

年に一度のお楽しみ、paris matchの新作。
paris match流ポップスの2大エッセンスたるソウルとジャズに並ぶほどに、今作ではファンキーテイストがフィーチャーされてる。ベースは腰の入った太さでうねり、ブラスも活躍。
PMサウンドにファンキー。
なんか、ずっと温存気味にしてた強力な手札をここ一番で切ってきたような感じ。
ファンキーってのは、グルーヴィな世界を演出したいとき即効性を発揮するけれど、実はなかなか扱いが難しい手札だぁね。わかりやすいぶん、すでに記号化してるわけだから。PMみたいに勢いよりも練った音作りが売りの場合、アイデア的に攻めの姿勢でいかないと、取って付けた「っぽさ」だけの音になっちゃう。
そのへん、どうか。
ミズノマリはファンキーサウンドと一体化して押しまくるようなドスの利いたのとは対極の声で、歌とサウンドの間にはデフォルトである程度の対比/緊張関係が生まれるわけで、そこを活かしたファンキー加減のバランスはさすがに巧いと思う。
それと「攻め」といえば、PM的には珍しい打ち込みトラックチューンがさりげなく配されてるあたり、
「なるほど、わかってんのね」と勝手に納得したりして。
ともあれ、そんな新味も奏功して、10周年にふさわしく彩り豊かでヴァイタルな印象のアルバムに。祝着至極。
10.6 .2010
Luz mala

Omar Giammarco quinteto

2010 ARGENTINA

quinteto 名義ではあるが、ほとんどの曲を作編曲し、歌い、ギターを弾き、プロデュースをし、独りでジャケに写ってるSSW、Omar Giammarco の作品といえる
アルゼンチンとその周辺のルーツリズムのミクスチャーサウンド。ってのは今日び珍しかないが、ドラムビートの有無の使い分けが巧い。
ルーツリズムの躍動感を活かしたい曲ではドラムレス(
ルーツ系打楽器フィーチャー)でより本格っぽく聴かせ、その対比でドラムのビートに載った曲はポピュラー音楽としてモアグルーヴィに響かせるというメリハリ。編成的には全編ドラムビートで「普通の」ミクスチャーロック/ポップ路線でも行けるところ、潔くドラムのON/OFFを切り換えられるのは、やっぱり実質ソロという意思決定機能のなせるわざか。
アルバム全体ではルーツ系本格テイストが微妙に強調される構成。このおかげで「ただ者じゃない感」増量だが、ポピュラーテイストも尻上がりに濃度を上げてくるので仰々しい印象にはならず、ほどよいスケールのサウンドに収まってる。そのへんのさじ加減がなかなかニクいね。

軽くしゃがれた歌声も♂としちゃ俺好みでいい感じ。
9.26 .2010
VALERIE

BLUE MARBLE

2010 JAPAN

ソングライター2人組みのユニットがベテランシンガー大野方栄をフィーチャーした作品
大野方栄といえばCMやらバックコーラスやら歌仕事の豊富なキャリアに示される如く歌唱力はいうまでもないが、なんつってもその声が魅力の人である。個性と大衆性との最もハイレベルな地点での均衡ってのはこうゆう声か、ってな。マナとか大空はるみの系統っすな。
彼女のことはムーンライダーズ絡みで昔から知っちゃいたけど、マナや大空はるみのソロワークは愛聴盤なのに、ソロ作「マサエ・ア・ラ・モード」なんかはピンと来なかった。
でも、これ、なかなかいいね。こうゆう声に映えるのはやっぱりまっとうなポップスでしょ。テクニカル→アダルト路線→ジャズテイストで、とかってイージーな発想はなんか違うよな。
で、今作。シティポップとはまた別の方向(乙女カルチャー。なるほどねぇ)から70年代辺りの国産良品ポップスの再解釈にアプローチしてんだけど、コンセプトもクリエイティビティも正直ちょいユルな仕上がり。でもそれが、大枠では却ってよかったと思うのよ、俺。

ユルいったって、サウンドプロダクションは、麗しい歌声を盛る器として丈夫さも装飾もさしあたり不足なし。第一、乙女系には、ブラッシュアップし尽くしたような隙のなさは似合わないよね。
俺的にはもう少し人力演奏のニュアンスを増量してほしいとこだが、往年の音をまんま再生産しても懐古趣味でしかないわけで、今世紀の音としてはこれでいいのか、と思ったり思わなかったり。
9.19 .2010
MAN ALIVE

EVERYTHING EVERYTHING

2010 UK

俺は、人力演奏グルーヴにもプログラミングされたグルーヴにもそれぞれのよさがあると思うし、それぞれに楽しめる 。そうゆうフラットな姿勢でいるつもりなんだけど、これだけエレクトロニクス使いが普及した世にあっても、人力と打ち込み、両者の比重が拮抗しつつ全体として調和したひとつのグルーヴを出すのに成功してる音には、ことポップミュージックではなかなか巡り会えない。
などと嘆いてみせる輩へ、この、野郎4人組みバンド from UK。人力とエレクトロニクスを巧みに融合したナイスグルーヴ。
XTCやTears for Fearsを
引き合いに出して語られることが多いようで、メロディのヒネりや打ち込みの凝りようは、なるほどそんな気もする。ま、それはさておき、ポップ/ロックマニア受けするアーティストにありがちな美メロ偏重サウンドでなく、リズムも面白いうえ、メロディと同等の存在感を放っているのがかっこいいじゃないっスか。
んで、そのリズムも含めサウンド全体の骨格として、エレクトロニクス使いが重きを成しているわけですよこのバンドは。サウンドレイヤーとか装飾的リズムループとかじゃなく、バンドスタイルのノリのいいサウンドというフォーマットを形成する要素として、エレクトロニクスはむしろ役割的にギターと張り合ってる。ミクスチャーのいち手札としての添え物風エレクトロなんて甘っちょろさはなし。
実際、人力(特にドラム)と合奏してこれだけしっかりノリを出すってのは。欲張りすぎて揃えた手札を消化する技術が追いつかないミクスチャー系もままある中、プレイヤーとしてもなかなかな人たちじゃあるまいか。

