Uwatzlla!



Gather,Form & Fly

Megafaun

2009 USA

ノースカロライナの野郎3人組。
アーミッシュというバックボーンを反映してかハンドメイド感あふれる、文字通りの意味でフォークなアメリカーナ。
生楽器中心の牧歌的サウンドが基調ながら、今どきっぽいミクスチャーセンスやエレクトロニクス使いも顔をのぞかせたりする。
前身バンドからヴォーカリストが脱退して残りのメンバーで始めたという経緯だけに、歌物中心でありながらつぶしの利く声の歌い手がいない。朴訥というか素人っぽいヴォーカルや合唱、あるいはゲストヴォーカルなどで繋いでいく構成で、当然、この手のSSW物のような歌声によるサウンドの統一感や求心性は薄い。
でもそれが単に弱点とのみ映らず、かえって風通しのよいムードを醸しているようにも感じられるのは、こういうサウンドのおかげか人徳か。

なかなかに繊細な演奏と脱力一歩手前の当人たちの歌声との妙なバランスによって、ちょいストレンジななごみサウンドとなっております。
8.29.2009
BLOOD FROM STARS

JOE HENRY

2009 USA

ヴィンテージなアメリカ味を今日的な洗練と少々のオルタナテイストで再構成するSSWの新作。
01年の「Scar」がフェイバリットで、当時はオルタナアメリカーナの先駆的存在として聴いてたんだけど、その後どんどん熟成し、プロデュース業でも手腕を発揮したりして、今やこの系統の大立て者といった佇まいになっちゃった。
今回、営業サイドではブルースにフォーカスした作として売りたいようだけど、ブルース色がことさら濃いわけでなくもっとバラエティに富んだサウンドだし、ブルーステイストにしても南部系のマディなのじゃなくアーバンなもの(つまり身の丈に合ったもの)を自然体で採り入れてる感じ。

俺的に、この人のサウンドには標本的な視点が感じられるのが好ましいね。これ、誉め言葉っス。まな板にのせる素材のエッセンスを冷静に抽出しようとする姿勢というか、そこに感じるクールネスがいいってことなんだけど。
それと、声が好きだね。ちょっと鼻にかかった、俳優とかにいそうな、歌心のあるSOUL COUGHINGみたいな声。
歌われる世界の深みについてはよくわからない渋さ知らずな俺です。
8.25.2009
CUMBIAS DE VILLA DONDE

KING COYA

2009 ARGENTINA

デジタルクンビア卸問屋ZZK RECORDSより。こりゃまたわかりやすくキワ物っぽいのが、と思ったらコレなんと彼の地のストレンジミクスチャー系の雄GABY KERPELの変名企画だそうな。
考えたらデジタルクンビアって、GABY KERPELの前々からの持ち味であるエレクトロニクスも民族楽器も縦横に駆使したデジアナちゃんぽん不思議音楽の普及版といえないこともない、みたいな。
ブームの先達的スタンスの大物が、盛り上がってるところへニューカマーのふりで参入して遊んでみようか、みたいな。

で、サウンドもビジュアルも猥雑にしてヴァイタルなデジタルクンビアをシミュレイトしようと試みたものの、洗練されたセンスはいかんともしがたく、悪のりしたつもりが妙に端正に仕上がっちゃった、みたいな。
8.14.2009
Girls! Girls! Girls!

CRAZY KEN BAND

2009 JAPAN

CKB新作の候。
メジャーデビューといわれているけど、今までことさらマイナーだった印象もないんで正直ピンとこない。ただ、世間並みなメジャー戦略からすれば、この作品がメジャーフィールドでの挨拶状ってのは相当にチャレンジャーだと思うね。CKBみたいに熟した立場でのメジャー初作となりゃ、上げ底 & 若づくりで「ここはいっちょ派手にいきましょう」となりそうだが、ことごとくその裏を行ってるような気がする。
いつにも増して落ち着いた気配が漂い、スケール感と深み増量。それも、演出された「オヤジの渋み」臭はみじんもせず、剣さんの年齢的熟成をそのまま作品に昇華して提出しましたって感じ。

柵越え狙いの強振をひかえて(あえてか?)、技の光るクリーンヒット連発のような粒ぞろいの曲たちが素敵。
にしても、剣さん、歌詞世界ではけっこう未踏の領域に入りつつあるかもね。若ぶるでなくやんちゃぶるでなく、しみったれてなく説教臭くもなく、リアリティがあってイカす大人を「新鮮な視点で」描出し続けてる人って、他にいるだろか?
8.14.2009
TRANCHA

Vinicius Calderoni

2007 BRASIL

SSW♂のソロ作品。
ホーンセクションの活躍する曲あり、生楽器フィーチャーのシンプルな曲あり、バラエティ豊かでポップかつアーバンなテイストに溢れたサウンド。
この人は欧米圏の出身であったとしても、ふつうに良質で洒落た音楽を生み出すアーティストたり得たんじゃないか。と思えるほどに、ブラジル物云々というよりもまずポップミュージックっていう印象が強い。

そのうえで、だけどやっぱり隠せはしないバックグラウンド(いやだから隠しちゃいないが)って感じでにじみ出るブラジリアンフレーバー。ポルトガル語のエレガントな響き然り、サウンドのヌケのよさ然り。
SSW物チェックしてたらすごく新鮮でエェ感じの見つけちゃったみたいな得した感じ。
8.8.2009
Licuadora

Guebe

2009 ARGENTINA

素直で陽性な歌声をもつGuebe(ゲベ)嬢のアルバム。
名義はソロだが、エクスペリメンタルポップ系のサウンドプロダクションを得意とする野郎2人ががっちりサポートした作品。
エレクトロニクスも生楽器も縦横に駆使して展開を重ねていくサウンドも面白いが、それ以上にポップでキャッチーなメロディがナイス。
俺個人の好みではあろうけど、ポップミュージックにはある程度の構築感と人力による制御感みたいなのが大切だって再認識した次第。
逆に俺、なんでポップ系エレクトロニカが苦手なのかわかった。デジタル制御のベーシックトラックへの依存度が高すぎっちゅうか、相対的にポップエレメンツ(歌、メロディ等)が弱いっちゅうか。ポップを司る部分が、淡々、チマチマ、或いは垂れ流しな感じで物足りなく思えてしまうものが多いってことなんだわ。
それはともかく、こりゃ楽しい。往年の良質なニューウエーブ系ポップを聴いたときみたいなワクワク感、久々に味わったね。
8.8.2009
Nicolas Falcoff y La Insurgencia del Caracol

