Uwatzlla!

MAP OR DIRECTION

JOHN SMITH

2009 UK

マルチインストゥルメンタリストでSSW♂の作
アメリカーナとして見た場合、ジャケやネーミングセンスにそこはかとない違和感(オルタナ臭?インテリ臭?)をおぼえ、まったく予備知識のない状態でジャケ買いをした。

こもり気味でちょいしゃがれた歌声。サウンドは当人のVo & Gに、曲によってバンジョー、ウッドベースやチェロ、フィドルなどの生楽器が少々加わる程度のシンプルなもので、アメリカーナとフォークの間を行き来するような曲調。土の匂いの薄いアメリカーナ。
G弾き語りの比重が大きいのだが、全体としてギタープレイは器楽的な変化に富んでおり、音響的にもモダンなセンスの工夫がされている。おとなしめの弾き語りスタイルで始まったもんで、アシッドフォーク系の苦手な俺は一瞬ハズレかと心配になったが、結果的には飽きずに聴けた。
で、この人、イギリス人なのかな。少なくともロンドンの自宅で録音が行われ、ミックスとマスタリングもロンドン。だけど、ミシシッピ、テキサス、ルイジアナといった米南西部諸州の、しかも竹林や線路脇や教会といった屋内外でも録音されてて、きっとこのスタジオ外でのプロダクションこそが本作のキモなんだろう。
アメリカーナマニアックの変なイギリス人? 
何にせよ、土着のアメリカーナに対する異化効果が発揮されててちょっと面白い。
3.28.2010
GORILLA MANOR

LOCAL NATIVES

2010 USA

L.A.の5人組みバンドの初作
いかにもUSインディ/アングラなビジュアルセンスとのギャップも激しい清涼感溢れるコーラスワークを特徴とする、'80s New Wavyなサウンド。

美麗なコーラスが売りっつってもポップスマニア受けするような方向だと俺の射程から外れちゃうけども、それが'80s New Wave風にミニマルなリズムの人力サウンドに載ってるんで、俺の雑な耳でも退屈せず、なかなかに気持ちよく聴けましたですよ。
コーラスは大部分ユニゾンで、合いの手とか掛け合いの妙はなく、曲調にアフリカン或いはオリエンタルな香りはあるが、ごく薄味。例えるなら、UKのバンドFOALSのエスノでミニマルではじけたとこを中くらいに落ち着かせ、さらにコーラスワークを整えて前面に出したようなサウンド。
Talking Headsのカバーがあったり曲名のネーミングセンスなんか見ると、往年のHeadsみたいに知的かつヴァイタルに行きたいのかなと想像されるところがあり、Headsの影響ってことでもFOALSと共通してる。
にしても、FOALSみたいにはじけた音の奴らがUK産で、それに比べてぐっと爽やかな音のこいつらがUS産って、ふつう逆だろってもんだが、だからこそそれぞれに異彩を放ってるわけか。
3.28.2010
AMAR LA TRAMA

JORGE DREXLER

2010 SPAIN

スペインにて制作された、ウルグアイ出身のSSWの新作
産地表記に迷ったが、アコギの調べからほんのり漂うフラメンコテイストなどから音的に納得できる気がしたんで、スペインで。

ジャケのリアルタッチのドローイングを見ると、70年代あたりの都会派SSW物の発掘 & リイシューみたいだが、実際、音的にもそんなムードがけっこう色濃い。
エクスペリメンタルな仕掛けはごくごく控えめな、ナチュラルな質感の音像。全編でブラス、前半では饒舌なギター、後半になるとマリンバが活躍する。
近作でのギター主体の繊細な歌物路線からするとぐっと華やいだアンサンブルサウンドだが、熱くならない温度設定はこの人ならでは。絶妙にウォームで洗練されたアーバンポップスといった趣。量感や躍動感はあれど決してラウドには響かないブラスなどによく表れているが、この実に無造作な「ほどのよさ」がたまらん。
まさにジャケの画の如く、暑くも寒くもない季節、センスも生活感もある部屋での寝起きのひととき、薄明るい中ですぅっと夢から覚めてゆくような音世界

南米エクスペリメンタル系SSWとしてはすっかりベテランな人だけども、そっち方面
は人材豊富であることだし、ぜひこの路線を追求してみてほしいもんです。
3.20.2010
NOVO PRATICO CORACAO

NO STOPA

2008 BRASIL

NO STOPAっちゅう名義のSSWのお姐ちゃんの作。
ルーツリズムを打ち出すでなく、ことさらなブラジルっぽさのない歌物。

アコースティックギターがメインで、他の楽器やプログラミングなどは概ね彩り程度のシンプルなサウンドは、今どきはフォーキー&エクスペリメンタル
とか形容されそう。
かすれ気味の声は好みに違いないけど、フォーキーはノーサンキューな俺が飽きずに聴けるのは何故かと考えてみるに…。
表現において、「詞を聴け」であれ「ギター一本で歌うこの姿を見ろ」であれアーティスト自身をアピールすることと、音を楽しませようとすること、その塩梅といいますか。
フォーキーといわれるものには前者ばかりが目について後者が弱いものが多いから俺苦手なんで、アコギ主体のサウンド=退屈なわけじゃないんだ、と。
そゆ意味でこの作品は、派手さこそないけどいろいろと工夫がなされ、サウンドが立ってると思うんでした。音響的に「オッ」と思う瞬間などもあったりするんでした。
3.14.2010
PRIMAS PARADE

VA

2009 HUNGARY

ハンガリーのトッププレイヤー10人ほどの連名によるジプシー音楽プロジェクト。
昔々フュージョン界隈で、大物が集まった新ユニットを「スーパーグループ」なんて呼んだけど、そんな感じ。ヴィジュアルから受ける大味な印象もそんな感じ。

音は品よく整理が行き届き、室内楽のようにリリカルに響く。
野太い艶のないジプシー物ってのもどうかと思うが、そこは腕達者揃いなだけあって、ただ線が細いだけにはなってない。よく締まって流麗なプレイの連続に、これはこれでありだなと思えてくる。ジプシー的野趣を求めず、往年のフュージョンみたいにフィジカルな技巧を楽しめばよいのだ。
Vin、ツィンバロン、♀歌唱など生楽器系が活躍する中にエレキGが高速でジプシー系フレーズを弾き倒す曲が異彩を放っていて、まぁ、それ以上のもんではないんだが、いいアクセントになっている。
3.14.2010
GENUINE NEGRO JIG

CAROLINA CHOCOLATE DROPS

2010 USA

かの新鋭ブラックストリングバンドの新作はかのJOE HENRYプロデュース。アメリカーナ裏街道の、これぞまさしく旬な出会い。
バーバルな香りさえする肉体性が魅力でやや野放図の気味もあったCAROLINA〜のサウンドと、エディットの人JOE HENRYのプロデュースワークは如何に反応したかってェと。

