Uwatzlla!

PARA ARMAR

TREMOR

2010 ARGENTINA

フォルクローレなどのルーツリズムを分解し、生楽器とエレクトロニクスを巧みに操ってストレンジ風味に組み立て直すアルチザンの、これは、00年代後半の外仕事(TREMOR MIX)のコンピ
自身の工房で好き勝手やってる感じとかガジェット感がTREMORの持ち味だと思うけど、余所から発注された仕事を受ける以上はTREMOR 印をアピールせねばってことなのか、オリジナル作より押し出し強めなチューンが並んでて、却ってそこにTREMOR 流のメソッドが浮かび上がってるという。
ひとつには、素材となるルーツリズムに新鮮でいいネタ使ってるってのが、あらためてよくわかる。TREMOR の場合は各種生楽器を自前で演れる(しかも巧い)のがデカいやね。おかげで、非演奏系リミックスアーティストのコピペな感じとは構築感が違うわけですよ。
それと、細かくバラした素材をつなぎ合わせて作るリズムトラックのギクシャクしたノリ。その独特なグルーヴこそがTREMOR サウンドだな、と。

因みに、元曲の要素をTREMOR がデフォルメしたのか、TREMOR MIXによって導入されたのかはわからんけど、フォルクローレ色を濃く出した曲が多く、アルバムのトータルカラーになっちょります。
8.26 .2010
TRAVESIA AMERICANA

NELI SAPORITI

2010 ARGENTINA

そこそこキャリアのある♀SSWの作
実はタイトル買いとゆうか、ひょっとして南米とアメリカーナのブレンドっスか、と勝手な期待を抱いて聴いたところが、サウンドにアメリカーナはほとんど関係なかった。
が、聴き始めりゃ、じきにそんなこたどうでもよくなったね。

ほぼ自作で、ルーツリズムをベースにした多彩な曲調。Gとリズムトラックを土台として、曲毎に様々な生楽器が少数客演。全体シンプルめな編成だが物足りなさは皆無、どころか、オーガニックな響きのサウンドにはエッジの立ったトコこそないものの、芯があって瑞々しさに溢れ、聴き惚れましたがな。
のびのある落ち着いた歌声はことさら俺好みなわけじゃないけれど、演奏と過不足なく調和してて、ナイスなバランスの快さ。
ミクスチャー馬鹿丸出しの不純な動機で手にしたものの 、結果オーライってことで。鮮烈な音像の好盤ざんした。
8.26 .2010
...VIA EVROPA

ZARAGRAF

2010 FRANCE

在仏、ジプシー系ミクスチャーを奏でるマルチ奏者4人組みの新作
これまでは、ちょい猥雑で小粋でファンタジックな、ツィガーヌの匂い溢れる夜の楽師たちってイメージが強かったが、今作では南欧=地中海沿岸の陽光を感じさせる諸要素を採り入れる方向で音楽性を拡張しており、題の如くに汎欧州ミクスチャー物としても堂に入った仕上がり。いずれの手札も付け焼き刃な感がなく、じゅうぶんに血肉化しているところが頼もしい。
タフにして繊細、艶やかで贅肉のない演奏。ZARAGRAFを象徴する
MIRA姐さんの大人可愛い歌声は麗しく、野郎たちのほどよい枯れ声で歌われる曲とによる構成のメリハリもええ塩梅。バンドサウンドじゃなくたって、派手なエレクトロニクス使いやオルタナ仕掛けなんかなくたって、貧相でイナタいとこなど微塵も感じさせぬほどにしっかと出来上がったZARAGRAF印の音楽。芸能にもアートにも偏りすぎず、馥郁とした大人な佇まい。
ジプシー系ベースで生楽器メインの欧州ミクスチャーの有りようとして、実に俺好みのエレメンツだけを凝縮したような存在で、すんばらしい。フランスにゃこの人たちさえいてくれればよし、ぐらいの勢いでフェイバリットざんす。
8.24 .2010
MINT CONDITION

CRAZY KEN BAND

2010 JAPAN

夏の贈り物、CKBの新作
よいポップスの二大要件たる刺激と安定感とのバランスからみると、やや安定感に傾いた印象。曲調にも歌詞世界にも、派手な変化球はあんまりないのだ、今回は。
もちろん、表現の独自性ということではすでに抜きん出た地点に到達しているCKBであるからして、「ならでは」の味わいに溢れ、きっちり作られている。が、例えば、詞曲とも色モノっぽい素材
を使いながらもかっこよく仕上げることで、ポップスの境界線をおし拡げていくような攻めの姿勢は、今回おとなしめである、と。
単に地味だって話じゃなくて、こう、素直な曲が多い。
でも俺は好きよ。
近作(ことにタイアップ系)によくある派手にコミカルな世界を際どくポップスとして成立させちゃうようなテクニックと革新性は、すごいとは思う。でも俺の場合、CKBの音楽についちゃ、基本ストロングスタイルでちょいヒネリくらいのにいちばんグッと来るのよ。ほんと、好みの問題で。
それからして今作、特に中盤以降、まさにその手の曲が並んでるわけですよ。剣さん一流のオリエンタル風情も芳ばしく、俺のツボにとんでくるクリーンヒットの連打。痺れるね。
エポックメイクなアルバムじゃないだろうけど、俺的には、ひょっとしていつも以上の高打率かもしれないMINT CONDITIONなんでした。
8.11 .2010
BORN IN A NIGHT

HASSLE HOUND

2010 UK/USA

在英 & 在米の男女3人によるユニットの作品
♀による歌物がメイン。♀は歌唱およびVinやGなどを操るマルチ奏者。♂2人はともにエレクトロニクスを担当し、片方がさらにG & Bなども。客演はなし。