Nicolas Falcoff y La Insurgencia del Caracol

2009 ARGENTINA

フォルクローレ系新世代として多方面に活動しているアーティストのソロプロジェクト。
自身のVo & G、♀Vo、B、Perという編成を骨格に、曲毎にゲストが加わる。そのゲスト陣にはTomas Lebrero、Mariana Baraj、Lucio Mantel等々、過去に当サイトに登場したアーティストが何人も。それだけでも気になるってもんだす。
が、そうゆうブエノスアイレスの麗しいコネクションはさておいても、このアルバムはサウンドがすんばらしい。
ジャケのイラスト見るとけっこうエキセントリックな音が想像されもするけど、意外や、生楽器中心の実に落ち着いた美しいサウンドなのであります。
かの地の様々なルーツリズムのエッセンスはしっかりと受け継いだうえで、例えばコーラスワークとかにモダンな解釈をふんだんに採り入れて、瑞々しく、しかもちゃんと新しいフォルクローレに仕上がってる。お見事。
8.8.2009
Disfarmer

Bill Frisell

2009 USA

Frisell新作はコンセプトアルバム。
遺された仕事や風変わりだった暮らしぶりからFrisellは彼をアウトサイダーアートの文脈で捉えているらしいアーカンソー州の写真師・故Mike Disfarmerにインスパイアされた作品。
自身のG & Loopの他、スチールG & マンドリン、Vin、Bという編成。
Disfarmerという存在を理解するために、カロライナ、ジョージア、アラバマ、ミシシッピを経てアーカンソーまで旅したそうで、そういった土地柄が匂う音ではある。
が、そこはFrisell。ただ懐かしく温かく土臭いアメリカというふうにはいかない。
ことさらスロー& ダウナーでなくテンポがあり、幽玄ループによるにじみ感もさほどでなく、Vinなどの効果で音像の輪郭はっきり目の曲調が主体。けれど支配的なトーンは曇り空、寒色であり、郷愁とともに寂寞感のようなものが胸に染みるサウンド。
創造性と情熱にあふれ、かつ孤独なアウトサイダー的人物ってものを音で表したら、なるほどこんな感じだろうか。
7.30.2009
ZDRAVO MARIJO

SEVERINA VUCKOVIC

2008 CROATIA

クロアチアの歌手/女優の作。
ジプシー物をフィーチャーしたサントラ仕事などで名を馳せたゴラン・ブレコヴィッチのプロデュース。
ブレコヴィッチの音ってぇとジプシーテイストをアク抜きしすぎるきらいがあって
、聴きやすいがパンチに欠けるって印象だったもんでどうかなと思ったけど、これはいいね。
アタマの曲こそジプシーブラスも勇ましいアッパーチューンだけど、その後は大半が朗々と、あるいはしっとり歌い上げる哀愁 & フェロモン系チューンで、この構成なればこそブレコヴィッチの洗練された職人技が活きたって感じ。
細かいトコまで配慮の届いたサウンドにこのお姐ちゃんのタレント性と色気豊富な存在感が合わさることで、上品なだけでも下品なだけでもない、華のある世界ができあがってる。
中ジャケでお色気七変化を披露してたりしてけっこう芸能度の高いスタンスではあるんだろう。それは日本人の俺が見てもわかる。けど、背景のアートワークがカラーもモチーフもそうとうエキゾでストレンジ。これは現地の感覚では普通なのか、やっぱ不思議系テイストなのか、ちょっと謎。
7.30.2009
VERDEVIOLETA

VERDEVIOLETA

2007 BRASIL

チリの国民的フォルクローレ歌手のレパートリーをモダンな解釈で聴かせる、ブラジル、チリ、アルゼンチンの混合チームによる作品。
ジャズがベースだが、アコーディオンやフルート、生ギターなどが活躍する風通しのいい編成、落ち着いたアンサンブル。最新のテクノロジーに頼らず、人力の技巧を凝らしたサウンド。
何人かの演奏者がVoもとる(♀メイン)。歌の存在感はことさら強くはないが、飾り気のない声質がフォルクローレの清澄なムードに調和している。
フォルクローレテイストのジャズでもなく、その逆でもなく、ジャズの骨にフォルクローレの血肉って感じで、両者の溶け合いが絶妙な塩梅。ゆるすぎず、とがりすぎず、スノッブでも土臭くもなく、ほどよく芯のある質感がたいへん快い。
フォルクローレの瑞々しさは失わず、締まったプレイから生み出される洗練されたグルーヴ、と、いいとこドリ。いい意味で。
ジャケのセンスの通り、端正にして豊潤な好作。
7.24.2009
KOYAANISQATSI

PHILIP GLASS

2009 USA

1983年公開の米映画のサントラのリイシュー。映画としては、俺の中で五指に入るかというフェイバリット作品。
シンプル目のインストアンサンブルと声楽的コーラスによる、ミニマルミュージックの見本のようなサウンド。
役者もセリフも皆無で、スロー&高速度撮影を駆使した映像と音楽が延々と展開するという映画。映像と音楽が分かち難く結びついていて、この作品の音楽はもうこれ以外考えられない。
コヤニスカッティのテーマはアーティスティックな手法による文明批評といわれてるけど、俺にとってはあくまでハイレベルな眼の驚き、眼の悦びを提供してくれるものであって、そうゆう唯美的(といって大げさなら快感原理主義的)スタンスからすると、言葉や物語性に頼って説明せず視覚に純化したアプローチというのはジャストフィットでとても気持ちいいわけですよ。
ああ、これって、音響派・音響系について思うところと同じだと
書きながら気づきましたわ。
ところで、これ聴きながら街を歩いたらコヤニスカッティ気分が味わえるかと思ったんだけど、眼に映るのはイヤんなるほどドメスティックな景色ばっかりで、サントラの力をもってしても感興は微妙だった。
7.16.2009
私は猫ストーカー サウンドトラック
今のところ配信オンリー

蓮実重臣

2009 JAPAN

a.k.a. Pacific231の作曲家の邦画サントラ。
パッケージ製品としての音楽に慣れ親しみすぎて、データという存在形式は何か不完全な気がしてしょうがない旧世代な俺でも、1分前後の曲が大半でトータル20分にも満たない小品であるこれなんかはデータ配信がちょうどいいのかもと思えるね。無駄がなくてよろしい。
蓮実重臣って人はクラシックの素養豊かには違いないんだろうけど、アカデミックな匂い(もっといえば音大臭さ、実際音大卒かどうかは別にして)が希薄で、それが音の佇まいにある種まろやかさと気品をもたらしてるように思える。上野耕路なんかに近い感じ。
この作品は、ほっこり系のシンプルなサウンド。まぁタイトルからしてそうゆう映画なんでしょ。
昔あったチープなリズムマシンみたいなピコポコいう電子音がいい感じだが、よく聴くと、そうゆう細かなとこにも神経の行き届いた構築性の高い音。仕上がりも丁寧。この手でありがちな、ぬるいだけのなごみ音楽とは一線を画してる。
7.8.2009
PASSION8