サウンドの道具立てはCAROLINA〜の手札そのままで何にも足してないのに、これが実に「JOE HENRY仕事」を感じさせる仕上がり。
アレンジは洗練されてそこはかとないオルタナの匂いをまとい、立体的でモダンな音像に。見事にJOE HENRYの肌触りっスな。
サウンドの隅々まで目配りの行き届いた制御感は、見ようではきれいにまとまりすぎだけど、そこからはみ出すようなやんちゃさがあればもっとよかったってのは現時点では高望みってもんか。

ともあれ、かっこいいオルタナアメリカーナ作品であることは間違いない。CAROLINA〜には次作で妙に朴訥回帰したりせず、まだまだ変な方へと行ってほしいもんです。

3.4.2010
CRAZY KEN BAND BEST 鶴 & 亀

CRAZY KEN BAND

2010 JAPAN

小島麻由美作品で前フリしたとおり、彼女とCKBに共通する音楽的タフさの鍵はその拡張性では、って話なんだけども。
CKBも小島麻由美もスタイルには濃ゆい色と匂いがあって、曲調はバラエティ豊かでも、通底する「らしさ」はわかりやすい。押し出しの強いスタイルを獲得するのに右往左往し続ける人が多いなかにあっては確立されたブランドではある。
けれど、ポップミュージックってのは安定感と刺激のバランスが肝心で、聴き手としちゃ、音楽性の高さはキープされてても、なまじスタイルの出来上がった世界だと、そのスタイル自体に飽きるってことあるじゃないッスか。
この点、両者ともそこそこキャリア長いのに、スタイルに変わりないうえ、不思議と鮮度も落ちない。
そのフレッシュさこそは、すでに「上がり」状態に見えながら、立ち位置をブレさせることなく着実に拡張し続ける表現世界によってもたらされてるんじゃないか、と。新しい曲調に挑戦なんて目先の変化じゃなく、芸域を広げるってレベルの話ね。
剣さんのあのキャラ立ちのままに泣かせ笑わせスカッときめ、艶光りする夜の世界から街の美化まで歌うってのは、実はすごい芸当じゃありゃせんか。小島麻由美もそっち系ガールズのインナーワールドだけじゃなく、男女の機微から「みんなのうた」まで巧みにこなすわな。
両者ほどのブランドならそれを「変わらぬ味」とする伝統芸路線でもそれなりに長生きできるだろうに、そうゆう停滞をよしとしない姿勢が素敵。「新機軸を打ち出すのにブレイン結集して知恵を絞りました」的苦労が見え隠れなんてことなく、気づいてみれば「意外にも手広くやってる」的余裕のセルフメイド感がさらに素敵。
拡張性にこそ実は才能って出るんだなぁ、って話でした。

2.24.2010
TUCSON-HABANA

Amparo Sanchez

2010 SPAIN

在スペインのラテンミクスチャーユニット「アンパラノイア」として活動してきたアンパロ・サンチェスがソロ名義となって放つ初作。
彼女のオリジナルメインだが、サウンドプロダクションにはかのキャレキシコが全面参加。
タイトルのごとくキャレキシコの拠点たるトゥーソンからハバナまで、西部〜メキシコ〜キューバの音をベースにしたミクスチャーサウンドで、実際それらの土地を巡ってレコーディングされたもの。
アンパラノイア時代は、つまらなかぁないが西南欧ミクスチャー系としてまったく想定内の音で、いまひとつ物足りなく思っていたが、これはなかなかいい味。
彼女の歌はいい具合にリラックスして深みが増し、キャレキシコの音からもだいぶ砂埃が払われて、ナイスなコラボとなった。
メランコリー漂う落ち着いた曲群は、暑すぎず乾きすぎず蒸れすぎず、土臭くもなく澄ましすぎもせず、どことも知れぬラテンな土地のエキゾチカサウンド。ジューイッシュラテンのマエストロRoberto Rodriguezを思わせるストレンジな湯加減が、俺的にかなりツボ。
彼女のハスキー気味の声はもとより好みなもんで、ゆったりテンポで歌を聴かせる曲中心なとこもまた麗しい。
2.20.2010
DEAR COMPANION

BEN SOLLEE & DANIEL MARTIN MOORE

2010 USA

2人のSSWのデュオ名義だが、プロデューサーYIM YAMESも歌に演奏にアレンジにと活躍する、実質トリオに近い作品。
3人の歌唱と弦楽器類の他、数曲で打楽器、G、Vin、管などの控えめな客演あり。曲毎に編成はざまざまで、バンドサウンドは少なく、全体にすき間を生かしたシンプルな音。
それぞれの手になる曲はみな、ビジュアルワークに象徴されるようなモノトーンのアメリカーナ系。
BEN SOLLEEのチェロがその役割を果たすのでベースレスのサウンドなのだが、その中低音によっていい具合にアメリカーナが異化されてる。
アーシーなムードの希薄なアメリカーナとでもゆうか。
ベースによるボトムがないことで温かみや重量感が減量されているには違いないのだが、だからといってBEN SOLLEEの多彩なスタイルのチェロ(弦をはじく得意技から弓弾きまで)は、サウンドをクラシカルに傾けすぎることもない。
牧歌な、或いはマウンテンな音の風景にそこはかとない古色と気品をにじませつつも、憂いとストレンジ感を増量させている。
朴訥なルーツ愛よりむしろオルタナの心意気。Sub Popからってのも頷ける。
2.15.2010
Tamboorbeat

VIVIANA POZZEBON

2009 ARGENTINA

グループでのキャリアを積んだ♀Vo & Perのソロ初作。
カバー、トラッドに自作もとり混ぜた内容。
クンビア、ブラジル、キューバにレゲエまで、広く中南米のルーツリズムをベースに、Vo & Cho、多彩なPer、エレクトロニクス、ブラスなどで組み立てたエクスペリメンタルな世界。
なんつってもベースレスという攻めの姿勢がかっこいい。思い切ってボトムを抜くことでハリが増したリズムオリエンテッドサウンドに。「下半身もやもや」度はライトな代わり、「みぞおち」と「アタマ」によく効きます。
歌声はかのMARIANA BARAJにも似たノンシュガーボイス。
MARIANA BARAJもVo & Perで、同じくリズムにこだわった実験精神があり、そうゆう意味じゃ向いてる方角はいっしょなのかもしれないが、あっちが御嬢ならこっちはダウンタウンの姐ちゃんっぽいとゆーか、佇まいに異なる味わいがある。
でも、インテリジェントにしてフィジカル、情感や勢いだけに乗っかることなく隅々にまで意思を感じる音ってところは2人共通。
それぞれにえぇッスな。
2.9.2010
THE FLEXIBLE ENTERTAINER