ジャケのイラストが中身とよくマッチしてて、色彩感はあるがほの暗い世界、不穏な気配漂うファンタジックさっちゅうか。そんなトーンに覆われ、エクスペリメンタルではあれど、際どくポップに傾くサウンド。そこに血圧低めで無表情気味の歌がのるという。
編成からしていかにも俺の苦手なナントカトロニカみたいな音出しそうなんだが、意外にもこれが昔のアヴァンポップを思わせる質感で、面白かった。
音楽制作にデジタル機器が導入される以前、アヴァンな人たちが奇想を具現化するために人力+アナログ技術で頑張ってた頃の匂いのする音がなかなか好もしい。例えば「サンプリング」じゃなくて「サウンドコラージュ」といってた頃のような感触。しかもそれが、狙ったわけじゃなく自然とにじみ出た風で、なおよろし。

そんな古色が音の箔付けに一役買ったものか、グルーヴにせよ歌物としての落ち着き具合にせよ、こう、つかみどころの感じられる音であるのもよかった。俺にとって、多くのトロニカ系が「来ない」最大の要因って、思うに「精妙に素材を配置」しただけみたいな扁平さ淡白さで、そうゆうのに比べて、この人たちの音にはきちんと耳応えを覚えるんだな。

などと御託を並べてはみたものの、これってつまり、単なるアナクロ趣味だったりするのか。どうなんだ、俺。
8.1.2010
LONG TIME TRAVELLER

JEB LOY NICHOLS

2010 UK

ルーツ煮込み系ポップスのSSWの新作は、DUB〜レゲエをフィーチャー。つき合いも古いというAdrian Sherwoodプロデュース。ON-U SOUND周辺人脈の演奏で、Skip "Little Axe" McDonaldも参加。
ジャケの如く、力の抜けた世界。元々へヴィでシリアスな人じゃないけど、いつにもましてライト。DUB装もナチュラルメイク。
こうゆう軽いムード、あんまり好みでなし。正直、今回はあれこれ語ることもないかと思いつつ聴いたところが…。梅雨明けの快晴下での徘徊というドハマリなリスニング環境からくる好印象ってのは否めないものの、流し聴き音楽としての快さが尋常じゃない。
毎度ウォームで落ち着いた歌声もよいが、様々なルーツネタを仕込みながらも、サウンドの適温設定にまったくブレがないのが見事。ディープなレゲエの
熱さや粘り気はなくサラリとしてるが、それもこの人ならではの味わい。あと、ラスタかぶれにありがちな、自然体やら心の開放やらの、うるさめなアピールがないのもいい
ちょっと前にLittle Axeの新作が出たが、アーバン路線のあっさり具合が俺にはもうひとつで。そのかわりってわけじゃないが、期待を上まわったこっちをエントリーすることに。
7.20.2010
churita

mariana baraj

2010 ARGENTINA

モダンフォルクローレの才媛の新作
歌唱とPerさらにチャランゴなども演奏しているが、なんつっても今作のキモは自作曲を揃えたこと。
過去作ではカバーがメインで、曲もサウンドを構成するひとつのマテリアルであり、自作かどうかということよりセレクトや料理法のセンスこそ大事みたいなドライな姿勢が、ミニマルで硬質なサウンドとともにこの人の持ち味だったように思う。
が、今回はネタが自前になり、サウンドの質感にも変化が見られる。
色艶とやわらぎ増量。整頓の行き届いた感じや構築感がやや後退して、そのぶんメロディの存在感が大きくなった。で、そのメロディが意外と懐こいもので、それを引き立てるようにサウンドメイキングにも今まで以上にリラックス感があるのだった。
この変化。
ソングライティングを通して隠れてた資質が自然と開花したのか、ある程度意図したシフトチェンジなのかは、今作を聴いただけじゃわからんけど、なかなかよろしな。
まぁしかし
、健やかに締まった佇まいは、彼女ならではのものに違いないわけで。それを下手に損なわず、えぇ具合にほぐれたムードも漂わすってのは、さじ加減難しそうだな。なればこそ、先が楽しみだす。
7.17.2010
PERCH PATCHWORK

MAPS & ATLASES

2010 USA

シカゴのアヴァンロック野郎4人組みの新作
真っ暗闇を疾走するジェットコースターの如き初期の大騒ぎも今は昔。なんと今回はチェンバーかつポップ。客演による管弦が地味にフィーチャーされ、朴訥だが味のある歌声による凝ったコーラスも全開。下手すりゃ「めまぐるしく変化する〜、キラキラとドリーミー〜」なんて、いかにも今風に紹介されてしまいそうで心配だ(余計なお世話だが)。
が、よく聴きゃさすがに一筋縄じゃいかんようで。
チェンバーとは言ったものの、より詳細に例えれば、クラシックやジャズのバックボーンをもたない者が、主にロック由来の語彙を駆使して寄せ木細工的に凝った曲を作ったらこうなった、てな。
牧歌でハッピーなムードの皮一枚下に見え隠れする、マニアックな構築感。ひとつひとつは変わった形のたくさんの部品を組み合わせて、一見チャーミングなフォルムを描き出すことに成功したという。
チェンバーやらプログレやらマスロックやら、複雑っぽさを手札にもつミクスチャー/アヴァン系バンドは数あれど、そのアウトプットは皆けっこうストレートだからね。この、凝り具合をポップさでコーティングしたような味わいは、なかなか珍しいかも。
にしても、こうもスタイルを変化させてくるとは。過去作を語るのに英国のFOALSを引き合いに出したけど、シフトチェンジの加減もなんかFOALSと似てるな。次はどうする?
7.10.2010
COMO DIBUJO DEL AGUA

MARIO GUSSO

2009 ARGENTINA

モダンフォルクローレ方面の俊才達との豊富な共演歴をもつDr/Per奏者のソロ作。インストと客演歌唱による歌物。
Pf、B、Gをメインに腕達者の客演を迎えた、シンプル目の人力編成。