PARIS MATCH

2009 JAPAN

昨今の邦楽、シティポップとかメロウグルーヴとか往年のおしゃれ系のテイストを採り入れたものはもはや珍しくもないけれど、思えば、80年代洋楽のアーバンポップスをベースとするこの人たちみたいなスタンスは、そうゆう中でも異端的なんだな、と。
似たような括りで語られる音楽でも多くは60〜70年代のフォークやニューミュージックのドメスティックな味も併せもつタイプな気がする。やっぱウエットなほうが日本人好みなんだろうかね。熱さやダサさも肯定してくれる音楽のほうが安心できるってぇのか。ある種イノセンスを演じないことには洒脱に徹した音楽なんて気恥ずかしすぎるってぇのか。作り手も聴き手もね。
そんな世の
多数派からすると、醒めて乾いた表情を崩さないPARIS MATCHなんかは「日本人としてのリアルがない」「うわべだけに凝りすぎ」「スカしやがって」ってことにもなるのかね。
それでも「自分たちはこれが好きなんだ」ってスタイルを貫くPARIS MATCHに、ずっと潔さとかっこよさを感じてきた俺です。
が、ここにきて多数派を意識して模索してるような気配がちょいと漂うような。
いや、肝心のサウンドは変わらず高品質で我が道を行ってると思うんだけど、例えば、曲名や歌詞に、ジャケなどのビジュアルに、「世間一般にも、より通じやすく」という心配りが増量されちゃいまいか。
それがダメだってんじゃないよ。けど、さじ加減、難しいよね。万人受け方向に振れるほどに失うものって、PARIS MATCHにとってはすごく大切なものだと思うのよ。ぶっちゃけ、
安っぽくだけはならないでほしいものです。
6.24.2009
BUENOS AIRES, TANGO Y DIVAN

GABRIELA ELENA

2008 ARGENTINA

タンゴ系♀SSWの作。ほぼオリジナル。
タンゴをはじめミロンガ、ハバネラ、カンドンベにワルツと、さまざまなリズムを取り揃えた楽曲のバリエーションがうれしい。タンゴに絞られると、俺、たぶん飽きちゃうから。などといいつつルーツリズムの細かな区別を実はよくわかってなかったりする不勉強な俺です。
アレンジとサウンドディレクションをしてるPedro Furioって人がギタリストなんで、サウンドはこの人のGを中心にB、Per、バンドネオン、チェロが基本編成で、ゲストにVin、Pf、アコーディオンなど。
この、ギターメインってのがよかった。もちろんタンゴにも対応する編成だけど、もろタンゴ楽団っぽくバンドネオンやVinあたりが出過ぎることなく、曲のバラエティに応じた表情豊かな演奏になってる。
タンゴに偏ると、往々にしてある種の大仰さとか古色が漂いやすいでしょ。そこをうまくかわして、タイトでノーブルだが温性も生彩もしっかりあるという音像。素直でのびのある中低音の歌声にもマッチして、滋味あり、聴いてるとこっちの猫背も少しのびるようなスラリと気持ちのよいアルバムであります。
6.19.2009
Song Up In Her Head

SARAH JAROSZ

2009 USA

ブルーグラス系の♀SSWの初作。
斯界の名人達がバックを盛り立てており、俺的にはBen SolleeやChris Thileの参加に惹かれるところ。ほぼオリジナル。当人はVoの他、G、バンジョー、Pfなどもプレイし、インスト曲も少々。

Voはクセのない声質だが未だ熟してはおらず、サウンドが霞むような強く印象的な歌というわけではない。が、その代わりっちゅうか、演奏がたいへん充実しており、器楽の快感に溢れてる。
だからって「
バックは素晴らしいのに歌が弱い」っていいたいんじゃないのよ。俺には意外にイケるんだな、この歌と演奏のパワーバランス。
歌にせよ楽器にせよ、マエストロのリーダー作だと、その至芸の存在感がけっこうTOO MUCH気味だったりして(比べて他の要素が物足りなかったりして)。名人の一芸を深く味わい抜くような通人の耳をもたない俺なんぞには、そうゆうのは正直ちょっと辛いわけですよ。「も少し甘口で願えませんか。付け合わせもいろいろあるとうれしいんですけど」みたいな。
その点こうゆう作品のバッキングだと、名人達のプレイも抑制が効いた上での煌めく技芸であり、「適量」であればこそ余計に美味に感じられるってこともあるんじゃないかと
。俺はそう。
歌はまぁ、これから熟していく人なわけだし、デビュー作としちゃ十分に素敵な仕上がりだと思いますです。
6.17.2009
Timba Talmud

Roberto Rodriguez

2009 USA

TZADIKのラディカルジューイッシュシリーズから、早くもRoberto Rodriguezの新作が。
今作は自身のDrに、Vin
、クラリネット、Pf、B、Perというクレツマー的編成のセクステットを率いて、ジューイッシュフレーバーの香るキューバン〜ラテンにフォーカスしたサウンド。ゲストでGやTpなど。大半オリジナル、歌物もあり。
流麗なVinとクラリネットの柔らかな音色がラテンリズムの上で溶け合い、涼やかな翳りでパッションを覆った心地よき音像。
王道的なラテン物にはあんまり心の動かない俺なのに、なんでこの音はツボなのかって考えたら、ジューイッシュとのミクスチャーによってきたるメロディの翳り/憂愁こそが鍵だね。
それ即ち、俺の好みの尺度の第一優先事項たる「かっこいいリズム&ストレンジなメロディ」のうち後者に当たるわけで、ラテン物一般には(リズムはともかく)そのメロディの屈託のなさ故に俺のツボを押してくれるものが少ないってことなんだな。
因みに第二優先事項は「刺激的なサウンドメイキング&心地よい音響」となる。このサウンドには前者の範疇の要素はあまりないけれど、そのかわり気持ちのよい響きが一瞬たりとも途切れることはない。ギミックの不足を補ってなお余りある快美感の横溢ってわけで、ならば俺的には「あり」なんでした。
6.14.2009
FORGOTTEN DREAMS

NOVELTY FOX

2009 FRANCE

「タイプライター」とか「鉛の兵隊の行進」とか、題名はともかく曲自体は有名な軽音楽ばかりを集めて、ジャズをベースにした生楽器アンサンブルで聴かせるという作。基本インスト。
思えばその手の曲って、BGMとして偶然耳にする機会は多いけど、いざ音源を探そうとなるとなかなか面倒

クラシックでなしトラッドでなし、イージーリスニングみたいな分類のとこからモロ企画物っぽいアルバムに収録されてるのを見つけるか。でもそうゆうのは大概サウンドが安っぽくて、それが入手し得る音源の最高品質とはとても思えないながらも妥協するしかなかったり。

一方で名のあるアーティストにカバーされるケースも多いけど、その場合は当然斬新な解釈のアレンジを追求するか、そのアーティストの操る楽器をフィーチャーした演奏になるわけで、素のまんまのその曲を聴きたいんだって立場からすると、それも違う。
そういった悩みに、これ、なかなかよく効く一枚なんじゃないか。
アレンジに奇をてらわず、曲が作られた当時にあったものと変わらぬ楽器たちを使った、丁寧で品のある演奏をハイファイな音質で。