PIT ER PAT

2010 USA

THRILLJOCKEYよりオルタナ男女デュオユニットの新作。
80'sのヨーロピアンテクノ〜NEW WAVEを今日的センスによって組み立て直したようなサウンド。
ほどよいストレンジ感がキープされ、インディな肌合いが強いながら、音響的にもなかなか心地よい。
が、後半、それにしてもちょっと一本調子かなと思ったあたりで、音像が一歩前に出てきて、エキゾ感と音密度増量のサウンドにシフトチェンジ。やるな、オイ。
それなりのキャリアの人たちとはいえ、今日びのポストロック方面では奇特なことに、ミクスチャー & 圧縮に向かわず引き算の発想に基づいた骨格サウンドが麗しい。

ミニマムな材料から驚きの新しさを捻り出すアイデアの妙に胸躍らせた80'sNEW WAVEの頃を、ちょいと思い出させられたりして。
2.4.2010
ブルーロンド

小島麻由美

2010 JAPAN

00年代半ば以来の新作。メジャーを離れてのリリース。
ひと頃の彼女の作品が到達していた仕上がりっぷりのメジャー的隙のなさには、思わず襟元を緩めたくなるよなところをわずかながら感じていた俺なので、比較的ラフな気配のある今作のサウンドはなかなか新鮮。
商業音楽界を見渡せば、昨今の「10カ月に一作アルバム出さなきゃ忘れられるぞ」的ポップス市場の激流に揉まれて、いたずらに摩耗していく才能がずいぶんとあるような。
リスナーからすれば、もちろん良作をコンスタントにリリースしてくれるに越したことはないけど、過去作に長く色褪せぬ鮮度があれば2〜3年に一作ペースでも存在感は保たれるな、と。(5年以上はさすがにちと苦しいか。)

小島麻由美の音楽にはある程度スローペースでも平気なタフさがあると思うわけです。
作品を産むにあたって、その度ごとにプレハブな世界観をでっちあげずとも、すでにしっかと存在する豊穣な小島麻由美世界の中のいち場面を描写すればよいという、かのCKB横山剣さんがそうであるような、稀なる佇まい。その足元の盤石さによってきたるタフさ。
んな世界を獲得できる鍵は、ひとつには拡張性の高さじゃなかろうかと思うわけですが、そこのところは今月末リリースのCKBベスト盤にて語りたいと思うわけです。
2.4.2010
terraplen

terraplen

2009 ARGENTINA

かのオルタナマエストロGaby Kerpelを含むサウンドクリエイターかつマルチ奏者3人組みの作。ほぼオリジナル。
男女数名の客演歌唱を迎えての歌物が多いが、インストもあり。
歌唱は各々ほどよい味を出しており、こなれたメロディもいい感じ。
で、その歌がのるサウンドはポップかつエクスペリメンタル、絶妙な塩梅のストレンジ音楽。エレクトロニクス&エフェクツとフォルクローレ系など生楽器とのブレンドももはや達人の域。

曲調はフォルクロリックな要素や都市部の伝統音楽をベースにしており、やや硬質でナイスな締まり具合の気持ちよさ。
口当たりはよくてもしっかりと濃ゆい。エクスペリメンタルのさじ加減とゆうか、ただの甘口にはしないという姿勢にブレがない。
やはり昨年、本作のThanksクレジットにも名の見えるAxel krygierが、クリエイター3人組みユニットで複数の歌い手を招きタンゴ物を出したけれど、あちらはタンゴとしてもエクスペリメンタルとしても中途半端で(しかも冗長)残念だった。
形態がこれとよく似てるのでついつい比べてしまうほどに、terraplenの端正で地に足着いた佇まいが余計に頼もしく見える。
2.1.2010
CAMALEON DE PAPEL

Maria Elia - Diego Penelas

2009 ARGENTINA

Vo♀とG & Pf♂によるユニット。2人にコントラバスとDr & Perが加わるのが基本形。少々の曲でチェロやフレットレスベースが客演するほか、Liliana Herreroといった大物のゲスト歌唱もあり。
オリジナルとカバー半々。カバーはスピネッタやピーターガブリエル、元ビートルズの人など。
ジャケのセンスからするとエッジの立ったエクスペリメンタル系みたいだが、ほとんど人力によるオーガニックサウンド。
全体にフォルクローレ的な清々しさが豊富だが、タンゴテイストの曲もあったり。乾いてはいるがほどよい温かみと華やぎに満ちた、実に気持ちのよいサウンド。
立ち位置としてどちらかといえばポップスのフィールドにいる人たちなのかもしれないが、サウンドの洗練され具合がネオフォルクローレといっても通るほどの質感を漂わせているという。
こうゆうのがさり気なく出てくるところがアルゼンチンの豊穣さといいますか、油断ならんね。
1.24.2010
ささめきおと(OST)

蓮実重臣

2009 JAPAN

a.k.a. Pacific231のコンポーザーのアニメサントラ。
ノスタルジックでノーブルな軽音楽という蓮実重臣の作風ほぼそのままの音。穏やかな学園物との親和性はもとより非常に高いのだった。(アニメ見てないから実際どんな話かは知らんけど、ケータイ小説みたいな世界じゃあるまい?)
映画のサントラよりも心なしか音がのびやかな感じ。やっぱり実写の画に合わせる場合より自由度が高いんだろうな。
邦楽の楽器を勘違い西洋人が使ったみたいなちょいおフザケの曲がアクセント的にあったりしてなかなか新鮮だったが(仙波清彦みたいに邦楽の玄人が作るとこうはならないんじゃないか微妙だけど)、考えたらこれってPacific231のエキゾチカテイストに通じるものがあるな。
にしても、アニメ音楽ってもっとも眼の届きにくいトコでね。まめなチェックが難しいっちゅうか。CD売場はそれなりに活況のようだけど、ジャケ見ても区別がつきません俺には。
「オタクか、ヤンキーか」でいえば間違いなくオタク系人間なんだけども、こうゆうときアキバに象徴される今どきのオタクとのズレを実感するね。アニメやゲームにまったく興味ないんだもの、俺。

1.24.2010
未収録ライブ音源

TIPOGRAPHICA

2010 JAPAN

異能のギタリスト/コンポーザー今堀恒雄が90年代に率いていた超絶技巧アヴァンインストバンドのポニーキャニオン時代の作品が去年リイシューされ、その購入特典ディスク。3曲入り。出来上がりが大幅に遅れていたものがすっかり忘れた頃に届いて、なんか得した気分(それ錯覚)。
複雑なアンサンブルと強靱なリズムでもって、酩酊状態で聴く50年前のアメリカ製アニメ音楽みたいな曲を演るってのがTIPOだといえばいえる、か。いまだになかなか類例が見当たらない稀有な音。
00年代を通じて、プログレ〜マスロック的高速複雑展開をミクスチャーサウンドの手札にもつスタイルはそこそこ定着した観があるけれど、その手のものを聴くとき、無意識にTIPOを物差しにしてしまっていることが多い。
で、物足りないことが多い。
演奏力はそこそこあったとしても、サウンドの線が細い、複雑さに奥行きというか立体感がない、コラージュ手法が浅薄でことにリズムの咀嚼が足りない、などなど。
逆にそれだけTIPOの到達点が高かったんだなと、つくづく思う次第。