打楽器奏者のリーダー作であることを忘れさせるほどに清々しく快い曲揃い。楽曲も、演奏も、音響も。
とはいえ、どうしょもなく美しい調べの詰まったアルバムってのは、昨今のモダンフォルクローレ界にあってはさほど珍しくはない。そんな中、この作品がちょっと異彩を放つのは、当人の打楽器がなにしろ饒舌なこと。
もちろんうるさくて邪魔なんてことはなく、音像にほどよい躍動感をもたらしているんだが、とにかく叩きっぱなし。美メロで売るようなフォルクローレ物なら、もっと打楽器の音数を抑える方向で行くと思うのよ今どきは。
ま、当人は1曲しか書いてないし、当然っちゃ当然なプレイによる存在証明だわな。狙ったかどうかはわからんが、それがえぇ具合に異化効果を醸して、美しいうえに鮮やかな印象の作品となった、と。
7.10.2010
di terra e di mare

nakaira

2009 ITALY

西はスペインからシチリア、ギリシャ、バルカン、トルコにアラブまで、地中海を横断する音を手札に揃えたトラッド系ミクスチャーグループの作。トラッドとオリジナル。歌物とインスト。
野郎6人それぞれにマルチ奏者で、ブズーキ、サズ、ウード等々の民族系弦楽器からG、B、Vin、笛太鼓やら口琴やら。Bくらいは電化されてるけど、基本は生楽器の人力アンサンブル。
スローで大人しい曲はないが、超高速エスノ旋律に変拍子バリバリ的キラーチューンもない。けど、ミドル〜ややハイテンポの曲群を巧妙な緩急差で配置しており、さらに曲調の多彩さと使用楽器の足し引きの工夫もあって、俺みたいなオルタナ好みかつ根性なしの耳を際どく飽きさせない。
イタリア産トラッドミクスチャー作品もこの頃だいぶ入ってくるようになったけど、もひとつ、グッとこないわけですよ。Banda物とか期待してんだけど。こっちに踏み込んでくるエグ味のあるものが見当たらない。
ならばこうゆうエディットセンスを見せてほしいもんだ、と。全然オルタナじゃなくても、これはイケる。こうゆうセンスこそがモダンってもんなんじゃないの(エレクトロニカと共演とかも結構だけどさ)。なんつってエラソに。
7.4.2010
EL NINO DE LA CHATA

CURRO FERNANDEZ

2008 SPAIN

セビリアのフラメンコ一家の惣領たる歌い手の作。フラメンコらしくノドを絞った発声だが、さほどしゃがれておらず太くもなく、壮年だろうに老人っぽくも聴こえるという妙な声。
フラメンコを土台にしたほどよくモダンなサウンド。派手な(& ダサ目の)エレクトロニクスなんぞが入ってないのと、ドラムのビートが幅を利かしてないのが、イイ。グルーヴの牽引役としてフレットレスベースとパルマ(手拍子)が活躍するのが、サウンドの色合いを決定づけ、気品をもたらしている。
あと、歌唱の揺らぎ具合とかにアラベスクな気配がけっこう色濃く漂ってて、そこがまたストレンジ。もろにサラセンなフレーズや楽器が使われてるわけでもないのに、意図的なミクスチャーの折衷感とは違うこのニュアンス。イベリア半島南部って、一時イスラム圏だったという歴史の名残かね? なんて、音楽史的なことはさっぱりなクセに、思いつきで言いましたすいません。
そういえば、バルセロナ方面のミクスチャーバンドってのも今や一大ブランドで、次々登場するストリート系のやんちゃな音に食傷気味だったりして、フラメンコ系でもっと落ち着いたのが聴きたいってんで、これに目がとまったわけですよ。
で、こうゆう立ち位置の人って、技能はそれなりだろうけど、サウンド的には飾り気なさすぎるか逆に芸能臭きついか、果たして? と思いつつ聴いたらば、意外にえぇ塩梅の洗練ぶりざんした。
7.4.2010
ANTIFOGMATIC

PUNCH BROTHERS

2010 USA

マンドリンの若大将 Chris Thile を擁するアメリカーナ系若手腕達者揃いの新作。マンドリン、バンジョー、G、B、フィドルという完全ストリングス編成であり、全員Voをとる歌物グループ。
この人たちのキャリアは、斯界のスタープレイヤー集団に相応しいその王道感が眩しくて、へそ曲がりな聴き手たる俺には取っかかりが見つけにくかったわけですが、今作はジャケのセンスが多少気になったりもして、試しに何にも知らない新手グループのつもりで聴いてみたらば、けっこういけた、と。
曲調はブルーグラスやカントリーやマヌーシュスイングやらの諸々を煮込んだ、コクがあって味はわかりやすいストリングミュージックで、これを小憎らしいほどに落ち着いた技巧で奏でるわけですな。
サウンド的にはギミックなし、まったくのストロングスタイルなんで、俺なんぞからすりゃ「まあ、お上手」で終わってしまいそうなところ、打楽器レスであることと、演奏に比べてこちらはノド自慢どころかけっこう朴訥な歌声とがある種テンションを生んで、それを際どく免れているのだった(ひねくれた聴き方で御免よ)。
これで一曲一曲がもちっと短めだったらなぁと思うんだが、そもそもオルタナの人たちじゃなし、そうゆう方向は難しいか。
7.2.2010
SHANGAAN ELECTRO
New Wave Dance Music From South Africa

V.A.

2010 SOUTH AFRICA

南アの、打ち込み系黒人アーティストのコンピ。彼の地の新傾向音楽であるということと、簡素なエレクトロニクス使いが往年のそれを思わせるという二重の意味でのNew Wave。
とはいえ、ジャンルを表すNew Wave 云々は「エレクトロニクス」「アフリカ音楽」っていう記号的な連想によるところ大で、サウンドの肝は往年のNew Waveとは全然違うと思う。
おんなじ道具(エレクトロニクス)使っても、ことリズムに関して、感覚が根っこから違うと、出てくる物がこうも違うかと驚かされるね。
欧米のポピュラー音楽をバックグラウンドとするミュージシャン(日本人含む)の大半は、アフリカンテイストを採り入れるつもりで自前のフォーマットに「アフリカ」を強引にはめ込むことで、そのエッセンス(西洋音楽的譜割に収まらないリズムの訛りとか強烈な反復とか)が濾されてしまっても、意外に頓着しないんだよね。逆に見れば、身になじんだ音楽的快感の生理に基づく加工の結果であるともいえるが。
そんな欧米ポピュラー仕様のアフリカもどき物は世に溢れているけれど、打ち込み系でここまでネイティブの生理を反映させた音は過去には希だったんじゃなかろか。
プログラムに御された産物であるからして当然リズムはクォンタイズされ、反復もほどほどなわけだが、トータルなシミュレーションの精度は欧米産の「もどき」とは段違いという。
例えば、vocaloidで
高速複雑なラップを追求したら、そのフェイク感も込みで新奇な物ができちゃったみたいな、この微妙な(絶妙な)リズム。我々はもちろんアフリカの皆さんにとってもけっこう新鮮なんじゃないスかね。故に、あちらではまさしくNew Waveと。
7.2.2010
HISTORIA MUSICAL de ...