隙間産業的ナイスアイデア。
6.7.2009
KABA SAZ

KIRIKA

2008 TURKEY

トルコ地方に伝わるギリシャ系トラッドをベースにしたミクスチャー音楽をモダンな感覚で演るグループ。弦楽器と歌、B、Perと歌、管楽器という変則編成。
かのラテンプレイボーイズに懸けてオスマンプレイボーイズっつったら、そりゃさすがに持ち上げすぎと思うが、当人たちはキャレキシコを引き合いに出すほどにはオルタナ的スタンスに自覚的であるらしい。

まぁ確かに歪んでギラついたギターなんか聞こえるところはキャレキシコっぽくもあるけど、サウンドがそんなに似てるわけでもない。あっちは砂ぼこりでこっちは土ぼこりってゆうか、乾いた空気は共通でも何かニュアンス違うよな。

トルコも含めたアラブ方面の作品ってぇと大筋は延々と朗々と濃ゆく熱くって印象があるけど、このアルバムはタイプもいろいろのさほど長くはない曲たち(3分台が多い)を淡々と並べたって感じで、それが意図的な構成センスなのかはわからんけど、むしろそうゆうドライなカタログ的感覚に、初期キャレキシコに近いものを感じるね。
ともあれ、面白いセンスの人たちであることは間違いなし。これが初作らしいけど、どんな方向へねじれていくのか楽しみであります。
6.7.2009
FEKETETO

CIMBALIBAND

2008 HUNGARY

バルカントラッドを高速かつ伸縮自在、ハードにプレイする、Taraf de Haidouksをチューンナップしたような若手グループ。
ツィンバロンとアコーディオンが活躍し、そこにVin、G、B、
ダルブッカ等のアナログ編成。インスト中心だが歌物も3割ほど。
Tarafよりもぐっと洗練されたサウンド。とはいえ、この手のは洗練とワイルドネスの塩梅が肝心で、若手のモダントラッド勢にはハイテクだけど淡白で物足りない音がけっこうある。この人たちは、その点、力強さや太さ&艶をキープしてるほうじゃなかろうか、けっこう際どいけど。
それと音的には、Tarafみたいな急上昇急降下フレーズはあまりなくて、もっぱら平坦な道での加速ショー。でもほとんどの曲で「さぁここからとばすぜ」的展開がきっちり用意されててよろし。
こっちは(つーか少なくとも俺は)メタルフリークよろしく早弾きっぷりを堪能したいんだから、スローな曲とかはさんでアルバム構成に半端な気配りされるよかずっと潔いってもんだい。(渋さ知らずで御免よ。)
6.5.2009
ZZK MIXTAPES VOL.5

TREMOR

2009 ARGENTINA

デジタルクンビア界隈の注目レーベルから、TREMORの新作が。
デジタルクンビア、盛り上がってきてるらしいッスが、「今熱いのはコレですよ」的なムードが気に入らず食わず嫌いなもんで、よくわかりません。TREMORもそうなの?
前作からアンデステイスト増量。デジタルな制御感は特に強くもなく、相変わらずデジアナ混淆のストレンジサウンド。デジタルな手管も重要には違いないが、フォルクローレをいったん分解して、そこから自分のサウンドをこね上げるときの「つなぎ」として重宝しました、みたいな感じ。

当人たちにとってはデジタルだアナログだってこだわりはなく、それぞれ巧みに操れるツールとして等価なんじゃないかって気がする。
それにして
もデジタルクンビア、スルー気味だから油断がならんわな。まったくの偏見で、もっとグルーヴィで汗臭い音楽をいうのかと思ってたんだけど。
もっとも、今のとこTREMORみたいなポップエクスペリメントってぇのか、フィジカルな匂いは強くないがクラブ系ともエレクトロニカとも違うようなのを当座カテゴライズしとくのには便利な括りなのかね。
6.5.2009
LUMIERE

BOB BROZMAN ORCHESTRA

2007 USA

ギターマニアックを自認し、様々な弦楽器を操り、弦楽全般について探求心旺盛で、世界のあちこちへ出かけてコラボしたりと、有名どころでいえばライ・クーダーのような活動をしているアメリカのギタリスト/コンポーザーの作。
9割方の演奏を自らの弦楽器を重ねて制作したインスト作品。ほぼオリジナル。ジャケはコラージュで、全員顔はおんなじ、当人

サウンドは、自身の音楽遍歴を総括するような弦楽ミクスチャー。
例えば、サラセンテイストのギターの音色と奏法だが曲調はタンゴ、でも途中でハワイヤ〜ンな展開、とかそんな調子で、
米ルーツ系〜ブルース、ハワイアン〜エキゾ、ラテン、アフリカン〜コロニアル系、マヌーシュスイング、沖縄etc. といろいろ出てくる。
ま、ミクスチャーとしちゃ混ぜ具合はわりと大味でパッチワークみたいな感じなんだが、ジャンルのみならず使用楽器や奏法までがシャッフルされることで、なかなかエェ味出してます。
近作ではブルースを追求した
りとか沖縄の人とのコラボとか、テーマを絞った作が多くて、飽きっぽい俺なんか名演垂れ流しの様を離れて眺めることが多かったもんだから、腕達者で音楽的にマジメなこの人のようなタイプには、今作のように好き放題やってもらったほうが面白い。(彼のキャリアでは、戦前ギターミュージック博覧会の趣のある20年前の「DEVIL'S SLIDE」が一等好きな俺です。)
5.24.2009
CITY OF STRANGERS

ROBERT BURGER

2009 USA

インテリゴシックアメリカーナグループ・TIN HAT TRIOの初期メンバーだったコンポーザー/マルチインスト奏者の、サントラ仕事集成、from TZADIK。
フィルム3作品のために作られたショートピースが全31曲
、次から次へ現れては消えゆく。絵巻物の如きというよりもうちょっとアナログなスピード感のある、スライドショーの如き世界。
当人の操る様々な楽器の他、曲によりV
in、G、Perなどが入る。MARC RIBOTも参加。
アメリカーナ、クラシック、トラッドなどが溶け合った穏やかかつリリカルなサウンド。TIN HAT TRIOに近いが、向こうのクールで硬めな感触よりもずっと温かい。初期TIN HATの牧歌的なテイストはこの人の資質によるところ大だったのではと思わせる。
日本で例えれば、ワールドスタンダード鈴木惣一朗の全キャリアをシャッフルし、アジアンテイストを抜いて乾燥させ、人声なしでサントラを作ったらこんな感じか? 
要するに、とても心持ちのよい音楽。
5.18.2009
PORCUPINE