にしても、90年代ってもう、まるまる10年以上前になったんだな。感慨深し。

1.24.2010
PAISAJES DE SUDAMERICA

LOS GUITARRISTAS

2009 USA

シカゴ発。腕利きギタリスト4人による南米音楽アンソロジー。
南米10カ国の国名を冠した10曲。曲はすべてその地のルーツリズムを象徴するカバーやオリジナルなど複数の材料をつないで再構成した内容。

4ギターの他はごくごく控えめに打楽器が入るのみ。

こうゆうカタログ的企画物、けっこう好きなのよね。何しろ飽きっぽいもんで、ともかく「いろいろある」ほうが楽しい。(逆に、「バラエティ豊か」なぞと謳っておきながらショボい品揃えだと許さんけど。)
それと、南米音楽みたいに複雑多様な世界を把握したいという欲求はあれど地道に食らいついてく根性に乏しいもんだから、こうゆうダイジェスト物を手に入れると、それだけでその世界を我が物にしたような気になれるってゆうか。(ま、これで南米音楽はつかめたなんて本気で思うわきゃない。気休めよ。)
それに斯界に造詣の深い向きからすりゃ、こうゆう切り口自体に異論はあるんだろうけど、絶対的にすっきりしたまとめ方ってのもないだろうし。ルーツリズムの細かい区別もおぼつかない雑なリスナーたる俺なんかにゃ、このくらいの大味なエディットはわかりやすくていいやね。

1.14.2010
Business/CRISIA

Business

1980,1982 JAPAN

四半世紀以上を経て、驚きの初CD化(80s回顧物のオムニバスCDに「うわきわきわき」1曲だけ収録されたことはあったけど)。
Vo美空どれみのお姐ちゃん声が大好きなもんで、それだけでもう満足なんだけど、80sニューウエーブの和物にしちゃ出色の音のよさにも驚いたね。音質方面にはさほど頓着しない俺にして瞠目の奥行きと太さ。堅い演奏力に加えて、レゲエ等をベースにした立体感のある曲が多いからだろうかね。
日本の80sニューウエーブって、70sまでのロックの物差しで測れないものは何でもかんでもひとくくりにしちゃったとこがあって、音的にはごちゃ混ぜなんだけど(テクノポップはイメージとして象徴的だけど、直球テクノポップな音は意外に多くない)、Businessも当人たちがニューウエーブイメージにことさら乗っかったわけでもないのに、不思議な新しさがあったおかげで「そっち」に振り分けられちゃったって感じ。
んで彼らの新しさってのは、当時のポップスからすれば言葉のつなぎ方や言い回しの自由度が高く、
未だリアルな視点からはネタにされにくかったOLや主婦のあけすけな生態なんぞを盛り込んだ美空どれみの歌詞とか。洋楽のストレートな影響より先に匂うドメスティックにして乾いたムードとか。(こう挙げてみると、どこか近田春夫&ビブラトーンズの佇まいに通じるものがあるな。
70sまでの和物ロックといっしょにするには明らかに違和感があるんだけれど、その味は、テクノな格好とかシンセやシーケンサーの音ほどにわかりやすかぁない。ま、そのへんの奥ゆかしさゆえ、CD化がこんなに後回しになっちゃったわけっスか。

1.8.2010
DIENTE LIBRE

LOS COCINEROS

2009 ARGENTINA

名前の通りコックのコスプレで登場するという、ニューウエーブマナーなのかアナクロなのかよくわからんスタイルを守り続けるラテンミクスチャーポップバンドの新作
格好と同様、サウンドの質感もずっと変わらない。
心にしみる名調子とか、ハッとするよな新しさとか全然ないんだけども、キャッチーなラテン混淆ポップの見本市の如くに、アベレージ以上の曲がテンコ盛り。危なげない演奏にのせて陽気に連発されて退屈しない。

できた曲から並べただけ的な無造作感もまた魅力。アーティスティックな切れとかマニアックさは希薄ながら、間違いなくタフな音楽。しかもそのタフさは芸能的商業的なもんじゃなくて、インディーなキャリアの積み重ねに由来するように感じられるトコが麗しい。
この人たち、な〜んか好きなのよ俺。B級の銘品ってのかね。

12.26.2009
VENTANAS

ACA SECA TRIO

2009 ARGENTINA

G、Pf、Perを奏で、かつ歌い、ネオフォルクローレをベースに、モダンでどうしようもなく清澄な調べを紡ぎ出すトリオの新作
ちょっと前のライブを収録したDVDも付いて、SONY MUSICよりのリリース。ビジュアル面などにいわゆるメジャー展開なプロダクトセンスが散見されて、そのへんちょっとアレですが、そんなことでこの人たちのよさは揺らぎません。

自家薬籠中の魔法のフィルターを通したサウンドは、色艶やら躍動感やらを保ちつつ、どこまでも落ち着いて澄みわたった響きに。ま、それはいつも通りのことで。
もともとじゅうぶんに洗練された音だったものを、さらにメジャー的にブラッシュアップしようと試みた結果なのかどうか知らんけど、コーラスワークが聖歌の如くホリーに聴こえるとこがあって、ややストレンジ。

このところメンバーの別プロジェクトのリリースなんかもあったけど、俺はこの本家トリオのサウンドが一等好きだな。

12.24.2009
seed gathering for a winter garden

TAARKA

2009 USA

マンドリン & G、Vin、チェロ、ウッドベースの4人組みでベース以外Voもとるという、新感覚ストリングバンド。オリジナルメイン。
ビジュアルから想起されるようなオールドタイムなアメリカーナテイストより、さらにワイドレンジなサウンド。インスト曲はチェンバーな展開を見せ、歌物にはフォークやほんのりと欧州の匂いも漂う。
インストにも歌物にも同等の力が注がれている風なトコが新鮮。どっちが本領ってわけじゃなく、両方とも純粋にやりたいことなんだろうと思わせる。
一方で、数曲でのPerの客演以外はほぼメンバーのみの編成だったり、使用楽器についてのクレジットがあったりするところにこだわりが感じられる。
プロフィールでジプシーっていってるけど、それはサウンドがいわゆるジプシー系だっていうんじゃなく、「遊芸の徒」的なスタンスの表明って意味かな。
昨今、ミクスチャーな発想からアメリカーナ系を手札にする新世代アーティストは多かれど、この人たちのミュージシャンシップの高さはけっこうレアかもしんない。
12.24.2009
MELODRAMAS

ALTERTANGO

2009 ARGENTINA

VoとPfの♀2人を核として、Dr、コントラバス、バンドネオンが加わった5人組み。曲により、チェロやVin、DJなどの客演あり。
オリジナルとタンゴ古典のカバー。
Voはポップスでも映えるだろうクセのない声質にして甘すぎず。Drはビートで曲を支配するというよりも「打楽器」的機能大だが、これによって打楽器レスの編成よりも音像に張りと奥行きが出ている。全体、派手な今どき的装飾はないが、モダンな感覚による締まったサウンド。
非タンゴのポピュラー音楽にとても近い印象ではあれど、立ち位置はあくまでタンゴ世界(の辺境)。その結果、独特の強い香りのあるタンゴ本流よりも格段に取っつきやすく、さりとてタンゴテイストの何とかみたいな薄味感も凡庸なエレクトロタンゴ風の食い合わせの悪さもないという。