BANDA 20 DE JULIO DE REPELON

2006 COLOMBIA

コロンビアの、なかなかに由緒あるらしきブラスバンドの作
管楽器+ルーツ系の打楽器というオーソドックスな編成で、ときどき歌い手も加わる。
今風な仕掛けなんぞまったくないが、クンビアやファンダンゴなどのルーツリズム中心の楽曲群は意外なほどに表情豊か。2CD40曲という特大ボリュームを飽きずに聴けるって、けっこう驚き。
決め手はまずリズムだね。この社中は打楽器陣もブラス陣もリズムがしっかりしてる。ルーツ系ブラバンもいまや世界あちこちのものが聴けるけれど、ポピュラーミュージックのビートに慣れた耳からして、リズムのユルさをストレスに感じないってのは希少じゃなかろか。
ことさらパーカッシブな曲調ではないけど、全体溌剌とした躍動感に溢れ、細かい部分もごくごく自然に締まってて、実に気持ちいい。
それと、コロンビアの音って、ブラジルとカリブに挟まれていながらどちらの全開感とも微妙に違う、なんつーかこう、エナジーをいくぶんか内に秘めて芯から燃えるような。そうゆう内なる熱気を露悪的に出すのがデジタルクンビア勢の変態趣味だと思うが、そりゃ置いといて。
そんな放熱のセーブ傾向はこの人たちの場合、音をすっきりまとめる方向に機能したと思われ。カリビアンやブラジリアンの饒舌さをほどよく抑えたような、賑々しくも決してハメを外しすぎず時にエレガンスさえ漂うサウンド。それがまた気持ちいいのだった。

6.25.2010
突弦変異

平沢進

2010 JAPAN

国産オルタナポップのオリジネイターの一人にして、インディペンデントな音楽ベンチャーのフロンティアたる巨匠の新作。彼の人の特長的手札のうち弦楽使用をばデフォルメした自作リメイク集。
その長きにわたるキャリアを甚だ愛好してきた俺だが、期待値の高さ故か、異才の再生産的印象が気になってしまうことがあり、近年の巨匠には少々もどかしい思いを抱いているのは事実。そりゃ、毎度驚くほどの革新性を求めるのは無茶だろうが、いたって冷静に聴けてしまいがちなのがなんとも……。
今作にしたとて退屈ということはない。期待を上まわる昂揚はなかったけれど。
全キャリアから偏りのない選曲だが、俺としては、そもそも弦楽と親和性が低いP-MODEL初期や、弦楽になじみやすいだろうソロ開始以降の楽曲よりも、デジタル機器導入初期P-MODELの民族テイストな曲たち(実際、疑似ストリングスな音を用いてライブ演奏されるものもあった)、具体的にはサイボーグ、コヨーテ、オルガン山、さらに遡って、フルヘ、ヘブン、アナザースメルなんかで固めたVol.2を是非聴きたい。選曲の意外性なんて要らないから。
それと、ひとつだけ現今の巨匠の音に望むとすれば、草食系でエコな質感よりも、へヴィインダストリィな巨大変圧器がビリバリと放電する如き、腹に来る、野蛮なほどの力強さ。これですよ。何卒お願い申す。

6.23.2010
SAMBA CARIOCA

VINICIUS CANTUARIA

2010 BRASIL/USA

NY拠点に活動するブラジリアンSSWの新作。プロデュースはARTO LINDSAY、幽玄仲間のBILL FRISELLも参加。
ド直球のタイトル。坂本龍一が米国で「江戸っ子囃子」ってアルバム作るみたいなもんか(ひでぇ例えだなしかし)。
ともかく、わかりやすい音のトンガリや深めの音響エフェクトはぐっと抑え、いつにもまして落ち着いたブラジリアンポップスの歌世界が紡ぎ出されている。
NY発のこの人の音には、俺にとってブラジル物の肝である天然のヌケ感やヴァイタリティはあまり感じられず、空調制御の行き届いたスタジオから生まれるひんやりとアーバンなサウンド、洗練の極みという印象がいつもある。
んで、天然の空気さえ醸されてりゃOKってわけでなく、そのうえにオルタナ/実験/モダンなサウンドが繰り広げられてこそ面白い(天然でも王道的ボサやサンバにゃピンとこない)っていうめんどくさい聴き手=俺にとって、本国産とは異質なクールネスをまとわせながらも非ブラジリアンには出し難いサムシングエルスが濃厚に漂うこの人の音は、俺の琴線をかき鳴らして止まないブラジル本国産オルタナ物どもの、ちょうどネガポジ反転みたいなもんなんじゃないか、と。

なんつーか、肝心な部分でのブラジルっぽくなさが却って異化効果となって、俺の中で、広い意味でのストレンジなブラジル物の範疇に収まったとゆーか。そんなことに気づいた次第です。
6.19.2010
VINTAGE VOLTAGE

ANDY VOTEL

2010 USA

ヴィンテージかつレアなストレンジ音源の蒐集家/アンソロジストとして名高いANDY VOTELの今回の仕事は、レトロな打ち込み系電子ポップ音源の数々を編集/ミックスしたもの
古いったってそもそも50年程度の歴史しかない領域なわけで、時間を遡る発掘ではすぐ底が見えちゃうからか(なにせプラスチックスの「ROBOT」が使われてるくらいだもん)、ネタ探しをワールドワイドに展開した模様(副題に「GLOBAL ROBOTIC ROCK」とある如し)。
おかげで、ラテン世界や旧共産圏、アジア、アラブ等々エキゾ & モンドなテイストが大幅増量され、世界各地のストレンジ音楽が大好物の俺なんかにゃたまらん内容に