TIM EASTON

2009 USA

アメリカンなロック/フォークのSSWの作。
曲調はロック色が濃いけれど、アメリカーナ的に落ち着いた渋い線というよりけっこうロックンロールテイスト。都会的洗練でなく、地方都市の埃っぽくもヴァイタルな雰囲気を漂わす。Voは
適度にしゃがれてて、いい感じ。
で、サウンドが、オルタナってほどじゃないけどほどよく音響的な味付けと立体的なミックスになるけっこうモダンなもので、これは当人のというよりプロデューサーのBRAD JONESのセンスかね? 
このいい塩梅に凝ったサウンドメイキングによって楽曲がとてもチャームアップされてる。タランティーノの映画にフィーチャーされそうなイカしたB級テイストっていうか。まぁ、あそこまでわかりやすくもバタ臭くもないけど、ああゆう方向に輝きを増してるのは確かなんじゃないかと。

5.17.2009
catsup

catsup

2009 JAPAN

コントラバスとアコーディオンの兄妹デュオ「ケチャップ」の1st。
全曲オリジナルのインスト。ミュゼットや東欧テイストをベースとした曲調。トイピアノや鉄琴、Perを少々重ねているが、基本2人だけによる演奏。
ヨーロピアンな器楽を演ってる国産アンダーグラウンド作品てぇと、誠実だが貧相な音が少なくないけど、そこん所をこの人たちは出音の太さでクリアしてるのがグレイト。たくましい音がよろし。普段ピロピロした単音フレーズになじみすぎっちゅうか、唸るアコーディオンには、そういやコード楽器だったと再認識させられましたわ。
ちょっとサウンドが単調かと思うあたりで、おもちゃっぽい音たちを重ねた曲やコントラバスの弓弾きが出る構成も気が利いてる。
フレンチサウンド=軽妙っていう王道的解釈がどうも肌に合わない俺には、このバーバルな香りすら漂うシンプルで重心の低いミュゼット、なかなか新鮮であります。

5.17.2009
AMANHECER

PAULA MIRHAN & WAGNER BARBOSA

2007 BRASIL

♂G+Voと♀Voのデュオ。ボサ〜サンバベースの♂のオリジナル曲。
音響的な味付けなどないオーガニックなサウンド。居心地のいい小空間で、しかも目の前で奏でられているかのようなナチュラルで鮮やかな音像がまず気持ちいい。
バックは曲毎、控えめな編成だが、フルート、B、Per、Dr、ピアノなどがツボを押さえて実に無駄なく配されている。最小の出番で最大の効果って感じで、例えばクィーカの入れ方なんか、それだけでサウンドの彩度がぐんと増すようで、とってもうまい。基調はシンプルそのものだが物足りなさなど微塵も感じさせぬ、ちょうどいいサイズにまとまって、むしろ豊かさの漂うサウンド。
それぞれメインをとったり、またデュエットしたりする両人の歌も、クセがなく自然に聴かせるタイプでなかなかいい感じ。
けれん味皆無だけど、どこを切っても気持ちいい作品。甚だ麗し。
5.5.2009
CALL MY NAME

DABY TOURE & SKIP McDONALD

2009 UK

西アフリカのモーリタニア出身で欧州で活動するSSWと米のオルタナブルースギタリスト a.k.a. LITTLE AXEのコラボ作品。
両人の作品をリリースしてるワールドミュージックレーベル「リアルワールド」プレゼンツのセッションをまとめたもの。互いが持ち寄ったオリジナルを、G、B、Drというシンプルな編成をバックにそれぞれが歌う。
LITTLE AXEがとてもフェイバリットな俺はそこを期待してチェックしたんだが、ダブエフェクトはごくごく控えめだった。が、そんなことには関係なく、よかった。
ブルースやアフリカンテイストが融け合ったポップスなんだが、両人のバックグラウンドを反映したかとも思われるベクトルの異なる2要素、すなわちノリとタメ、情感の放出と抑制、ポップさとクールネスなどが拮抗することで、ほどよいテンションと深みが生まれていて、それが実に気持ちいい。
もっと聴きたいなと思うところで(6曲というコンパクトさ)終わっちゃうことで、かえってありがたみが増してるね。
4.28.2009
INVISIBLE CITIES

NOMO

2009 USA

デトロイトのアフロファンクインストバンドの新作。
ホーン隊を擁する大所帯ながら、相変わらず贅肉のない締まったサウンド。

今回はエレクトリックカリンバが多用されていて、アフリカンテイスト増量。そこからミニマルかつスケールのでかい方向を目指せば、いくらでもスペイシー&
トランシーになりそうなものを、ぐっと抑えてタイトなファンクロックで通してるとこが素敵。
宇宙の神秘を語らず、あくまで地上レベルのスリルとミステリーを追求してる感じの音とでもいいますか。「見えない街」っていう昔のB級SFドラマみたいな題に偽りなし。
4.28.2009
COLORED ARISTOCRACY
/DONA GOT A RAMBLIN' MIND

CAROLINA CHOCOLATE DROPS

2006,2007 USA

ノースカロライナの黒人男女3人による現地周辺のトラッドをベースにしたグループ。バンジョー、フィドル、Gと歌を基本にしたアナログ編成。歌物とインスト。
いみじくも
アフリカンアメリカンストリングバンドというキャッチコピーだが、黒人の発明したジャズやブルースには早くから非黒人が参入して今に至るけど、カントリーやらマウンテンミュージックやらの白人系ルーツ物を黒人中心で演るってのは珍しいよな。情報が伝わってこないだけで、向こうにはこうゆう人たちってけっこういるんだろうか。
それにしても、すごい異化効果が発揮されてる。サウンドはうねり、跳ね、歌は濃く、ソウルフル、ミニマルな展開やリズムの揺らぎからはアフリカンテイストさえ匂い立つ。
朴訥でなく饒舌な、心に染みるより速く肉体を揺らすアメリカントラディショナル。なかなか新鮮だ。
4.28.2009
“Part1:John Shade,Your Fortune's Made”

FOL CHEN

2008 USA

From L.A.の謎めいたグループの作品。男女混成の6人組とのことで、名前は明かせど顔は見せない匿面バンド。
曲毎に歌い手が入れ替わり、打ち込みリズムに載って様々なアナログ楽器が繰り出される。不思議と懐こさのある、「ひねくれ」というよりは珍妙なサウンド。

打ち込みリズムはドスドスと鈍重で曲は全然ドライブしない。その点、俺としちゃけっこう苦手な部類のはずなんだが、何故か聴けてしまう。
昔、アナログレコードのアルバムにはよく、終盤に遊びというかちょっとしたスパイスというか、他とは曲調の違う小品がポロッと入ってたりしたもんで、俺はそうゆう変な小曲がけっこう好きだったんだけど、この作品は全体がそんな「外し」のテイストでできあがってるとでもいったらいいのか。だから惹かれるのかな。
4.28.2009
Olive Tree for Peace