傍流だけど、この音は最初からこの音として存在しますって感じ。そんなブレのない立ち姿と、俺みたいな王道苦手派にはちょうどいいタンゴ濃度がいい感じ。
12.21.2009
TEM JUIZO MAS NAO USA

LULA QUEIROGA

2009 BRASIL

レニーニのアバター(やんちゃversion)の如きSSWの作品。つっても、ただのレニーニもどきってわけじゃない。
四半世紀以上も前に若かりしレニーニと共作アルバムをリリースした、立派なキャリアの主。長年親交は続き、毎度新作にはレニーニが客演する。
90年代以降はオルタナ道を邁進。その声も歌い方もレニーニに激似なもんで、「もしも90年代にレニーニが今日の巨匠的位置へ至るのとは別の道を行っていたら」という可能性を思わずにはおれない。そゆ意味での「アバター」。

今回も実に違和感なく、気づいたら「これ、歌ってるのレニーニじゃん!?」みたいな。「おぉっとここで、ご本人登場!」みたいな。いやだからモノマネじゃないっての。

今のレニーニが盤石の横綱相撲っぷりなら、こっちは立ち会いの変化と技の豊富さに磨きをかけるぜってなフットワークが身上。
そんなスタイルも続ければ熟してくるもんで、安定感があるわな(いい意味で)。
この人にはぜひ、半端な大物感をまとわりつかせて失速することなく、オルタナ道を突き進んでってほしいッス。
12.17.2009
PESEBRE

AXEL KRYGIER

2009 ARGENTINA

アルゼンチンのオルタナマエストロの新作。
毎度の如く自ら弦/管/鍵盤にエレクトロニクスまで駆使してのサウンドメイク(DrはFERNANDO SAMALEA)だが、今回は歌物増量。なかなかに
懐こい歌メロが続く前半なんか、ポップエクスペリメンタルからエクスペリメンタルなポップスへとシフトチェンジしたかのよう。
この人の作風はもっとドライでカタログ的って印象があったけど、歌の存在感が増すと、SSW物みたいにサウンドの訴求性や親和性が高まって聴こえる(聴こえるだけかもしんないけど。過去作では一見穏やかでありつつ才気がもっとにじんでた気がするのよね)。

まあ、あくまでこの人としちゃあって話で。ポップスの土俵で見ればかなり上品で、直にハートを射抜かれるようなパンチの効いたタイプじゃない。
とはいえルーツ&フォルクロリックなエッセンスをエクスペリメンタルサウンドに融かし込む腕はさすがにこなれたもの。ええ塩梅の刺激に脳を揺さぶられながら、温いムードに気持ちもほぐされるという。
いつにもまして楽しく聴ける、愛着のわく佳品だす。
12.11.2009
No Tan Distinta

Gabriela Torres

2009 ARGENTINA

SSWでありギタリストのお姐ちゃんの作。ほぼオリジナル。
ジャケを見るとえらくカジュアルな格好で、顔立ちはバルセロナあたりのラテンミクスチャーバンドにでもいそうだが、意外にもインディテイストとは対極の、いい意味でメジャー感の漂う音なのだった。
メジャー感というのは、まずやや低めでクセのないその声。テクと色気に加えてその落ち着いた歌いっぷりが実に本物っぽい。アマチュアっぽさが味っていうのとは逆の、器の大きさを感じさせるってことね。
そしてサウンド。モダンだがエッジは滑らか。エクスペリメンタルな耳新しさでなく、タンゴやボサ、スパニッシュ味など、ルーツリズムの採り入れ方で攻めてくる。「バラエティに富んだ曲調」といわれるありがちなレベルより、品揃え・質ともに一段上をいく。

なんつっても、いかにもメジャー展開を意識しましたって感じの「普通の」ポップチューンを目立つところに持ってきたりしないのがいいやね。俺みたいに狭量な輩は、もうそれだけでスルーだから。
品格を保ちつつ、堂にいったスケール感のあるとこが頼もしいじゃありませんか。
12.5.2009
Vila Brasil

Richard Serraria

2009 BRASIL

ブラジル南部出身のSSWのソロ作。
意識的な作風らしいけど、アルゼンチンやウルグアイなど南米大陸南部平原地域への近さを感じさせるサウンド。豊潤ではじけるようなブラジルっぽさよりも、だいぶ空気が乾き、日差しも柔らかげな音。
頭からつかみに来るようなタイプじゃなく、聴き進むほどに、深くじんわりと効いてくる。
ジャケのセンスがなかなか象徴的で、全体穏やかなんだけどフォーカスはピシッと合い、色彩はくっきり、被写体は構造的という。
音のほうも心に染みいるばかりじゃない。いい具合に気持ちよくさせた辺りでルーツリズムを土台にした冒険が繰り出される。心憎い緩急。

トータルな印象として落ち着いたサウンドであるのは、エレクトロニクス使いが控えめなのと、打楽器よりも弦楽器やアコーディオンがリードする曲調が多いからだろうか。
地味な傑作ってこうゆうのか、と。
12.5.2009
FRASCOS COMPRIMIDOS COMPRESSAS

RONEI JORGE E OS LADROES DE BICICLETA

2009 BRASIL

ブラジル新世代のサンバロックバンドの新作。プロデュースはオルケスタインペリアルのギタリスト・PEDRO SA。
VoにG、B、Drというロックバンドの基本フォーマットで、ギターフレーズにはロック的語彙も少なくないのだが、いわゆるロックっぽさからはかなり遠い地平にいるサウンド。
ロックインストゥルメンツを用いてはいるものの、それを操る者たちの血肉の組成が欧米産のロックやポップスだけで育ったミュージシャンとは根っから異なるって感じ。
ことにリズム感の異質性が際立つ。8とか16とかを重心低くビシッと決めるのが典型的なロックのダイナミズムだとするなら、そういう王道から逸脱した複雑高速なサンバテイストのリズムパターンのつるべ打ち、しかも尋常ならざる躍動感を放つプレイ。

非ロック系の楽器をいろいろ導入した複雑なミクスチャーサウンドでなしに、ごくシンプルな編成でさらりとこんな音出しちゃうとこが実にニュージェネレーション。かっちょいいッス。
11.28.2009
JA TO TE ESPERANDO