そして、レアなだけで音的にイケてないネタは却下とばかりに編者のミュージシャンシップが生きた品揃えは、元ネタに関する蘊蓄以前に、ノンストップミックスCDとしてじゅうぶん耳に快い。
今作のテーマは、好ましくは思いつつも入れ込むほどの情熱はないという小カテゴリーがいくつもあるうちのまさにひとつで、そうゆうカテゴリーには、これ聴いときゃOK的にカタログとしても優れた傑作が一枚がありゃいいのになんてついつい思っちゃう横着な俺ですけど、そんな the ultimate albumとして、これ、けっこういい線いってるんじゃなかろうか、と。

6.13.2010
BEACHCOMBER'S WINDOWSILL

STORNOWAY

2010 UK

牧歌的ポップスを奏でるUKバンドの新作
バンド形態だが、ダイナミズムよりも職人的な作り込み感が勝るサウンド。作り込みが過ぎると箱庭的にちんまりした仕上がりになってしまいがちだが、そこをえぇ塩梅にとどめて、ほどよいクラフト感漂う心地よさ。生楽器とちょいエレクトロニクスの配分も巧い、今日的センスの音。
乱暴に例えると
オルタナアメリカーナの英国版だが、同じ牧歌の情でも、スケールのでかい自然の中でカウボーイが歌うのと英国青年が彼の地の田園風景を歌うのでは、ニュアンスが全然違う。
こっちは、落ち着いた歌声からサウンドの凝り具合、微妙に歪んだセンスまでいかにもの英国産で、描き出されるイメージともナイスマッチング。
昔、英国にSTACKRIDGEってバンドがいたが、今日びのセンスと道具でああゆう世界を音にしたら、こんな感じか? いや、その手の英国物なんて門外漢もいいとこなのに、単なる思いつきで言ってしまいましたすいません。

6.13.2010
VOILA

RHAISSA BITTAR

2010 BRASIL

アクの強さはないが芝居っ気豊かな歌いぶりで、大人可愛い声のお姐ちゃんの作。
小粋で楽しい軽演劇の劇伴のような、品よくにぎやかなサウンド。
人力ベースのアンサンブルには数多くの楽器が登場し、曲調も多彩
。サンバ、タンゴ、ワルツ、南洋風にちょいジプシーと、それこそ劇伴映えのする諸々のテイストが散りばめられている。
で、そのサウンドが、アレンジも演奏も、実に玄人っぽい巧緻さ。なんつーか、こなれてる。そしてそれが臭みにならずに、安定感となって表れているのが、いい。
たぶん音楽監督であるDaniel Galli(Gやプログラミング担当)って人の腕な気がするけど(お姐ちゃん本人もクレジットはあるが、音作りにどのくらい噛んでるかはわからん)、なかなか見事な着地点じゃありませんか
。職人技をふんだんに用いながら、作り込みすぎず奇矯に傾くこともなく、セルフメイド感の強いSSW系サウンドメイクではけっこう出しにくいリッチな音になってる
気持ちいいッスな。

6.7.2010
THE LAST SIESTA

KING CITY

2007 USA

米西海岸の野郎6人組みのちょっと前のアルバム。G×2、B、Dr、Per、Tpという編成で、マヌーシュスイング、タンゴ、ニューオーリンズなどエキゾ風味のロックインストを奏でる。
元々、中心人物であるギタリストのソロプロジェクトのために集めたメンツで出した音が、それっきりにするには惜しい出来だったんで、セッションバンド的に継続することにした模様。ライブ主体の活動で、凝ったアルバム作ってどうこうってのはないみたい。で、本作もライブ録音ベースの実に素っ気ないプロダクト(の割に、ジャケはそれなりに知られたBarry McGeeの絵だったり。あちらの事情はよくわからん)。
んが、
「このバンドで一旗あげちゃる」的気負いのなさが、却っていい方向に出たっちゅうか。これ、俺には意外な拾い物。
リズム隊なんてルーツ系のクセのあるノリは全然ないんだけど、これは本格ミクスチャー物じゃなく、もっとライトなロックインストだと割り切って聴けば、そのストレートさにあんまり違和感もおぼえない。むしろ、ファットで腰の座ったプレイは、半端にパワー不足なルーツ系リズムより気持ちよかったりして。
それと、インストなのも潔くてよかった
。歌い手の濃い目なキャラに隠れてバンドの音はけっこう凡庸ってケースも間々あるから。
あと、なかなかキャッチーな曲揃いなのも麗しい。「アタマの1、2曲だけ、ちょっと面白い」ってなアルバムもまたよくあるからさ。なんか文句ばっかり言ってっけど。

6.7.2010
batida brasileira

Euterpe

2010 BRASIL

ほどよくまろやかにして微量のカスレが実にえぇ具合な声のSSWのお姐ちゃんの作品。曲はオリジナル中心。新進のサウンドプロデュースチームと組んでのプロダクションだそうッス。
南米各地からカリブ(ラテンやらレゲエやら)、アフリカまで、諸々のルーツリズムをベースにしたアーバンテイストのポップス
人力ベースの洗練されたバンドアンサンブルで、ホーン使いがナイスなアクセント。
サウンドフォーマットの重心はあくまでポップスの範疇にあるんだけど、十分に知的で腕も確かという。ポピュラリティとインテリジェンスとヴァイタリティとがすべて93点くらいの高レベルでバランスを保ってるってのが、実になんとも麗しい。どっかに偏りすぎず、また完璧にすぎず(オール95点以上となると、やや息苦しかったりするからねぇ)。