Seigen Ono

2009 JAPAN

エンジニア/アーティスト小野誠彦の新作。旧曲もあり、ライブ録音もあり。
大筋ではジャズベースの近作路線。南欧ムードにあふれた世界が絵物語のように次々と展開してゆくような構成で飽きない。小洒落たヨーロッパ映画音楽的イージーリスニングとしても聴けるが、さすがにそこいらのお手軽インストとはサウンドの肌理が違うのだった。

ここ10年ほど、ジャズと高音質を打ち出した路線になってから、そのサウンドの快さは自分なりに味わえてるつもりではあるものの、推奨される高品質リスニング環境や内省的かつ玄妙な深みに向かうサウンドにあっては、俺みたいな雑な耳のリスナーは身の置き所がないなと思いがちだったわけですよ。「よい素材と丁寧な仕事による料理を気持ちのよい空間で味わいましょう」とはまったくその通りなんスけど、人目も作法も気にせず散らかった自室で気ままに喰らうのが快適って奴もいるんですよ許して、みたいな。
そんな不粋者にもちょっと近寄りやすくなって、うれしいッス。
4.27.2009
Mensajes en el viento

Nuria Martinez

2009 ARGENTINA

ケーナ奏者♀の作品。朴訥でスピリチュアルな気配さえ漂うジャケだが(正直心配した)、音は意外やモダンな、どころかけっこうオルタナでさえあるフォルクローレインスト。
カバーとオリジナル。カバーは汎アンデス的目配りによる名曲のセレクトらしいが無粋な俺にゃそのありがたみがよくわかりませんすいません。
GとPerとのシンプルなトリオによる演奏がベースで、そこにゲストが少々(歌物もあり)。
フォルクローレに対する愛情と敬意があるのはもちろん、けっこう学究的な姿勢もあるのかも知れない。けどそこで、まじめで上手いがはじけないほうへ行っちゃう危険を、サウンドへの冒険心によって免れてる。
当人自らの手でサンプリングやエフェクト使い(音響的アプローチとは違うが)なども採り入れているし、Perのプレイのボキャブラリーや生とエレキを使い分けるGにもモダンなセンスがしっかりある。斯界の名曲をそのままに継承していくだけでなく、どうせなら面白いサウンドで聴かせようという心意気がいい感じ。
4.12.2009
The First Basket

Roberto Rodriguez

2009 USA

ジューイッシュ×キューバという意表をついたハイブリッドがナイスだったNYダウンタウン系の人の新作。
今回はキューバ〜ラテンなものもあるけれど、もろクレツマーにディキシーっぽい曲、アヴァンなG独奏曲やらファンファーレみたいなのやら中東やら、バラエティ豊かなインスト。それらすべてにクレツマー的哀感の出汁が浸みている。
キャッチーなメロディも多いが、この人の持ち味であろうそこはかとなくソフトフォーカスがかかったようなサウンドによって、エレガントかつミステリアスな世界に。
この絶妙な塩梅にもの柔らかい音像が、暑くもなく寒くもなくそしてどことも知れぬ異国の夕暮れ時の如き不思議なエキゾチックムードを醸していて、たまらん。

エッジの研がれた感じの音や佇まいが多いラディカルジューイッシュ系(って偏見か)にあってこのニュアンスは新鮮だし、古典を大切にする路線からしたら一見オルタナティブなこうゆう方向が意外とジューイッシュの可能性を広げることに成功してるんじゃなかろうか。
4.12.2009
This is the album of a band called Adebisi Shank

Adebisi Shank

2009 IRELAND

アイルランドの3ピースバンドの作。まだ若い人たちらしいっス。
マスロックの骨格に、ハードでソリッドかつアヴァンなロック的リフの嵐で肉付けした如き過剰なインスト。
余分な物を捨てて突っ走る音楽たるマスロックの逆を行くよな欲張りサウンドだが、そこをヤングな勢いで聴かせる。そしてその無茶は達成されてる。演奏は熱く気持ちいい。
でも、その先には何もない。
後先考えずに出し切っちゃったというか、若気の至りの見本のような音。でも、これはこれでいい。
大人になるとさ、周りのいろんなことに気を配る余裕ができるから、音に「つぶしを効かそう」とか考えるようになるわけだ。そういう賢しさから足されたものは、マスロックにおいては大抵贅肉にしかならないと思うのよ。マスロックも手札のひとつみたいなポストロック物って多いけど、面白いバンドはなかなかないからねぇ。
だから、深みなんかなくたって、ノーフューチャーだって、今できることを極限まで突きつめたこの音はマスロックとして清々しいじゃないか、と。少なくとも俺は好きだ。
4.9.2009
VENTOBOM

ANDRE CACCIA BAVA

2008 BRASIL

MPBのSSWの作品。全オリジナル。
実に多彩なサウンド。サンバをベースにしたモダンMPBから、ローズの音色が効いたAORテイスト、シタールが印象的な曲にレゲエ、アフロなどなど。編成も使用楽器も曲により様々で、生楽器中心のサウンドもあり電化サウンドもあり。
でも一貫してるのは、軸足があくまでポップのフィールドにあること。生楽器主体のルーツリズムをベースにした曲でも、渋いほうに行こうと思えば行ける巧さはありながら、トータルな音像はあくまで新鮮な煌めきのあるポップス。
バンドサウンドをベースにルーツ色をどれくらい盛り込んで」とか、逆に「ルーツ系の編成に今風の音をどれくらい」とか、配分・さじ加減で考えるんじゃなく、曲毎に「この世界を表現するにはこの編成でこの楽器を使う」と最初からはっきりしたビジョンがありそう。前者の発想になるサウンドだったら、このアルバムの多彩さは小器用とか散漫って印象になるんじゃないかと。この人の場合、姿勢にぶれが感じられず、柔軟で割り切りのよい、とてもモダンな感覚の持ち主に思えるわけです。
それと
、ポピュラリティの高いカラフルなサウンドでありながら、当人顔を出さないこのジャケのビジュアル。粋だねぇ。
4.9.2009
SAN CRISTOBAL

CESAR FRANOV

2008 ARGENTINA

アルゼンチン音響派のアレハンドロ・フラノフの兄の人であるジャズベーシストのソロ作。フォルクローレなど彼の地の様々なルーツリズムにのせた、なかなかにストレンジムードなインスト。
DrやPerが入る曲もあるが、半分以上は当人のみによるごくシンプルなサウンド。とはいえまったくのベースソロってわけでもなく、6弦&4弦ベースを操り、Gのような高音も出しながらの独り重ね録りなんかも演ってて、最小限の編成ながらも不足なくできあがった音世界。