9.19 .2010
LINHA & SOUL

SERGIO PASSOS

2010 BRASIL

これが初作というSSWのソロ
生楽器が活躍するアンサンブルに、エレクトロニクスも効果的に使用。リズムを打ち出したサウンドで、サウダージ、ファンキー、ストリート感など様々なテイストの曲調。
というと非常に今どきで、実際そうゆう佇まいなんだけれど、この人は、サウンドの肌触りにちょっと変わったことがあって面白い。
特徴的なサウンドの肌触りってぇと、ウッディ、メタリック、プラスチック、人肌とかが一般的だと思うが、この人のそれには時として、なにやら珍しい生き物の皮膚とでもゆうような生々しさがのぞく。生々しいっつっても気色悪いヌメりとかそうゆうんじゃなく、サウンドの表面に、人工的に削りだしたフラットさとは異質の起伏があって、そこに掌を置いたら脈動が伝わってきそうな、とでもいいますか。

もろエクスペリメンタル系ならともかく、ポップミュージックの人でこの質感とゆうのは、しかも、そうゆう世界観なりキャラなりを意図的に打ち出してるわけでもないのにってのは、ちょっと新鮮。それが、聴いてて「ん?」となる程度にストレンジ風味を醸してて、よろし。
グロく悪目立ちしないよう加減が必要とは思うが、この味がもうちっと増量された音を聴いてみたいもんだすな。
9.12 .2010
COPACABANA

FINO COLETIVO

2010 BRASIL

MPB新世代実力派グループの新作
前作から浮ついたところのない風情ではあったが、さらに熟して、小憎らしいほどに余裕かました快適サウンド。
南米ルーツリズム、ソウル、レゲエ等々をよくブレンドし、えぇ塩梅のグルーヴやメロウネスを醸造し、オルタナな隠し味もひと匙。実に文句のつけどころのない音。
この人たちはバンドフォームではあれど、元々余所で活躍する者も多いユニオンで、音にも佇まいにもいわゆるバンドっぽさが希薄。そうゆうのは往々にして企画物的だとか、あんまりよくない方向に作用しそうなもんだが、この場合は、それが彼ら独特の味わいに、密に関係してると思われ。
彼らの音は、グループであるのにSSWっぽいというか、セルフメイド感がある(けど造作はリッチ)のが特長だと思うわけですよ。「このバンドのオリジナリティをガツンと打ち出そう」って熱さはない、けど、クリエイティビティに対する誠実さは皆もってる、ってな肩肘張らない姿勢がうま〜く音に表れると、こうなるんじゃないか、と。

実際SSWのソロ作でこんな仕上がりだと、器用でお上手なんて皮肉な見方をしてしまいそうだが(ことに俺なんぞは)、彼らの余裕っぷりから、これは目一杯気張った結果じゃなく天然の高品位音楽なんであって、素直に楽しもうって気にさせられる

そういや歌い手複数いるのに皆わりと同系の声で、それもSSWっぽく聴こえる理由かな。隠しトラック(リズムだけの合唱曲)のおまけ具合もありきたりだけどいいムードで、最後まで憎いねどぉも。
9.12 .2010
criollo businessman

MASILVA

2009 COLOMBIA

コロンビア出身で歌唱とソングライティングを手がけるCamilo Masilva と、ビートメイキング担当ブラジリアンDiego Ain のコンビ初作。他、客演で歌唱、G、Per、管など。
南米ルーツリズムやフラメンコ、レゲエなど汎ラテンな手札のミクスチャー。人力(含、ヒューマンビートボックス)とエレクトロニクスとの混交リズムトラックに、なかなか歌心のあるメロディがのる。スパニッシュGが活躍。
マドリッド録音、UKマスタリングっちゅう、今日的インターナショナルプロダクション。
こうゆう、程々インテリ程々ストリート風情の輩の出す音ってぇと、小器用か勢いまかせか、いずれにせよもうひと味足りないのが多いのでやや構えて臨んだが…。ひねくれ者のチェックを際どくすり抜けて来たね、こいつらは。

まず、ミクスチャーのこなれ具合がなかなかで、諸要素の輪郭とそのつなぎ目がほどよく煮崩れてる。歌やGの紡ぐメロウネスとも相まって、ひ弱くはないが柔らかで丁寧な印象となっていて、いい感じ。
それと、音像のボトムにエスプレッソの香の如き濃厚な気配の澱みがずっとあるように思えて仕方ない。このために、例えばブラジル産のヌケ感、アルゼンチン産の清澄、フラメンコの哀愁等々のわかりやすい味わいとは微妙に違うニュアンスが生まれてるんじゃないか。
これはコロンビア産由来の匂いか、Masilva固有のものなのか、ちょっと気になる。
9.1 .2010


2010年4月〜2010年8月

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uwatzlla@visitor2.jp


※英語以外の外国語を正しく表示させる技術がないため
(主にアクサンなどアルファベットに付く記号のことですが)
ただのアルファベットのままでお茶を濁してます。
ことにラテン系のアーティスト名や作品名は不正確になること、
承知いただきたし。

作品の国名表示は厳密なものではありません。
CDの生産地クレジットを基本にしてはいますが
アーティストの出身や活動拠点と関係のない国からのリリースの場合
どうにも違和感を禁じ得ず、そのアーティストのプロフィールとして
よりふさわしいと思われる国名を表記することもあります。
参考程度にご理解いただきたし。