そんな中身にして、ジャケのセンスもちょっとよかったりして、なんつーか下世話ながら、すんげぇ得な買い物した気分。
この絶妙なバランス感、アルゼンチン出身の才女Celia Maraあたりに通じる気がするんだ
よねぇ。ま、あっちの重心はエクスペリメンタル方面で主張もあり気だし、それに比べりゃこっちはずっと甘口なんだけども。
5.31.2010
delibab

VITOR RAMIL

2010 ARGENTINA

母国アルゼンチンとブラジルを行き来して活動するSSW/ギタリストの新作。
今回はほとんど2本のギター(片方は自身のプレイ)と歌(一曲、かのCaetano Verosoとデュエットあり)だけという編成

毎度吟味した要素をうまく採り入れて、シンプルながらも彩りのあるサウンドという印象があるが、ここにきて思い切った骨格フォーム。

、ギター弾き語りってぇと、どしてもいわゆる「フォーキーな音」の重力圏に囚われがちな我々日本人とは、やっぱし生まれも育ちも違うのねと思い知らされるが如き立体的でメリハリの効いたギターサウンド。プレイも多彩で、飽きっぽい(&フォーキー苦手な)俺でも、音色の寂しさに退屈するようなことはなかった。
それに、全体的な曲調がミロンガとかのやや硬質なフレーバーの香る、ちょうどジャケの曇り空のようなメランコリックな方向なのもよかった。陽性なブラジリアンとか静かなフォルクロリック路線でギターオンリーの音だったりすると、なかなか新味を感じられないからね(生意気言うわけじゃなく、俺の雑な耳じゃ、味を見出せぬうちに飽きちゃうかもってことですけど)。
5.31.2010
RAGGED ATLAS

COSA BRAVA

2010 USA

アヴァン系ベテランギタリスト/コンポーザー・FRED FRITHのユニット名義による新作。スイスのレーベルからのリリースだが、メインの録音はシスコであることだし、USA産作品とした。
オリジナルのインスト中心だが歌物も数曲あり。FRED FRITHのG、B、歌の他、Vin、Key(ZEENA PARKINS)、
Drという編成に加え、レコーディングトリートメントを行うThe NORMAN CONQUESTというチーム?がメンバー格でクレジットされてる。
人力系アヴァンのお手本のようなサウンドで、歌物もあるせいか、けっこうポップなつくり。この人らしくコンストラクティブかつミニマルなフレーズもよく出てくるが、マスロックのそれとは主旨が違う。それと、世界各地のエスノテイストがスパイス的に散らされていて、その控えめ具合がいい感じ。
今どきのエクスペリメンタル物のTOO MUCHなミクスチャーやら変態ぶりに慣れた耳からすると、何やらオールドスクールにすら思える「変な音楽」で、実際突出した新しさや派手さはないんだけれど、ベテランならではの味があるといいますか。確かな演奏技術と音楽的教養から編み出される音には、DJ的センスとエレクトロニクス頼みの手合いにはなかなか出せないコクがあるといいますか。

ジャケのデザインがCOOL。
5.23.2010
TOTAL LIFE FOREVER

FOALS

2010 UK

UKの人力ニューウエービィグルーヴバンドの2nd。
去年のブレイクの起爆剤だったであろう躁的なアッパーチューンがなく、見事にミドルテンポ揃い。コーラスワークがフィーチャーされた曲も多く、ニューロマとか
80'sの精緻なデジタルポップを思わせるメロディ回帰的ムードが色濃い。
とはいえ、エレクトロニクスよりギターが活躍し、あくまで人力グルーヴが支配するサウンドは、シンセと打ち込みメインで表面つるんとした感じの往年のデジタル物とは似て非なる質感。
思えばあのへんの整理整頓の行き届いたサウンドの気持ちよさってのは欧州白人音楽ならではの味なわけで、エスノでミニマルなリズムへのアプローチも温存しつつそうゆう方面に音世界を拡張するってのも、なかなか面白いんじゃないか。多国籍メンバー構成、エスノ/ルーツ系も主要なミクスチャー手札的なスタイルが珍しくもない今日にあっては、まだ耕せる領域な気がする。
俺が中坊だったら1stみたいなアゲ路線の曲がないのを期待はずれに思ったに違いないギアチェンジであり、後年のディスクガイド類では「1stに比べると地味な印象だが、実はけっこう良曲揃い」とか評されそうな今作。実際、佳曲揃いで聴きごたえあり申す。
5.18.2010
far home

Sakurai Yoshiki Nishiwaki kazuhiro

2010 JAPAN

Lonesome Stringsの桜井芳樹とSakanaの西脇一弘という、ともに(広義の)ロック畑出身にして、少々奇妙で味のあるギター音楽を追求している2人のデュオ作。
各々のオリジナルと若干のカバー。
ほぼ2人のプレイからなるサウンド。セルフレコーディング。曲毎に使用機材のクレジットも載せられた、まさに2ストレンジギタリストプレゼンツなる世界。

これが桜井のソロ作ならもっとドライで具象的な音になったろうと思われるが、より寒色を帯び、モイスチャー&メランコリー増量、フォーカスがじわりとにじむ。それすなわち西脇由来のテイストということか。
俺、Sakanaは初作をリアルタイムで聴いてるけど、その後はまったく熱心なリスナーじゃない。だからどしても桜井寄りの見地から語ることになるが、これ、たぶん、2人どっちの持ち味も感じられつつそのどっちとも微妙に異なるという、いい塩梅のブレンドになってるんじゃないの? 
ナイス企画。
5.13.2010
MARIANA BALTAR

MARIANA BALTAR

2010 BRASIL

柔らかく素直な声の、サンバの歌い手のお姐ちゃんの作
彼女は専ら歌唱の人で、曲を書いたりアレンジしたりはしないのだが、このアルバムの魅力はなんつっても歌とトラックがまったく同等にっちゅうか一体となって、快いサウンドを構成してること。
クラリネットやギターなど温かい音色の生楽器が活躍するアンサンブル。ことさらアッパーでなくエクスペリメンタルというほど凝りすぎでもないが、器楽の快感に溢れたサウンドメイク、等々。アレンジャーは数人いるが、サウンドの質感は見事に統一されており、それと歌とが、どちらが強過ぎてどちらが霞むことなく、ほどよい刺激もある爽やかな人肌サウンドを奏で続けるんでした。