ごりごり、ぶりぶり系の派手なベースではないが、コクがあって表情豊かな音が実に気持ちいい。ドラムとのコンビネーションとか、アンサンブルのボトムパートとしての機能から見て「いいベース」っていうよりも、ベースそのものの音色や質感を楽しみたくなるようなタイプ。俺にとっては、例えばミック・カーンみたいな。
だからこれはバンドサウンドじゃなくて全然OK。この人の出す低音をひたすら味わうべき作品なのだった。

4.7.2009
O Retratodo Artista Quando Pede

DUO MOVIOLA

2008 BRASIL

気鋭のSSW2人のVo&Gによるオルタナデュオ。
ま、レニーニ&スザーノ「魚の目」
以後の産物ではあろう。これ聴いてレニーニを思い浮かべるなってのはちと難しいわな。
「魚の目」ほどの音の強靱さはないけれど、こっちはバックの音や曲調の多彩さで聴かせる。サンバをはじめ実にさまざまなリズムが繰り出され、リズムと歌の絡みも面白く、シンプルなサウンドながら飽きない。

それに何といっても全体を覆う翳りと不穏なムード。あくまでもムード。ジャケのB級ノワール的イラストの如き、シリアスなのかひょっとしてギャグなのか煙に巻くようなセンス。これがオルタナ度を高めるとともにサウンドの緊張感もほどよくキープしており、
なかなかの味わい。このおかげで多くのレニーニフォロワー(本人にそのつもりなくても、そう見られちゃう人たちも含めて)から、ちょっと変わった方向へ頭ひとつ抜け出してると思う。
3.30.2009
LONG STORY

JORDAN TICE

2008 USA

ブルーグラスなどをベースにしたアメリカーナインストを演るギタリストの作品。オリジナル。G、B、フィドル、バンジョー、マンドリン、ドブロというアナログ弦楽器編成で、音響的仕掛けなどはなし。
アメリカのルーツ系音楽にもいろんなタイプがあるけど、これは、バカ陽気なだけではなく、泥臭くもなく、枯淡の境地でもなく、躍動感がありながら繊細で憂いもあるという実に俺の好み。サウンドのしまり具合もいい塩梅。
器楽の快さにあふれたインストだけど、メロディにはポップなテイストも漂う。SSWとしてもけっこういい筋してるのかも。

ところでこれ、ジャケ買い。自分の鼻を頼りに買って当たるとうれしいねぇ。

ジャケといえば、ことメジャーな商業音楽にはジャケと中身の落差やちぐはぐぶりにがっくりさせられることがけっこうあるから、こういう地味な佳作が内容にふさわしいナイスなセンスのジャケをまとってるの見ると余計に愛着も増すねぇ。
3.30.2009
PLANETANGOS

PLANETANGOS

2008 ARGENTINA

ブエノスアイレスの若い世代によるタンゴ楽団。G、♀Vo(下で紹介してるTomas Lebreroのバンドの人)、Vin、Per、バンドネオン、コントラバスという生楽器編成。オリジナルとカバー。
伝統ある音楽として守るべきところは守りつつ、新しいセンスを発揮している。そのバランス感覚がお見事。
たとえばカバーの選曲。タンゴ古典の範疇にとらわれず、サンバやシャンソン、ジプシー物のサントラで知られるゴラン・ブレゴビッチの曲なんかを採り上げてるけど、奇をてらうというほどのハズシはない。

そしてサウンドと演奏。オリジナル曲であっても、タンゴやミロンガ以外の話法を安易に持ち込まないってところがポイント。タンゴになじみのない楽器を導入したり、あからさまに異ジャンルを思わせる曲調やフレーズが出てきたりってことがない。瑞々しさと躍動感で勝負。

結果、品位を損なうことなくタンゴに積もるほこりを吹き払うことに成功してると思う。
若手とはいえタンゴに限らぬ幅広いキャリアをもった実力派の集まりで、その視野の広さと余裕のなせる技って感じ。あえてエレクトロタンゴの逆を行く発想でフレッシュさを獲得してるとこがまたニクい。
3.28.2009
VIOLETA

CARLOS AGUIRRE GRUPO

2008 ARGENTINA

フォルクローレのアーティスト/コンポーザーのリーダー作。本人のピアノの他、G、Per、コントラバスが骨格で、曲によりマンドリンやバンドネオン、ちょっとしたコーラスなどが加わるけっこう多彩な編成。
わかりやすいオルタナ風味があるわけでなし、穏やかで美しいフォルクローレインスト。似たような佇まいの音楽でも国産や欧米産のヒーリング物なんかは退屈だろうと手に取りもしないのに、南米産は何故聴けるのかとあらためて考えた。
ひと
言でいうと、風通しのよさってことかね。
具体的には音のヌケとか瑞々しさといった空気感の心地よさ。和物なんかは「ブラッシュアップされた」感が鼻につくことが多いっていうか、鮮度がスタジオ技術でコーティングされちゃってるというか。メイクのキツさが気になってしまうとスッピンがどうあれグッと来ない、みたいな。

それと、
発想とかスタンスの自由さ、リラックス感。楽曲に凝ったり演奏テクを磨いたりするのと同じく「個性的であること、斬新であること」もまじめに追求しなきゃ、みたいな気負いがない。いい具合に肩の力の抜けた創造/表現の楽しさが伝わってくるよな気がする。
いや、実際は南米のアーティストだって計算ずくかもしんないよ。こっちが身の回りの音に飽きた末、南米を勝手に「発見」して、ひいき目で見てるだけかもしんない。でも、俺みたいにすれっからしたリスナーがハッとするようなリッチな音楽がいまだ豊作な土地柄ではあると思うのよ。
つくづく、音楽なんてどこまでいっても相対評価しかできないよね、なんて。分不相応に話がデカくなりそうなんで終了。

3.28.2009
NUEVA KAN ZE ON(新観世音)

Tomas Lebrero y El Puchero Misterioso

2009 JAPAN

ブエノスアイレスの新世代SSW♂(とそのバンド)の過去作から最新音源までを含む日本独自編集盤。
新観世音ってネーミングや日本の読経入りの曲があったりするあたり、日本人の俺としちゃキッチュなセンスに思えるが、これは向こうから見たエキゾチズムなんだよな。
アルゼンチンの様々なルーツ音楽が煮込まれたミクスチャー。バンドは♀Vo、G、Vin、Per、コントラバスというアコースティックな編成。当人はVo、
Gとバンドネオンも操る。
ことさらな音響的趣向などはないんだが、生楽器ベースのサウンドには不思議とモダンな気配があふれてる。新世代って感じ。中盤以降の多彩にメランコリー&アンデステイストを漂わせた曲たちが素敵。鮮やかでリッチ。
ライナーには曲毎にサウンドについての簡潔な解説が付いてて、国内盤エディットとしてナイス。俺みたいに気短な輩には評論家の長文とかよりずっとありがたいっス。