EDU RIBEIRO

2006 BRASIL

打楽器奏者でコンポーザーのソロアーティストの、ちょっと前の作品。全インスト、オリジナル。
当人のDrに、アコーディオン or Pf、G、B、Tpという完全人力編成。
これがエクスペリメンタルとは別の意味で不思議なサウンドで、アコーディオンの謳う曲はミュゼットな軽音楽風だったり、ブラジリアンなメロウグルーヴを匂わせたり、各楽器の饒舌なやり取りがジャムバンドっぽく展開されたりして表情がいろいろに変わり、そのいずれともいいがたい音なのだった。ジャズベースのサウンドということになるんだろうけど、いい具合の軽やかさ。
仰々しくも下世話でもなく、クラブ物的にスタイリッシュでもない、ほどよくホットなインスト。

ジャケのセンスとか裏ジャケの当人の佇まいから何となくSSW物かと思って手にしたらインストだったという。まさにその勘違いのような、「落ち着いた技巧派で、でも親しみやすくてちょっと変、なSSW」みたいなインスト。

11.28.2009
偉大(はずかしく)なる2年 ANTHOLOGY 1981-1983

耳鼻咽喉科

2009 JAPAN

直枝政広(ex.政太郎)がカーネーション以前にやってたアマチュアバンドの音源や映像をまとめた2CD+DVDのBOXSET。
ここでの直枝はVo+KEY担当(もう一人サイドヴォーカル♀あり)。ほとんどの曲は直枝作なので、カーネーション前史ともいえる。ってか、デモになってる数曲はカーネーションとそのまま地続きの直枝的センスがすでに開花している。
いやぁ、バンドの音の出来上がり具合に驚きましたわ。
演奏が予想をはるかに超えてしっかりしてた。そこ、大事。商業的ブラッシュアップ以前の創造へのダイレクトな情熱と、それを表現するに足る技術レベル。その両方が揃ってこそのインディーズの魅力だもんねぇ。
素人時代をよく知らぬリスナーからするとカーネーションの歴史ってのは、ライダーズの弟分であり今ひとつはじけきれない草食系青年たちによるひねくれポップから、文学性を豊かに薫らせつつも骨太で漢くさいロックへとうまくシフトチェンジしたよなってな流れに映るけれど、この直枝政広(≒カーネーション)前史を知ると、そう単純なイメチェンって図式じゃないのかもと思えてくるね。
立派な意匠に負けぬ歯応えのある音ざんした。
11.28.2009
WEEK-END A SAINTE-ANNE

Caribop

2008 FRANCE

カリブの仏領グアドループ島発。アコーディオン、Sx、スーザフォンに打楽器×2の5人組。曲毎にG、バンジョー、Pf、Tbなどのゲストが加わる。ちょっとした歌も入るがインスト中心で、Sx奏者のオリジナル。
今日びの商業音楽的ブラッシュアップやミクスチャー感覚とは見事に縁遠い彼の地のクレオール音楽。フレンチカリブの太陽の匂いと緩やかなタイム感の横溢する溌剌とした演奏。

実にシンプルな音像ながら、フレンチクレオールという血筋に流れる生来のミクスチャー&
エキゾ感が脈打っていて、その、ほのかに漂う生成の色香がいい感じ。
ひたすらのどかで風通しのいいサウンドを味わってると、逆に日頃、いかに情報量の統御とパッケージングの完成度を強迫的に追求した音世界に浸かっているかってことが思いやられる。カリブなんかよりずっと辺境の音楽がこれよりずっと隙なく製品化されていくらも提供されてるからね。
俺はそうゆう世界の底にいてそれなりに楽しめているけれど、たまにはこんな自由な音もいいもんだな、と。

11.18.2009
AMERICAN HORIZON

LOS CENZONTLES WITH DAVID HIDALGO & TAJ MAHAL

2009 USA

カリフォルニアにあるメキシカンカルチャー & アートの振興団体LOS CENZONTLES MEXICAN ARTS CENTERが、DAVID HIDALGOを共同プロデューサーに迎えて制作した企画物。
メキシカントラッドとオリジナル半々で、オリジナルではDAVID HIDALGOも曲を書いてる(アルバム通してギターもたくさん弾いてます
)。オリジナルはラテンロック& ポップス、ちょいオルタナ風、TAJ MAHALをフィーチャーしたブルースなど、バラエティに富んだ曲調。
まじめな団体による、
ルーツを継承しつつコンテンポラリーなメキシカンミュージックのカタログという意味合いの作品なので、商売物のエグ味やアーティスティックなエッジの立ち方という点では控え目ではある。
それにチカーノカルチャー的リアルやストリートという視点からすればずいぶん行儀のいい音ってことになるんだろうけど(ヒップホップの要素は入ってないし)、退屈ってことは全然ない。
なかなかどうしてきちんと作られた花も実もあるサウンドで、この手の企画物としてはかなり充実してるんじゃないでしょか。

11.8.2009
SEEK MAGIC

MEMORY TAPES

2009 USA

インディバンドでの活動を経て現在はニュージャージーで隠者の如き生活を送るというデイヴ・ホークって人の、いくつかの変名ソロプロジェクトでのキャリアをMEMORY TAPES名義にまとめた初フルアルバム。
ディスコな要素もあるものの基調は清涼感とメランコリーにあふれたエレクトロポップ。きっとこの人は今みたいにDTMの普及してない時代にあっても、人力で同質のサウンドメイキングができるだろう。エレクトロニクスを駆使してはいても音響に依存しない、ってよりそもそも音韻の人。サウンドが隅々まできっちり設計されてる感じが気持ちいい。
なかなかに
切ない歌メロをピッチを上げた中性的ヴォイスで歌うことでVoの生々しさを抑制するとか、ときおり出現するシンセによる東洋的フレーズの上品な異物感とか、ツボを心得たバランス感覚。
ドリーミーで美メロでエレクトロニカでディスコでニューウエーブで……と、地力もないのに欲張りすぎの薄味ゴッタ煮サウンドが巷に氾濫する昨今、こりゃ地味ながら実力派。

11.7.2009
BRASIL INVERTIDO

MAURICIO OLIVEIRA

2009 BRASIL

ベーシストとしても活躍するSSWの新作。
前半は生楽器中心のオーガニックなサウンドだが、後半ではエレクトロニクス & エフェクツフィーチャーによりオルタナ度増量という構成。
サウンドの肌合いは変化しても全体を覆うリラックスした洒脱ムードは変わらず。突出したところや過剰感はないが、全編ほどよく刺激的。そこはかとなく漂う欧州的エレガンスのような匂いもいい感じ。とにかく、その、ほどよさ加減が実にえぇ塩梅。音楽的にも雰囲気的にも、いっちょキメてやろうって気合いなんか全然入れなくても天然のセンスよさがにじみ出ちゃうような。憎いねぇどうも。