絶唱と名演奏とが火花を散らす真剣勝負、みたいな緊張感とは無縁。さりとてユルさもなく、すべてのクルーがきびきびと持ち場をこなす機能と調和の世界とでもいいますか。
俺的には地味な音かもと想像してスルーしかけたんだが、聴いてみたら、エクスペリメンタルなテイストのなさを補って余りある気持ちのよさだった、という。

5.13.2010
agri・dustrial

LEGENDARY SHACK SHAKERS

2010 USA

Vo & バンジョー & 鍵盤、G、B 、Dr & Perという野郎4人のオルタナカントリーバンド。詞はVoが書き、曲は全員の共作。
ざっくりとした括りならロックとゆうよりカントリーなんだけど、カウボーイスタイルの似合う渋いアメリカーナじゃなく、田舎のブルーカラーワーカーの歌って感じ。
牧歌的な野山の景色じゃなくザラついたローテクインダストリアルのイメージが、歌詞にもサウンドにも重要なモチーフになってる。ハンマーとか歯車とか工場とか建設現場とかね。

そうゆう世界を表現するために音響的工夫の凝らされたサウンドメイキングで、インダストリアルカントリーっちゅうか、意外やモダンでちょっと珍しい音。
どアタマのギミックなインスト小品でいきなりハート鷲掴みにされましたわ、俺。
しかも、スタジオ任せでそんな音に仕上げてもらったって感じじゃなく、メンバー自身がそうゆうサウンドを目指すことに対してじゅうぶん意識的であるように思われ(因みにプロデュースはベーシストが担当)。セルフメイドな佇まいがまたイカしてますな。

4.27.2010
Pistol City Holiness

DAVE PERKINS

2009 USA

ギターと鍵盤を操るSSWの作。
南部テイストやらカントリーやら、ホット & ワイルドな米国音楽を気っぷよくカマシまくる。
適度に荒っぽく野郎くさい歌は堂に入ったものだし、ギターもよく鳴いてる。その上、ほどよくモダンでリッチな音作り。

決してトンガリすぎず、刺激と安定感が高いレベルでバランスを保ってる。なんとゆうか、メジャーなプロダクションの匂いさえするこなれた仕上がりっぷりで、インディペンデントの偏った危うさ(味わいでもあるけど)みたいなのが全然
ない
が、Produced & Recorded by 本人とゆうクレジットだから驚き。つまりそうゆう個性の人であり手腕なわけだ。
こっち方面の人にこんな音作られちゃったら、オルタナ/エクスペリメンタル系のUSインディー勢ちょっと形無しってか、どしてもひ弱く見えちゃうよなって具合な快作。

4.27.2010
TRIGUN Badlands Rumble O.S.T.

今堀恒雄

2010 JAPAN

過去にもその音楽を手がけてきたアニメの劇場版新作サントラ。
自身のGとプログラミングを核に、曲毎に打楽器やB、管、Keyなどの客演を1〜2人ずつ迎える。全体の印象として、打ち込みっぽくはないが、さりとて生っぽくもない、超高品質の宅録のようなパーソナルなムード漂うギターミュージック。

エモーショナル、ブルージー、バラード、ウエスタン等々ギターインストの手札諸々と、スパニッシュ、タンゴ、フォルクローレ、ラテン等々トラッド風味とを配してバラエティを出した曲調。
Unbeltipoのサウンドのコンセプチュアルで類例のない新奇さ
に比べればずっとゆるくノーマル(少なくともうわべは)だけれど、各種トラッドなどネタの咀嚼感がそこらのサントラ仕事にありがちなお手軽真似っこ風とは別次元。
咀嚼感ってのは、ネタの構造を解析して得たメソッドに基づいて一から組み上げたような構築感とゆうか。その理路整然として明瞭な感じは、テクニカルな演奏と相まって、本場トラッドのファジィさとは微妙に違ったノリを生んでる。
そんなロジカルな匂いってのも、今堀サウンドに独特の質感じゃなかろうか、と。

ロジカルな知性の営みを、今堀サウンドの如く、頭でっかちになることなしにカッチョよく見せられると、論理性とか理系脳の著しく欠けた俺なんかは参っちゃうわけですよ。細かい理屈は全然わかんないんで、ただただ「すげえなぁ」と陶酔してるわけですけどね。
4.21.2010
CANDOMBAIRES

CARPE

2009 ARGENTINA

♀Vo、G、B、Perの4人からなる新世代フォルクローレグループの作。オリジナル中心。
各パートとも、フュージョン〜プログレ的だったりラテンだったりとフォルクローレから外れた言い回しによって口数多めだったりするところが間々あるのだが、一方でフォルクローレならではの情趣を醸す腕もしっかりと持っており、ただの安っぽい変わり種とはなっていない

つーか、フォルクローレって何? って考えたらば、抽象的には、他のすべてを圧して音世界に満ちるからりとした高い空の如き空気感。それこそがフォルクローレのエッセンスなんじゃないか、と。そのエア・コンディションが損なわれぬ限り、音的に多少ハメを外そうとフォルクローレとして聞こえるんじゃないか、と。
フォルクローレ的空気ってもんが果たして意図的に調節可能かどうかはわからんけど、このグループの場合、なかなか上手いバランス感覚の上にちょっとストレンジなフォルクローレを奏でていると思いますです。