3.24.2009
MOONRIDERS LIVE at HIROSHIMA KENSHINKODO 1980.10.11

MOONRIDERS

2009 JAPAN

俺がもっとも熱くハマってた頃、80'sニューウエーブ期のライダーズの発掘ライブ音源。アルバムでいうと「カメラ=万年筆」の曲が中心。
彼らは決してテクニック上等の人たちではないわけで、いくら若い頃ったって、演奏に無条件で酔えるほど、ま、正直ウマかない。
でも、非腕自慢の者どもがセンスとアイデアと勢いで演りきるってのは、あの頃の人力ニューウエーブの有りようとして実に象徴的だったと思うのよ。ニューウエーブならではの屈折した肉体性というか。
そりゃ演奏ウマいに越したことないけど、テクニックって表現に対する絶対的な物差しじゃないでしょ。例えばジャズやフュージョンでならした強者たちにこうゆう音楽演られても、なんかニュアンス違うと思いませんか。そこの違いって、ニューウエーブにはとても大切なものなんじゃないかと。
で、あの時代のライダーズは目指す音楽と実際の表現(ここではライブパフォーマンス)の質が、幸福な形でシンクロしてたと思うわけですよ。だから、ウマいかどうかなんて飛び越えて素直にかっこいいと思えた。
懐かしさ半分。けど、今聴いても心躍るよ。

3.18.2009
ARANGU 1.0

ARANGU

2008 SPAIN

バルセロナで活動する8人組バンドの作。♂♀VoにラップのMC♂、2管を抱える。
ソウル、ラテンなどをベースにしたファンキーな音。
サウンドがミクスチャーっていうより、ラテンはラテン、ファンキーなソウルチューンはそれって感じでサウンドをスイッチするタイプ。それぞれにこなれた演奏でかっこいいっス。

写真を見ると若い人たちのようだけど、今どきな感じの音響的アプローチやエレクトロニクス使いがほとんどない。俺なんかレアグルーヴにまったく疎いから、音だけ聴かされてそっち方面の掘り出し物ですっていわれりゃ、へぇそうなのって思っちゃいそう。まぁアルバム通して聴けば、ラップの入り方とか構造的なとこから今のバンドだなって納得はできるんだけども。
なんでそんな俺がこれ聴くのかっていうと、和物のシティポップの気持ちよさはなかなか好物なわけで、その延長にあるものとしてとらえてるわけです。(順序が逆だよ。わかってるよ。)
シティポップ
のネタ元としての往年のソウルやラテン、ファンクなんかは俺には渋すぎるんだけど、こういうのなら俺にも聴きやすい、と。(あ、スペイン産だってとこがそもそも直球じゃないか。)
どうせ邪道だよ。雑な耳だよ。コーヒーは飲まないけど、コーヒー飲料は好きなんだよ昔から。

3.15.2009
EL GENERAL JOHN ZORN FILMWORKS XXIII

JOHN ZORN

2009 USA

ジョンゾーンのサントラ仕事集成23発目!
たくさん出てるわりにジョンゾーンのサントラって聴いてなくて、今回も実はジャケ買いだったり。
伝説的なメキシコ大統領についての映画らしいっスけど、まったく知らなんだ。ネット社会になって「いまや世界中の情報が時間差なしで手に入るぜ」みたいに思えても、映画でも音楽でも何でも、よその国のことは、実は案外偏った少しのことしか知らない(或いは知らされてない、或いは知ることができない)んだよなって事実にあらためて気づかされる次第であります。

サウンドはG(マークリボー)、B、Pf or アコーディオン、マリンバが基本編成で、ジョンゾーンは演奏せず。ほんのりとメキシコ〜ラテンの香りのする麗しくイマジナティブな曲たち。

サントラながら、流し聴きしても聴き込んでも気持ちいい。音数的にもにぎやかすぎずシンプルすぎず、音の密度とか楽曲の構築度がちょうどよかった(俺的に)。
佳品、って感じ。

3.12.2009
Romano Rat-Gipsy Blood

KHAMORO

2008 HUNGARY

ハンガリーのむさい野郎どもによるアナログ系ジプシーバンドの作。
最近の東欧の、特に若い世代のミクスチャー系なんかの音はロックやデジタル物を消化してて聴きやすい半面、ジプシー音楽本来の奔放で猥雑で制御しきれないようなノリが妙にきれいにクオンタイズされちゃってるちゅうか、そうゆう部分で物足りなさを覚えることもけっこうあったりするわけで。その点、このバンドのラフ
でけれん味にあふれた音とムードはジプシー物ならではって感じでよろし。
基本「裏」で入る独特の合いの手は、曲のはじめから終いまで途切れずしかも2人がかりで、だからそれはもはや合いの手どころじゃなく主要な通奏パートであり、ずーっとその調子なんで「いい加減うるせぇ。楽器の音をじっくり聴かせろよ」と思うがなにしろずーっとその調子なんで、だんだん耳が麻痺してきてこれはこうゆう音楽なんだと思えてくるから不思議。
と思ったら終盤に突然合いの手が止んで、あざとくもツボを心得た高速変拍子インストなんか演るからニクいね。
と思ったら最後にリミックスと称する安いデジタルビートにのっけた曲がとってつけたように入ってたりするから参っちゃう。このへんの適当さがまたなんともそれっぽいやね

3.11.2009
MIDDLE Cyclone

NEKO CASE

2008 USA

オルタナアメリカーナの♀SSWの新作。
毎度キャレキシコのメンバーやら、ちょろっとロスロボスの人なんかも参加。

このお姐ちゃんの作品は、曲が短めなのがいいね。「あれ、ここで終わり?」ってあたりであっさり次へ行く。15曲というボリュームもさくさく聴ける。

短めの曲が好きってのは俺の好みの問題ではあるんだけど単にそれだけの話じゃなくてね。
アメリカーナでありながらじっくり聴かせ情感に訴えるという方向で行かないのは、熱いわけでなく渋いわけでなく、むしろ時として素っ気ない感じすら漂う彼女の歌いぶりに合ってると思うし、展開の早いドライな構成は、サウンドとはまた別の面からオルタナ感を高めているんじゃなかろうか、と。
それにしても今作、デザインセンスがいつにも増してオルタナっつーかインディーテイストっつーか。ジャケ、タランティーノ?
3.5.2009


2008年9月〜2009年2月

2008年3月〜2008年8月

2007年9月〜2008年2月

uwatzlla@visitor2.jp


※英語以外の外国語を正しく表示させる技術がないため
(主にアクサンなどアルファベットに付く記号のことですが)
ただのアルファベットのままでお茶を濁してます。
ことにラテン系のアーティスト名や作品名は不正確になること、
承知いただきたし。

作品の国名表示は厳密なものではありません。
CDの生産地クレジットを基本にしてはいますが
アーティストの出身や活動拠点と関係のない国からのリリースの場合
どうにも違和感を禁じ得ず、そのアーティストのプロフィールとして
よりふさわしいと思われる国名を表記することもあります。
参考程度にご理解いただきたし。