声がまたいいね。レニーニをマイルドにした感じ。俺、♂ Voではこの系統の声が一等好みなんだわ、と、いまさらながらに再認識した次第であります。

10.24.2009
CORRENTEZA

EDU KRIEGER

2009 BRASIL

サンバ系SSWでギタリストの新作。
しっとり
じっくり聴かせる系じゃなく、リズム/ノリのよさを大切にした軽快な作風。
自身とギタリストである弟によるギターがとても饒舌だが、全体としてはシンプルな編成でありサウンド。
そのシンプルさによって、鳴り物とかアコーディオンとかエントリーされている楽器の存在感が増し、鮮やかに響くという。
ことさらエクスペリメンタルだったりはしないのだが、引き算的発想によるサウンドメイクの洗練され具合にモダンなセンスが漂う。
最新ver.
のアプリケーションを派手に使ったりはしていないけれど、そもそもOS自体がモダンかつオルタナ仕様だっつーか、そんな感じ。
10.24.2009
Strange Faith & Practice

Jeb Loy Nichols

2009 UK

在英国アメリカ人SSWの新作。
今回は近作で組んできたチームを離れて英オルタナジャズの人たちとのサウンドメイキング。リリースもそっち系のUKレーベルから。
故に本作、
アメリカ大衆音楽のブレンドされた滋味豊かなソングライティングと温性あふれる歌声は不変なれど、サウンドはジャズ濃度上昇。
編成的には当人のG、ジャズ面(B、Dr、
Pf、Tp、Sx×2)とともにストリングスカルテットが大活躍。この取り合わせが見事な効果を生んで、陰翳がありながらも渋すぎず冷えすぎず、たまらん湯加減のサウンドが始めから終いまで。実に耳の幸せ。
ちょうどジャケットデザインのような音世界。この色彩感。この温度感。毎度アートワークは自前だし、当人がいちばん中身のことわかってるってことだね。
10.18.2009
Este Mundo

Rupa & the April Fishes

2009 USA

マルチリンガルの才女ルパ(Vo & G)率いるアナログ編成の大衆音楽ミクスチャーバンドの2作目。
大きな路線は初作から変わらないけれど、バンドサウンドはよりこなれて、何より曲の粒が揃った印象。どの曲もそれなりに聴かせる。

なかなかに充実しているとは思うんだが、このそこはかとないはがゆさをどう表現すりゃいいのか。

Voは色気も華もあるし、ミクスチャーの幅やバランスにも不足や偏りはないし、インテリジェントな音ではあるけど頭でっかちってわけじゃなし、実にまったくソツがない。
じゃ、何が不満だってのかってぇと……。
贅沢な文句であることは承知でいうけど、どっかに予想を外れたはじけっぷりが欲しいな、と。
確立された様式美をひたすら極めるようなタイプの音楽だったら、非の打ち所のなさって方向にグレードを高めていくことに問題はないんだけどね。ストリートの香りのするミクスチャー物だったら、何か突出したとこや過剰さがあったほうが面白いんじゃないかね。欠点はあってもいいから。などと思う次第です偉そうに。
10.18.2009
Reservoir

Fanfarlo

2009 UK

ロンドンの6人組バンド。中心人物はスウェーデン人。
管楽器やストリングスをフィーチャーした大らかなポップソング。

チェンバーな編成だが、そっち系(ポストクラシックとか)にありがちな線の細さや色気血の気の欠乏といった弱点は見当たらず。
広い意味ではロックの範疇の人たちなんだろう。
ギターミュージックという様式にはかならずしもこだわらない、同時に、サウンドの構築性の追求よりもヴァイタルな音像やグルーヴの獲得を優先するという
、そのバランス感覚が絶妙。
結果、ギターこそ吼えないが、躍動感のある豊かなサウンドとなっている。
生楽器を取り入れた牧歌テイストサウンドなんて今日びインディーズでもいくらも存在するけれど、こういう音を出せる人たちって、実は案外珍しいんじゃなかろうか。
10.18.2009
Feast of the Passover

DAVID GOULD

2009 USA

ジューイッシュレゲエの人、この度はTZADIKよりのリリース。
ユダヤ系音楽には強いアイデンティティをもちながらも異種交配に積極的なアーティストが多いけれど、この人はレゲエ/ダブ方面の先端的存在っすな。

今回はロマ風味などユダヤ系音楽の手札のバラエティが広がってる。レゲエ/ダブ要素は後退したってよりもサウンドの土台としてどっしりと存在していて、過去作ほどには強調されることがなくなった印象。
本場のラスタミュージックが炎天下の音楽とするなら、これは室内で空調温度をジャマイカの外気温と同じに設定してるような音楽(ちなみに昔のニューウエーブ/ホワイトレゲエなんかは冷房の効いた室内から炎天下の景色を見てるような音楽
)って感じ。この高温乾燥で汗かかないノリに、俺なんかは惹かれるわけです。
それと今回、管楽器のフレーズにチンドンテイストというか聴きようによっちゃ妙に和風なところがけっこうあって、そんなストレンジ感もツボ。
10.18.2009
LUMBRE

MARIANA BARAJ

2009 ARGENTINA

ネオフォルクローレ系シンガー&パーカッショニストMARIANA BARAJの過去作、ボーナストラックを加えてのリイシュー。
近作ほどには「歌も楽器」的なアプローチが強くはなく、エクスペリメンタルというよりは普通に落ち着いた歌物。

この人、声が強いね。強いっても、姿勢を正して拝聴せにゃ怒られそうなストイックで厳しいタイプじゃなく、何というか、健やか。きりっとしてコシがあるという、媚びとかフェロモンに頼らないリッチさがある。
この声とジャズベースの締まったサウンドにより、編成的にもアレンジもシンプルを極めていながら、まったく不足を感じさせぬ出来上がりぶり。いくらでも飽きずに聴きつづけられる慎ましくも愛おしい世界。
南米のアーティストやレコード会社は総じてあまり過去を振り返らないというか作りっぱなし的傾向があって、けっこう名のあるアーティストの作品でも廃盤になればそれっきり、入手するのにとっても苦労する
。こういう良作のリイシューは大変ありがたいことです。
10.14.2009
MUSTANG BAR

STELA CAMPOS

2009 BRASIL

オルタナ系MPB♀SSWの新作。
この人の過去作「fim de semana
」が気に入ってて、その濃厚にエフェクティブな音像から、アーティスティックでインテリ系のキャラって印象をもってたんだけど、今回はリラックスした作風ですな。
この頃のMPBでオルタナテイストをもったSSWってぇと、まずルーツサウンドに造詣が深くて、ストロングスタイルでも十分勝負できる実力がありながらオルタナ含めモダンなアプローチにも目配り利かしてますみたいな優良児が多くて。
そんな中でこの人はことさらルーツ色を出すことなく(土台はあくまでモダンなポップス)、むしろオルタナなサウンドメイキングが味付け道具以上の重要なオリジナルスタイルになってる。それが却って新鮮に見えるっちゅうか、安心して聴けるオルタナポップ。