4.18.2010
MUNDIALMENTE ANONIMO

MAQUINADO

2010 BRASIL

ブラジル・オルタナロックのベテランバンドNACAO ZUMBIのギタリストのソロ2作目
なんか今風エクスペリメンタル系のジャケで、初作のカラフルでポップなイラストジャケからするとけっこう落ち着いちゃったかと心配したけど、基本路線は変わらず。
ブラジルポピュラー音楽界で新奇なサウンドを追求するミュージシャンのうち、
90年代から活躍してる彼らの音はロックの活きのよさを基調にその上で実験を繰り広げるというもので、今世紀からの一大潮流たるルーツリズム×エクスペリメンタルのケミストリー(& それ系の人たちの匠的落ち着きぶり)とは肌合いを微妙に違えると思うわけですよ。
贅沢なもんで、俺、次第に後者(00年代以降型)の音には反応が鈍くなってきてる。そんな中、相対的にオールドなスタイルには思えるものの、90年代からのオルタナロック系たる彼の前作なんかが逆に新鮮だったっちゅうわけです。
下手に落ち着いたってことはなかったけど、年季とともに漂う格は、こりゃ致し方ないやね。もっとやんちゃにはじけてくれたらなおうれしいんだけども。

4.11.2010
MAFARO

ANDRE ABUJAMRA

2010 BRASIL

マルチインストを操るSSWの作。
生楽器にエレクトロニクス、サンプリングまで多彩な編成だが、基本は人力のサウンド。
アフリカ、バルカンブラス、ターキッシュ、ラテン、レゲエなどが次々と登場するにぎやかなミクスチャーサウンド。
なんちゃってエスニックの数々はもちろん洒落なんだろうけど、ブラジルの方々の卓越したリズム感 & 変化好きによる異化効果がなかなかすごい。訛らないリズム、スクエアなテンポのひたすら流暢なプレイ、執拗な反復どころかどんどん展開してっちゃう構成なんかは、本場の音のけっこう大事なとこを捨ててる半面、「もっとこうだったら聴きやすいのに」っていう本音を直撃する気持ちよさに溢れてるのもまた事実。
それに、
なんつっても人力ベースってことだわね。今どきワールドワイドなトラッドのミクスチャーってのは珍しくもないけど、非人力演奏系アーティストのサンプリングサウンドや日本のアングラ系にありがちな足腰の弱さじゃ、なかなかこのノリは出ないもんね。
4.11.2010
ARTEIRO

RUBENS LISBOA

2010 BRASIL

ジャケ買いというほどではないが、日本人の俺から見るとエキゾチックな色彩センスに大いにひかれた。こういうので、ビジュアルの魅力に相応した内容だとうれしいもんだが、はたして充実した中身でうれしい。
ボサの巨匠にいるタイプの、天然の細かいビブラートがかかった如き声のSSWの作。エクスペリメンタルな趣向などはなく、ヌケのよいアナログなサウンド。
生G、B、Perのトリオを核にした編成だが、曲毎に♀コーラスや管などが加わり、サウンドにほどよい変化と華やぎをもたらしている。麗しくも懐っこいメロ豊富なうえ、ブルージィなものやらスパニッシュテイストやら、俗というほどでないポピュラーな味付けがあって飽きない。
この手のナチュラル系サウンドはともすると洗いざらしが過ぎてしまいがちだが、俺みたいに飽きっぽい輩も退屈させることのない色艶がしっかりとキープされていてたいへんよござんした。

4.11.2010
Chiquinha em Revista

VA

2010 BRASIL

100年ほど前の作曲家 Chiquinha Gonzaga のトリビュート企画。
彼の人の曲を現代ブラジルのミュージシャンが演奏。歌物とインスト。
Chiquinha Gonzagaのモダンで品のある作風がよく活きているナイスな構成。
すっきりと整理されたアレンジで、エレクトロニクスなしの生楽器アンサンブルによる演奏。弦楽器も活躍するけれど、それよりクラリネットなどの木管がフィーチャーされているのがサウンドのキモ。木管のマイルドな音色が全体のトーンを印象づけてる。

曲毎に違う男女複数の歌い手も概ね穏やかな歌唱だし、各楽器のプレイも流麗かつ饒舌に傾く手前で落ち着いたものとなっていて、その抑制の塩梅が楽曲のもつエレガンスを見事に引き立たせていると申しましょうか。
素敵なジャケのデザインを裏切らない、気持ちよいクラシカルモダンサウンドだす。
4.11.2010
TUDO POR UM OCASO

ROGERIO BOTTER MAIO

2009 BRASIL

コントラバス奏者にして作編曲家のリーダー作。全オリジナル。
コントラバスに、Pf、アコーディオン、violoncello、クラリネットという生楽器アンサンブルが基本編成。1曲だけPer入り。インスト中心で、2曲だけクラリネット奏者の♀が歌う。
一聴、ブラジルっぽくない。南欧の薫る映像喚起的で落ち着いたサウンド。
小洒落た伊あるいは仏映画のサントラにありそうなけっこうドラマチックな曲調ではあるんだが、よく聴けば、その手にしちゃ地味に躍動的なフレーズ(ことに本人のコントラバスなど)やほどよく開放的で澄ましすぎない音像によって、ベタなものになるのを免れている。
ブラジル音楽のエッセンスのうち、ルーツリズムでもサウダージでもなく、欧州から持ち込まれて彼の地で醸成された「ヨーロッパ的」なものをフィーチャーした音とゆうか。
ジャズ寄りでもクラシック寄りでもなく、やはりサントラのスコアっぽいってのがもっとも近いんだけど、本家コンチネンタルのそれ系にはないまろやかさと温性が新鮮であり快い
。意外とニッチな作風?
4.4.2010


2009年9月〜2010年3月

2009年3月〜2009年8月

2008年9月〜2009年2月

2008年3月〜2008年8月

2007年9月〜2008年2月

uwatzlla@visitor2.jp


※英語以外の外国語を正しく表示させる技術がないため
(主にアクサンなどアルファベットに付く記号のことですが)
ただのアルファベットのままでお茶を濁してます。
ことにラテン系のアーティスト名や作品名は不正確になること、
承知いただきたし。

作品の国名表示は厳密なものではありません。
CDの生産地クレジットを基本にしてはいますが
アーティストの出身や活動拠点と関係のない国からのリリースの場合
どうにも違和感を禁じ得ず、そのアーティストのプロフィールとして
よりふさわしいと思われる国名を表記することもあります。
参考程度にご理解いただきたし。