だからってアイデア偏重とかってことはなく、シンガーとしても、落ち着いた声質でなかなかよござんすよ。
10.7.2009
CUCULAND

CUCU DIAMANTES

2009 USA

NYオルタナラテンの雄YERBA BUENAの歌い手のお姐ちゃんのソロ作。
(狭義の)ラテンに血の沸かない質の俺でも参っちゃうほどかっちょいい彼のバンドのメンツも参加となりゃ、あの過剰でエッジィなテイストを期待するのが人情ってもんだが、そこはちょっと肩すかし。YERBA BUENAのサウンドの骨格があくまで「ラテン」だとするなら、こっちはだいぶ「ラテン風味のポップス」に傾く印象。ま、これはシンガーのソロ作品なんだから、差別化は妥当なわけだが。
YERBA BUENA味を期待する向きからすると前半はかなり大人しめ、それでも後半にはけっこうリズムが暴れ気味でウヒョヒョって感じ。

歌は、YERBA BUENAの絢爛たるサウンド中にあってはことさら強烈な印象でもなかったけど、こうしてソロでじっくり聴くと、甘さ控えめのヤングアダルト声、華やかなサウンドをバックにしてもしっかり立ってるタフさはさすが。えぇッスな。
9.28.2009
Cosas de Tomi

Tomas Lebrero

2009 ARGENTINA

今年前半日本オリジナル編集盤も出た、ブエノスアイレス新世代SSWの新作。当人はバンドネオンとGもプレイ。
バッキングを、ともにアコースティックな編成の2チーム使い分けるという構成。
今回はいつにもまして歌をじっくり聴かせようという趣旨なのか。もともと歌声もサウンドも柔らかで押し出しの強いタイプじゃない。そりゃ承知してるんだが、序盤は正直地味に思える。
でも聴き進んでいくうち、じわじわと効いてくる

派手に新しいことやってるわけじゃないのにオーソドックスな南米ルーツ系からは妙にずれてて、それが新鮮に聴こえるサウンド。こうゆうタイプの曲ではふつうこうゆう展開しないよな、この楽器をこうゆう使い方しないよな、みたいなのがけっこうあって、そうゆう意味でのミクスチャー感覚こそが新世代たる所以ッスかね。
9.20.2009
O Que Se Passou

Max Sette

2008 BRASIL

オルケスタインペリアルのTP奏者のソロ作。
つってもインストじゃなく、自作曲で、自ら歌う、実にリラックスしたムードのサンバであります。
ちょっとしたオルタナサウンドを期待して聴いたらまったく奇をてらったとこがないサンバで、でもこれがふつうにいい曲揃いで、歌もサウンドも絶妙な力の抜け具合がたいへん気持ちいいのであった。
歌は下手じゃないけど決して巧いってわけじゃなく、でもその素人臭(ってほどでもないけど)がいい意味でホームメイドな味を出すのに効果を発揮してて、これまたえぇ感じ。
オーセンティックなブラジル歌物には国宝級の巨匠が居並ぶけれど、俺はこっちを愛聴するね。(って、そんなこと威張んなよ。たたの悪食のくせに。あ、これが際物ってわけじゃないッスよ。これはふつうにナイスな作品です。いや「ふつうに」って皮肉じゃなく、ね。)
9.20.2009
I speak fula

Bassekou Kouyate & Ngoni ba

2009 MALI

マリの弦楽器ンゴーニ奏者Bassekou Kouyateと彼の率いるンゴーニ四重奏団Ngoni baの作品。
ほぼオリジナル。専属の♀Vo含め、複数のゲストVoを加えた歌物。
ンゴーニ自体は繊細な響きのトラディショナルな楽器で、他はPerやコラ、そして歌声。そこに、ほんの少々エレキGが加わる程度の実にオーガニックな編成。
だけど印象は実にモダン。
アフリカ物にありがちなタフネスとパッションに任せてシンプルかつミニマルに押しまくるタイプではなく、アンサンブルの展開を練り上げた楽曲。ポピュラー音楽に甘やかされた日本人リスナーも飽きさせない、どころかスピード感にあふれ、西洋音楽の単純な符割を笑うかのようにフレーズは微分化して揺らぎまくり、かっちょいいサウンド。

中途半端にサウンドを電化しないのがたいへんよかった。これでエレクトロニクスやドラムビートが入ってたら、それが下品に感じられたんじゃなかろうか。エレガント & クールです。

9.20.2009
Monica Abraham

Monica Abraham

2008 ARGENTINA

アルゼンチン発のシンガーの作品。当人は曲は書かない模様。ちょいかすれの入った、落ち着いてクセのない歌声。
はふつう。オルタナテイストはなく、ことさらにオーガニックでもない。むしろスノッブ(悪目立ちしない程度の)なサウンドで、オーソドックスで人懐こい南米ポップスって感じ。
ポップスにふさわしく薄められた汎ラテンテイストの香る曲調なんだけど、ブレンドされた音の産地を考えてみると、アルゼンチン都市部の音楽をメインとして、そこからアンデス方面やブラジル方面を飛び越えて一気に地中海まで行っちゃうところが面白い。ま、広義のラテンではあるけれど、なぜかカンツォーネの匂いのする曲がいくつか。
このイタリア風味が、全体の陽性でポピュラリティにあふれたムードを損なうことなく、サウンドにバラエティを感じさせてる。
9.20.2009
Anfibio

Nico Ibarburu

2009 ARGENTINA

ウルグアイ出身のSSWの作。期待の若手らしく、スピネッタさんとかファトルーソさんとかのビッグネームも参加しちょります。
ざっくり言うと、同じくウルグアイ出身のJORGE DREXLERという人がいますが、あの感じ。
ブラジル物のヌケのよさや躍動感とか、アルゼンチン物/フォルクローレのドライな清澄感とか、多くの南米物には一聴してわかる異質感(和物や欧米産に比べてね)があるけれど、それが薄目。
適度にモダンで適度にエクスペリメンタルなサウンドは、中庸の美とでも申しましょうか。欧米産のポップミュージックから地続きにも思えるマイルドでウォームな肌触り(歌声もソフト)。この人にせよJORGE DREXLERにせよ、とっつきやすさという点が、エグ味豊富な南米産の中にあってかえって特徴的っつーか。
だから繊細でメロウなアーバンポップスという流れでも楽しめるとは思うんだけど、よく聴くとあちこちにエキゾチックなテイストがあって妙な気分になり二度おいしい、みたいな。

グロ?なジャケセンスはハードなエクスペリメンタル系を想像させもするけど、そりゃミスリード。
9.5.2009


2009年3月〜2009年8月

2008年9月〜2009年2月

2008年3月〜2008年8月

2007年9月〜2008年2月

uwatzlla@visitor2.jp


※英語以外の外国語を正しく表示させる技術がないため
(主にアクサンなどアルファベットに付く記号のことですが)
ただのアルファベットのままでお茶を濁してます。
ことにラテン系のアーティスト名や作品名は不正確になること、
承知いただきたし。

作品の国名表示は厳密なものではありません。
CDの生産地クレジットを基本にしてはいますが
アーティストの出身や活動拠点と関係のない国からのリリースの場合
どうにも違和感を禁じ得ず、そのアーティストのプロフィールとして
よりふさわしいと思われる国名を表記することもあります。
参考程度にご理解いただきたし。